子どもの「不登校」を好機に! 発達脳科学者が保護者に指南する「独自の子育てメソッド」

「不登校のキミとその親へ」#3‐3 小児科医・発達脳科学者・成田奈緒子先生~不登校をチャンスに変えるには~

小児科医・医学博士・発達脳科学者:成田 奈緒子

長引く子どもの不登校では学校からプレッシャーをかけられることも。そんなときの上手な対応も成田先生に伺いました。  イメージ写真:アフロ

我が子が不登校になったら……。少しでも早く復学させなければとあせったり、勉強が遅れては困ると、塾やフリースクール探しに必死になる親も多いでしょう。

発達脳科学者で小児科医として独自の子育てメソッドを説く成田奈緒子先生は、それよりもまずは家庭でやるべきことがある、と言います。

「不登校はチャンス!」と成田先生が告げるその真意とは。

※3回目/全4回(#1#2を読む)

成田奈緒子PROFILE
小児科医・医学博士・発達脳科学者。公認心理師。子育て科学アクシス代表。文教大学教育学部教授。臨床医、研究者の活動を続けながら新しい子育て理論を展開。『「発達障害」と間違われる子どもたち』(青春出版社)、『高学歴親という病』(講談社)、『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』(共著、講談社)などがベストセラーに。

小児科医として臨床で得た経験と発達脳科学者としての研究成果、その両方を織り交ぜた独自の子育て論を説く成田奈緒子先生。  写真:日下部真紀

学校に行きたくないと言われたら「あらそう」でいい

私は、不登校を問題視する必要はないと考えています。学校に通うという選択肢があるように、学校に行かないということも選択肢のひとつになっている。

我が子が学校に行きたくないと言い出したら、「あらそう。それもいいんじゃない」と言ってあげればいいんじゃないでしょうか。

でも、多くの親はあわてふためいて、どうにかして学校に行かせようとします。「そんな子じゃなかったのに!」と子どもを責めたり、「どこで育て方を間違えたのかしら」と自分を責めたりもします。

「この子の将来はどうなってしまうの……」と世界の終わりみたいな気持ちになったりね。ただ「学校に行きたくない」というだけの話なのに。

日本の公教育は、とっくに行き詰まっています。みんなで同じ時間に同じことをして、同じ知識と価値観を身につける。「個性を大切に」「自主性を育んで」と言いながら、自分の考えや意見を積極的に表明することを許さない。

友だちが100人できたら素晴らしいような童謡を歌わせて、誰とでも仲良くすることを求める。イジメが増えているのも、ダブルスタンダードや同調圧力の影響があるんじゃないでしょうか。

昭和30年代から、学校と親が声をそろえて、いい大学に入って、いい会社に入ることを目的にしてきました。明らかにいびつですが、高度経済成長が続いていた時代には少しは意味があったんでしょうね。従順にせっせと働く「企業戦士」を効率的に養成できますから。

先がまったく見通せない今の時代にそんな教育を押しつけたところで、あちこちに弊害が出るばかりで、子どもが生きていくために必要な力を身につけさせることはできません。

公教育と同時に、家庭教育も行き詰まっています。学歴に目が行きがちな親は、どんな大人になってほしいか、そのためにどう育てるかは二の次になる。

子どもに「失敗させないこと」が最重要課題なので、忘れ物がないように学校の準備もすべて親がやってしまう。

「あなたは勉強だけしていればいいから」なんて言って、家の手伝いもまったくやらせない。「教育熱心」な親ほど、子どもの成長をどんどんジャマしてしまう可能性があります。

子どもの不登校は家族のあり方を見直すチャンス

学校に行くにせよ行かないにせよ、親が家庭生活を大事にして、楽しい家庭といい親子関係を築いていれば何も心配することはありません。

子どもが不登校になったという出来ごとは、親にとっては家族のあり方や子どもへの向き合い方を見直すチャンスなんです。

でも、せっかくのチャンスをいかせない親も多い。今までどおり価値の重心を学校や勉強に置き続けて、青い顔で「学校に行けなくても、塾なら行けるわよね」「勉強を厳しく見てくれるフリースクールを見つけたから、来週から通いなさい」なんて言ってしまう。

それって、子どものつらい気持ちをまったく受け止めようとしていませんよね。

学校や勉強のことは横に置いて、まずは家庭の穴ぼこを埋めるのが先決です。子どもの心と体のバランスを整えることに全力を尽くしましょう。

前回(#2)もご説明したとおり、私が代表を務め、独自の子育てサポートを行っている「子育て科学アクシス」では、「早寝早起き朝ごはん」の重要性を訴え続けています。

とはいえ、夜更かしが習慣になっている子どもの生活リズムを急に変えるのは、なかなか容易ではありません。とりあえずは早起きからです。

12時に起きていたなら、せめて11時に起きるようにする。次は10時、9時と徐々に早めていく。そうすれば寝る時間も自然に早くなっていくし、朝ごはんもおいしく食べられるようになります。

生活リズムを整えれば、子どもは元気になっていきます。ちゃんと脳を休ませて、自分で考えて自分から行動できるようになった子どもは、自分の目標をかなえるには勉強が必要だと思えば、必ずどこかの段階で行動を起こします。

担任の先生が「どうですか?」と電話してきて、早く学校に来させろと暗にプレッシャーをかけてくることもあるでしょう。そんなときは「ほんとにもう、ウチの子がいたらなくて申し訳ございません」と謝っておけばいい。

子どもに対しては「先生にも立場ってもんがあるし、お母さんいちおう謝っといたからね」と笑顔で言っておけば、子どもが罪悪感を覚えることもありません。自分を守ってくれたんだと、親を信頼してくれるでしょう。

親が笑顔を忘れると家庭の中でいい循環は生まれない

どんな場面でも、笑顔はとても大事です。学校に通うことが大事だという思い込みに縛られていると、どんどん笑わないお母さんになっていく。それだと、家庭の中でいい循環は絶対に生まれません。

子どもが学校を休み始めたときに、「えっ、今日は家にいるの。ラッキー! だったら、お昼ご飯作ってよ」と笑顔で言うぐらいでいいんです。

フリースクールを不登校になった子どもの救世主みたいにもてはやす風潮もありますが、これだけ数が増えてくると、正直なところ玉石混淆(ぎょくせきこんこう)ですね。

「居場所」を作るという役割は大きいかもしれない。だけど、中途半端にポリシーを持っているところだと、子どもに別の負荷をかけてしまうことになりかねません。

それよりも、家庭の中で親が子どもにどう接するかのほうが、よっぽど大事です。

洗濯でも料理でもお皿洗いでも、どんなことでもいいから役割を与えましょう。家族の役に立っていると思うことが、居場所があるという自信につながります。

そして、どんどん「ありがとう」と言ってあげてください。親からの感謝は、子どもの大きなエネルギーになります。

親がそういう態度を続けていれば、子どもの側も自然に感謝の気持ちを持つようになっていく。いい循環が生まれるんです。

一生懸命にがんばりすぎてるお母さんが忘れがちなのが、子どものささいな進歩を「すごいじゃない」とホメること。

前よりも早く起きられるようになった子どもに対しても、その事実を認めるより先に「9時じゃまだまだね。もっと早く起きなきゃ」とハードルを上げてしまう。

お母さんの気持ちに余裕がないから、子どもを見てありのままを受け入れることができず、とにかく「もっと上を!」と求めてしまうんでしょうね。

「子どものことを真剣に考える」というのはむやみに深刻になることじゃないし、「子どものためにがんばる」というのは過干渉になることでもありません。

子どもに笑顔で接して、親は親で自分の人生を楽しむ。それが親としての大切な務めです。

宿題に最後までつきそう、スマホやゲームを親が管理するなど、よくある親の行動が子どもの脳には逆効果だと成田先生が指摘。子育てが劇的にうまくいく45の方法を解説する『誤解だらけの子育て』(扶桑社新書)。

取材・文/石原壮一郎

なりた なおこ

成田 奈緒子

Naoko Narita
小児科医・医学博士・発達脳科学者

小児科医・医学博士・発達脳科学者。公認心理師。子育て科学アクシス代表。1963年、仙台市生まれ。神戸大学医学部卒業後、米国セントルイス...

いしはら そういちろう

石原 壮一郎

コラムニスト

コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアで...