コロナ禍の子どもの暮らしの取材・研究を重ねるジャーナリスト・なかのかおりさんによる、子どもの居場所についてのルポルタージュ連載。第4弾は、広島県教育委員会の不登校の子どもたちへの支援について。後編では2021年度から始まったオンラインのイベントやクラブ活動についてです。
(全2回の後編。前編を読む)
外へ気持ちが向く効果
不登校の小中学生は2021年度、過去最多の24万人となりました。前編で紹介したように、33の指定校でスペシャルサポートルーム(SSR)による支援を進めている広島県。学校とは思えないカラフルな内装の部屋作りと専任の先生、そして個人に合わせたプログラムといった、斬新な内容で注目されています。広島県教育支援センターにも、同様のSCHOOL“S”があります。
2021年度からは、21校の指定校のSSRをオンラインで結び、イベントやクラブ活動をするようになりました。子どもたちはSSRに行き、そこでオンライン活動に参加する形です。「イベントに周りの子が参加しているから、自分も参加してみたい」という気持ちになるといいます。
広島県教育委員会の不登校支援センター長・蓮浦顕達(はすうらけんたつ)さんは、
「SSRやSCHOOL“S”に来ている子は、そうやってつながりが持てますが、一方、家にこもって出られない子は、オンラインでの関わりも難しいケースが多く、どうやってつながりを持っていくのかが課題です。
今年度は、SSRに来ている子だけでなく、対象を広げて、自宅からや、指定校以外からもオンラインイベントへの参加がOKになりました。
プログラムは多彩です。ある日は、県立歴史民俗資料館の館長に説明してもらい、みんなで勾玉を作りました。事前にキットを用意し、紙ヤスリで石を削ったりして。
よかったのは、その作品が資料館に展示され、参加した子どもたちが、見に行けたことです。視野が広がり、外へ気持ちが向く効果がありました」(蓮浦さん)
オンライン修学旅行はライブ双方向で
オンライン修学旅行もしました。行き先は、不登校対策の視察に行った縁で、熊本市です。
熊本からは、熊本城や植物園の様子を発信してもらい、広島は世界遺産である宮島への旅をライブ配信。不登校支援センターのスタッフが船に乗って、厳島神社に行くところをレポートしました。
「子どもたちは、双方の中継を見て、国内にも違いがあるんだと知りました。修学旅行には1日目と2日目があり、参加は自由。全部で数十人が参加し、画面への顔出しも自由で、チャットもしました。
地元企業の協力では、『カルビー』のオンライン工場見学を。遠方では、東京の国立近代美術館にお願いして、レクチャーをしてもらいました。オンラインプログラムは、時間と距離を越えられるのがなにより魅力なんです」(蓮浦さん)
オンラインプログラムへ 参加までのアプローチ
またオンラインプログラムは、興味関心のいろいろな角度からさまざまなタイプの子にアプローチできます。
「先生から事前に、『こんなオンラインプログラムがあるよ』と声かけがあります。教室の中で準備する先生の様子を見て、ためらっていた子も『参加してみようかな』と心を動かされていますね。
最初のハードルは高くても、オンラインプログラムの準備や現場が見られるのは強みのひとつ。
自宅から出ることが難しい子には、担任の先生が、家庭訪問の際にオンラインプログラムのチラシを渡しています。ちなみに、文部科学省の調査では、学校の嫌だった対応として、家庭訪問が多く、押し付けがましく感じる、といった意見が多く寄せられた。
ですので、先生は雑談しに行くように心がけ、生徒の好きなアイドルや『推し』の話などをして、関心を捉えるということも大切にしています。オンラインのクラブ活動では、イラストを描いたり、マイフェイバリットのアイドルを語ったりするものもあるんですよ」(蓮浦さん)