「頭がいいから中学受験する」はもう古い! 「勉強が苦手な子」こそ輝く場所がある“新しい中受”とは

『中受 12歳の交差点』工藤純子×國學院大學久我山中学高等学校副校長 スペシャル対談 後編

ライター:山口 真央

「中学受験」は頭のいい子だけのものではない

児童文学作家の工藤純子さん(左)と、國學院大學久我山中学高等学校の副校長、髙橋秀明先生(右)。國學院大學久我山中学校の図書室には、工藤さんの作品が並んでいる。
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髙橋『中受 12歳の交差点』で描かれていた広翔さんは、小学校では目立たない存在ですが、学校説明会を通して、自分の居場所を見つけていたのが印象的でした。

工藤:広翔は何をやるにも遅い子で、勉強も苦手。小学校では透明人間のように扱われている子です。

ある中学校の学校説明会で、吹奏楽部の部活体験に参加して、周囲の人に自然に接してもらったり、演奏をしたりするなかで、少しずつ、世界が輝きはじめます。

部活体験で楽しいと感じたことを原動力に、広翔は受験勉強をがんばる決意をするのです。

小学校の横並びの教育のなかでは、どうしてもこぼれ落ちて、自信を失ってしまう子っていると思います。

そういったお子さんも、少人数制や自分に合った校風の私立中学なら、力を伸ばせるかもしれません。

中学受験は、頭のいい子だけのものではなく、いろんな特性のある子にも向いているということを、この物語を通して知ってほしいと思いました。

髙橋:広翔さんが魅力的だと思える学校と出会って、少しずつ前向きに変わっていく姿には、胸を打たれました。

10代の子どもたちの「好き」って気持ちには、ものすごいエネルギーがありますよね。

本校は昨年創立80周年を迎えましたが、少しずつ変化して、いまは生徒たちが自分の思いをアウトプットする機会も増えてきました。

生徒会の活動や、学園祭の内容、スマートフォンを持参するときのルールも、主体的に決めるようになりました。

工藤:それは素晴らしいですね!

髙橋:もちろん、生徒の自由な発想を聞いていて、ときには「大丈夫かな?」と不安に思うこともありますよ。

でも、なるべく彼らのやりたいって気持ちを優先して、どうにか形にできる方法を探るようにしています。教員も試行錯誤の連続です。

工藤:きっと生徒たちは自分自身で決めることで、どんどん居場所を広げられるでしょうね。

『中受 12歳の交差点』は親子で読むべき物語

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