答えを自分たちで見つけ出す「プロジェクト型学習」が小学校低学年にこそ必要な理由

[小学校教育2.0]#3 「プロジェクト型学習」とは

熊本大学教育学部准教授:苫野 一徳

長野県の伊那市立伊那小学校では、全ての学年で総合学習の授業を中心にカリキュラムが組み立てられています。  写真提供:伊那市立伊那小学校

2020年から全面実施されている「新学習指導要領」では、「主体的・対話的で深い学び」が重視され、子どもたちが自ら課題を設定し、解決できる力を育む、教科横断型の「探究学習」が求められています。

とはいえ、小学校では「あらかじめ決められた答えがある、教科ごとの学習」が大部分を占めています。

教育学の専門家で、多くの学校や自治体などで教育アドバイザーを務める苫野一徳先生(熊本大学教育学部准教授)は、「小中学校こそ、体験をベースとした『探究型のプロジェクト学習』をカリキュラムの中核にすることで、子どもたちの学びへの意欲が上がり、知識の定着にもつながります」と言います。

第1回・第2回では、「一斉授業」に代わる新しい実践「学びの個別化・協同化・プロジェクト化の融合」と、「学びの個別化・協同化」の具体的な取り組みについて教えていただきました。

第3回では、「学びのプロジェクト化」がなぜ低年齢の子どもにとって重要となるのか、どのような実践方法があるのか、小学校低学年の子どもを持つライターが、苫野先生に伺います。
(第3回の3回目。#1#2を読む)

決められた答えのない「プロジェクト型学習」

――「学びのプロジェクト化(探究学習)」は「決められた答え」がある問題だけでなく、自分なりの問いを立て、答えにたどり着く学び、とおっしゃっていました(第1回)。もう少し具体的に教えてください。

苫野一徳先生(以下、苫野先生):これまでの『一斉授業』を中心とした学校システムでは、『同じことを同じペースで』『言われた通りに』行う学びがほとんどだったとお話ししましたが、学ぶ内容についても、既に『決まった問いと答え』があることがほとんどでした。

しかし、現代社会を生きていく上では、『決まった答え』があることの方が少ないものです。

将来子どもたちが、自分の人生を自分の思うように、つまり『自由』に生きていくためには、自分自身の問いを、自分の力で考え、解決する力が重要になります。

『学びのプロジェクト化』では、決められた問いと答えがない問題について、子どもたちが自分なりに問いを立て、自分なりの方法で、自分なりの答えにたどり着く。そんな『探究型』の学びを提唱しています。

そして、『決められた内容と答えを決められた順序に従って学ぶ』従来の授業から、探究型(プロジェクト型)の学びを中心に据えたカリキュラムへと、大きく転換することを提案しています。

低学年こそ「プロジェクト型学習」

――探究学習は、「高度な学習」のように感じます。中学・高校生で行うイメージは湧きますが、小学校、しかも低学年で本格的に実施するのは難しいのではないでしょうか。

苫野先生:探究学習の話になると、必ず『一部の学校(子ども)しかできない』といった声が出てきます。しかし、探究型、プロジェクト型の学びは、『優秀な子ども』のためだけのものではなく、むしろすべての学びの基本です。

そもそも学びとは本来、『体験』と『状況』を通して行われるものです。私たち人間は、自らの身体を使って体験をしながら、先生や友だちなどから様々な相互作用を受ける状況のなかで、ものごとを理解(認知)します。

体験や状況と切り離され、机の上のみで『今日はたし算を勉強します』などと言われても、なぜそれを学んでいるのかわからず、知識がなかなか自分のものにならないのです。

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