漢字も自ら楽しく勉強!? 子どもの「成長したい」に火をつけた自由進度学習

【小学校教育2.0】自由学園の実践#4「学びの楽しさを子どもに戻す漢字学習」

遅れても取り戻せるのが「自由進度学習」の良さ

2学期になると、漢字の自由進度学習にすっかり慣れた子どもも出てきました。

「同じ方法で続けていくと、僕の予想を遥かに超えて学習を進める子が出てきました。自分で漢字学習ノートを作って練習してくる子もいましたし、とにかくどんどん先に学習を進めて、あっという間に2学期の漢字を覚えてしまう子もいました。

こうした子たちの学習方法を『こんなやり方もあるよ』とクラスに共有すると、子どもたちは刺激を受けるんですね。『あの子がやっているなら自分も頑張ってみよう』『やり方を真似してみよう』といった気持ちになって、結果的にクラス全体の学習意欲も少しづつ変化が見えました」(田嶋先生)

教室には「テストの直し方」など、自立的な学びにつながる学習方法も掲示しました。  写真提供 自由学園初等部

自由進度学習によって自分のペースで取り組めるようになったことも、子どもたちにとってプラスに働きました。

「自分だけでは遅れてしまいがちな子どもには、僕が一緒に計画を立てながら進めていくこともしました。

また、あまり積極的に取り組んでいないように見える子も、習い事などで忙しくて家で勉強する時間が取れない……といった、子どもなりの事情がありました。振り返りに『もっと頑張りたい』『遅れを取り戻したい』などと書いていて、決して意欲がないわけではないんです。

一斉学習では、一度遅れるとそのままになってしまうことがほとんどですが、自由進度学習なら、あとからいくらでも追いつくことができます。それぞれのペースに合わせて進めていくと、どこかで『スイッチ』が入る時期がくるんです。子どもを助けながらそれを待てるのも、自由進度学習のメリットだと感じますね」(田嶋先生)

広がる学びの好循環

漢字学習で自由進度学習を取り入れたことで、総合的な学習の時間や社会など、自ら調べて考えをまとめるタイプの学習においても、良い影響があったといいます。

「1年間を通して自分でペースを考えて進めていく自由進度学習に取り組んだことで、子どもたちに『学びをコントロールする力』がついたと感じます。

例えば、社会で3時間を取って調査して考えをまとめる、といった学習をしても、『今ちょっと遅れているからもっと進めなきゃ』と自分で気づけたり、友だちの方法を見て『あれはいいから真似してみよう』などと参考にしたりする。

グループ学習でも、子ども自身で学びをコントロールしようとする姿が見られました。  写真提供 自由学園初等部

自由進度学習で実践したことを、他の学習でも自然に取り入れている姿が見られました。とても良い学びの循環ができていると感じます」(田嶋先生)

教科学習、特に漢字や計算など地味な内容は、主体性を引き出すことが難しいと思われがちですが、学習方法や言葉かけの工夫次第で子どもたちのモチベーションは高まり、楽しみながら学習を進められる子どももいることがわかりました。

田嶋先生は最後に、「学びの意欲を引き出すために何より大切なのは、子どもたちを信じること」だと力強く語ってくれました。

「正直、1学期にはじめたときは、本当にこのやり方でできるかどうか、半信半疑の部分もあったんです。でも、自由進度学習を取り入れてみて、子どもたちの『できるようになりたい』『成長したい』という気持ちを信じることができてよかったと、心底思っています。

大人が信じることで、子どもはものすごく成長するんだと痛感しました」(田嶋先生)

子どもの意欲を信じて取り組んだ漢字の自由進度学習で、大きな収穫が得られました。とはいえ、2022年度から開始した学習のため、保護者にこの学習の意図をしっかりと伝えられたかなど、まだまだ試行錯誤している部分は多いといいます。

今後は、授業方法などを検証しつつ、今年も同じ方法をそのまま取り入れるのではなく、他の学年の先生とともに、よりよい学習方法へと改善・発展させていく予定です。

自由学園初等部で先生方が実践する、体験から子どもの興味を引き出し、それを深めていく学習。そして「できるようになりたい」という気持ちを信じ、見守りながら必要に応じて支援するという視点。こうした考え方や姿勢は、先生だけでなく、保護者にも求められていくはずです。

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学校法人自由学園 初等部
東京都東久留米市にある、豊かな自然の中で子どもが子どもらしく学ぶ私立小学校。子どもたちに「気づき」を促しながら、自ら学び、考え、行動できる力の土台を作ることを目指す。幼稚園から最高学部(大学部)までの一貫教育にて、SDGs・ESDとも関連しながら環境文化創造に関わる一貫教育を実践している。

取材・文 川崎ちづる

『【小学校教育2.0】自由学園の実践』の連載は、全4回。
第1回を読む。
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かわさき ちづる

川崎 ちづる

Chizuru Kawasaki
ライター

ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。

ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。