
【不登校】勉強は大丈夫? 義務教育は? 子どもの「やる気」が湧く理由…専門家が解説
2025.03.27
学校に行けなくなった子どもは、さまざまなストレスから勉強が手につかないことがあります。将来のためには、少々無理強いしてでも机に向かわせたほうがよいのでしょうか。
石井さんは、「勉強再開は子どもの準備が整ってからでも遅くない」と断言します。教育関係者の中には、「9年間の義務教育、ポイントだけを1年でやり切ることも十分可能」という意見もあるのだとか。

「やる気」のスイッチが入る時期
石井さんの友人には、20代後半になってからやる気スイッチが入った人もいます。中学校で不登校になり、フリースクールへ。保育士の学校に通い始めて保育士になったものの、生活上のトラブルもあって仕事を辞め、引きこもりになりました。
何年か家庭で過ごしていたある日のこと。「気晴らしに勉強でもしてみたら?」という親の一言でなにげなく勉強を開始しました。すると俄然楽しくなり、国立大学に合格。大学でも優秀な成績を収め、現在は研究者として活躍しているのだといいます。
自由度の高い環境でも成長するためのポイントは「やる気スイッチが入るタイミングを見極めること」と石井さんは断言します。子どもの心が学びに向いてないときは、どんな学び方だろうが頭には入ってきません。
「小中学校は、出席さえすれば寝ていても卒業できてしまう。登校すれば学力がつく、ということはないのです」と石井さん。
反対に、やる気になれば短期間でも取り返せるもの。親が「勉強しなさい」と言うのをこらえて見守っていると、ある日突然勉強に気持ちが向くケースが多いのだとか。そうなればしめたものです。
不登校を経て専門職へ ある女性のケース
では、子どもが休んでいる間、親はどのようにかかわればよいのでしょうか。石井さんが勧めるのは「雑談」です。
子どもは、「不登校=失敗してしまった」と捉えがち。でも、安心できる環境で何気ない会話を重ねることで、見違えるように元気になると石井さんは言います。雑談が脳のエクササイズになる、と主張する脳科学者も。一見ただのおしゃべりでも、実は大きな意味をもつのです。
小・中学校と不登校だったある女性は、家庭での昼食のあと母親とおしゃべりを楽しむのが習慣でした。30歳近くになったとき、「作業療法士になりたい」という気持ちが湧いてきたといいます。
「病気や怪我でリハビリをしている人は、不安の中を生きている。自分もずっと不安の中を生きてきたから、きっと助けになるのではないか」──そう考えるようになったというのです。
彼女はアルバイトをしながら作業療法士の資格を取得。現在は現場で活躍しています。母親との会話を重ねる中で、彼女の心の中にあった不安が救われていったのだろうと、石井さんはいいます。
1回30秒でもいい「雑談のススメ」
とはいえ、仕事や家事で忙しく、じっくり子どもと話す時間が取れない、という親もいるでしょう。そんな悩みに対しては、「雑談は1回30秒だけでも構わない」と石井さんはアドバイス。
「『今から、本人のことを否定しないで話を聞こう』。そう決めて、短時間でも聞いてみましょう。向き合い過ぎはかえって子どもの負担になるだけ。料理など家事をしながら聞いてあげるのもおすすめです」。
子どもの年齢によっては、寝かしつけのタイミングもぴったり。親が話を聞くのに疲れてきたら眠ったふりをしてしまうという手もあります。何事も力を入れすぎず、無理なく続けられる方法を探していきたいですね。
AI教材で学力が伸びたケース
学びの場は、外だけではありません。家庭で学ぶ「ホームスクーリング」も進化しています。
石井さんのおすすめはAI教材。不登校の学び直しに有効だといいます。学年に関係なく、個々の学力や学習ペースに合わせて進められる無学年式の教材なら、コンプレックスを感じずに取り組めるのです。
石井さんが取材した中にも、AI教材で驚異的な成長を見せた例があります。