400人以上を見た不登校の専門家から親へ「勉強は間に合う! 大切なのは学校復帰より“雑談”」

シリーズ「不登校のキミとその親へ」#1‐4 不登校新聞代表理事・石井しこう氏~親の寄り添い方~

不登校新聞代表理事:石井 しこう

不登校についてメディア出演のほか、全国で講演も多数行っている石井しこう氏。  写真:日下部真紀
すべての画像を見る(全4枚)

子どもが不登校になったら、親はどうすれば良いのか。

約20年400人以上に不登校に関する取材を続けている『不登校新聞』代表理事・石井しこう氏が、不登校の親へメッセージを送ります。

※4回目/全4回(#1#2#3を読む)

石井しこうプロフィール
『不登校新聞』代表理事。1982年東京都生まれ。中学2年生から不登校になりフリースクールへ。19歳から日本で唯一の不登校の専門紙『不登校新聞』のスタッフとなり、2006~2022年に編集長を務める。これまで不登校当事者、親、有識者など400人以上を取材。不登校にまつわる著作やメディア出演も多数。

不登校のゴールは学校に戻ることではない

子どもが学校に行きたくないと言い出したら、親としてはうろたえますよね。どうしていいかわからなくなって、多くの親は最初の対応を間違えます。

「学校に行かないなんて許されない」「このままだと将来とんでもないことになる」と、学校に行けなくなっている子どもをおびやかしてしまう。それは苦しんでいる子どもをさらに苦しめるだけだし、「親は自分のつらさをわかってくれない」と激しく幻滅させることになります。

親がやるべきもっとも大切なことは何か。それは子どもの苦しみに寄り添うことです。

「よっぽどつらいんだな」と理解して、味方だよというメッセージを送ることです。我が子が不登校という選択をしたら、なるべく早く気持ちを切り替えて、まずはその選択を認めてあげるのが、これから始まる長い旅のスタート地点です。

学校に行きたくない理由や原因を厳しく問い詰めるのも、絶対にやめましょう。ほとんどの場合、子ども自身も明確な原因はわかっていません。親は納得が欲しくて問い詰めたくなりますが、問い詰めれば問い詰めるほど子どもを苦しめることになります。

離婚も同じですよね。「なぜ離婚したの?」と聞いても、本人にも本当の理由はわからないし、嫌なことほど言いたくない。本人の気持ちが落ち着いてきたら、やがて自分から話してくれるようになります。

多くの親は、不登校のゴールは学校に戻ることだと思ってしまう。それが問題の解決だと考えてしまう。そこも大きな間違いです。

そもそも学校に行くことは、人生の目的ではありません。あくまでも、幸せな人生を送るための手段です。「学校は行かなければいけないものだ」という思い込みを捨てて、子どもにとっての幸せを考えてあげてください。

私が中学2年生で「学校に行きたくない」と母に泣きながら言ったとき、母は「わかった」とだけ言って、休ませてくれました。「もう少し頑張ってみようよ」と言われていたら、どんなに苦しかったか。絶望的な気持ちになって、最悪の選択をしていたかもしれません。

家にいる子どもとどう過ごせばいいのか

実際問題として、不登校の我が子とどう接すればいいのか。

それはもう、普通がいちばんです。腫れ物のように扱う必要はないし、厳しく監視する必要もない。ゲームばっかりしていたりYouTubeばっかり見てたりすると心配になりますが、限界まで戦って深く傷ついた心を癒やしている時間なので、やりたいようにやらせてあげましょう。

大切なのは、何気ない雑談です。それが親子の結びつきを深めます。

親は心配のあまり、口を開くと注意やお説教をしてしまう。それでは子どもは心が休まりません。食器を並べるとか、家族の中での役割を与えるのもいいでしょう。雑談もちょっとした役割も、「あなたはここにいていいんだよ」という安心感を与えることになります。

子どもが好きなことに熱中していると、つい将来とからめて話してしまうのも、親の悪い癖です。漫画を楽しく読んでるときに、「将来、漫画家になれたらいいね」なんて言われると、楽しかった漫画が急につまらないものになる。大人だって、YouTuberになりたくてYouTubeを見ているわけじゃありませんよね。

「学校を休んでしまって、勉強は大丈夫なのか」と不安になる気持ちは、よくわかります。そこは心配いりません。小中学校の9年間で学ぶ内容は、本人がやる気を出しさえすれば、1年で取り戻せます。

学校ではみんなが嫌々聞いていて、全員が理解するまで待ちながら進めているから、同じ内容を学ぶのに9年もかかってしまうんです。

次のページへ 父親と母親の意見がわかれる場合は?
15 件