【不登校】勉強は大丈夫? 義務教育は? 子どもの「やる気」が湧く理由…専門家が解説

ある子どもは、「読み書きができない」という悩みを抱えていました。要因は不安の強さ。

精神的に不安定でいろいろなことを考えて過ぎてしまい、集中できなかったのだといいます。

その状態は高校進学直前まで続いたのですが、高校進学のタイミングで大きな転機が訪れます。

高校に進学するのだから「すこしは勉強しよう」と自らAI教材で勉強を始め、半年ほどで中学校3年生までのおもな学習内容は学び終えてしまいました。

高校進学後も、ほとんど勉強でつまずくことはなかったのだそうです。

▲AI教材は、自分の学力やペースに合わせて進めやすく、コンプレックスを感じずに取り組めるなどのメリットがある(写真はイメージです:アフロ)
▲AI教材は、自分の学力やペースに合わせて進めやすく、コンプレックスを感じずに取り組めるなどのメリットがある(写真はイメージです:アフロ)
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石井さんは、こう分析します。「もちろん、読み書きの困難さにはいろいろな要因が考えられます。この子の場合は、やる気になったときは爆発的に学力が伸びる子だったのでしょう。そして、そこに至るまでにきちんと休む期間をもっていたことも、とても大事です」

学力を上げるためには積み重ねが大事なのはいうまでもありません。AI教材はビッグデータを活用しているため、その積み重ねを阻む「できていない箇所」を見つけ出してくれます。

AI教材を使い始める際、子どもによってはログインや設定の面で親のサポートが必要ですが、慣れれば自分でできるようになります。

気をつけたいのは、どんな教材も「本人の意欲が出てきてから」が鉄則ということ。「やる気がないのに親が付きっきりで追い詰めても意味がありません」と石井さんは釘を刺します。

親が一人で抱え込まないことが大事

保護者が一緒に登校する「同伴登校」を学校から提案される場合もあります。

「好きな場所なら親の同伴など必要ないはず。一人では登校できなくなっている時点でギブアップと同じことなので、おすすめしません」と石井さん。

「無理すればなんとか登校できる」状態は、すでに赤信号だと受け止めるべきなのでしょう。

また、親自身が不安をつのらせ、子どもにその感情をぶつけてしまうことにも要注意です。

石井さん自身も、中学生のときに学校に行くことができなくなりました。当時をこう振り返ります。

「母親も不安だったに違いありませんが、休むことを受け入れてくれて嬉しかった」

▲我が子が不登校になれば、不安になるのは当たり前。親だけで全てを背負おうとしないことが大事(写真はイメージです:アフロ)

石井さんによれば、不登校の子どもに向き合う際に大切なのは、「不安になったり、苦しくなったりするのは当たり前」と考えること。そして、親だけで全てを背負おうとしないことです。

「親だけでなく、複数の大人が関われるといいですね。親自身も、どんどん同じ立場の親とつながって情報交換をしましょう」と石井さん。

不登校だからといって家に閉じこもる必要はありません。さまざまな人の話を聞くことで、親子ともに視野が広がることもあるでしょう。

「親同様、不登校の子どもも、内面では将来のことなどをすごく考えています。その思いや葛藤を表現し、同じ状況で苦しんでいる子のために活用できる場所がもっと増えたら」

そこで石井さんが2年前からTikTokと一緒に始めたのが「不登校生動画甲子園」です。

子どもたちが自らの不登校経験を1分間の動画にし、サイトに投稿。各界の著名人が審査と表彰を行いました。

「学校でしかできない経験もありますが、不登校だからこそできる経験もあります」。子ども自身が制作し、そんなメッセージを伝える動画は、不登校のイメージを大きく変えてくれます。

「大人になると、意外と成功体験より失敗経験のほうが生きたりするもの。それは子どもも同じです。自分の経験を社会に活かせる場があるんだと思えるようになると、不登校の子もガラッと変わるのです」(石井さん)。

不登校が親子共にハードな経験であることは間違いありません。でも、笑顔と安心をパートナーにその経験をくぐり抜けたとき、私たちは親子ともに大きな変化を遂げるのではないでしょうか。

【「不登校の子どもの居場所」をテーマに、さまざまなケースを取材する連載(前後編)。フリースクールの運営者、通信制高校生に取材した前編に続き、今回の後編では、不登校ジャーナリストの石井しこうさんに「我が子への向き合い方」をお聞きしました】

(取材・文/中村 藍)

子育てサイト「コクリコ」の「不登校」に関する記事一覧はこちら

子どもの居場所「学校につかれたキミに、心をほぐす温泉あります」 人気の児童小説「保健室経由 かねやま本館」特設サイトはこちら

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いしいしこう

石井 しこう

Shikou Ishii
不登校ジャーナリスト

1982年東京生まれ。不登校ジャーナリスト。中学校受験を機に学校生活が徐々にあわなくなり、教員、校則、いじめなどにより、中学2年生から不登校に。同年、フリースクールへ入会。 19歳からはNPO法人で、不登校の子どもや若者、親など400名以上に取材を行なうほか、女優・樹木希林氏や社会学者・小熊英二氏など幅広いジャンルの識者にも不登校をテーマに取材を重ねてきた。 現在はNPOを退社し不登校ジャーナリストとして講演や取材、「不登校生動画甲子園」の開催などイベント運営などでも活動中。【Yahoo!ニュース 個人】月間MVAを二度受賞。著書に『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること』(ポプラ社)『フリースクールを考えたら最初に読む本』(主婦の友社) 【公式サイト】https://futokoshiko.com

1982年東京生まれ。不登校ジャーナリスト。中学校受験を機に学校生活が徐々にあわなくなり、教員、校則、いじめなどにより、中学2年生から不登校に。同年、フリースクールへ入会。 19歳からはNPO法人で、不登校の子どもや若者、親など400名以上に取材を行なうほか、女優・樹木希林氏や社会学者・小熊英二氏など幅広いジャンルの識者にも不登校をテーマに取材を重ねてきた。 現在はNPOを退社し不登校ジャーナリストとして講演や取材、「不登校生動画甲子園」の開催などイベント運営などでも活動中。【Yahoo!ニュース 個人】月間MVAを二度受賞。著書に『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること』(ポプラ社)『フリースクールを考えたら最初に読む本』(主婦の友社) 【公式サイト】https://futokoshiko.com

なかむら あい

中村 藍

Ai Nakamura

1978年宮城県出身。小学校(通常の学級/特別支援学級)・特別支援学校(小学部・高等部)の教員として20年以上にわたり教育経験を積む。退職後、教育関連のWebメディアや雑誌への寄稿・監修、書籍執筆を行う。発達支援や教育DX、不登校、受験などの分野において、教育現場や官公庁、当事者への取材多数。 【URL】 ポートフォリオサイト https://ainakamura.edire.co/ ブログ「てとて~みんなの発達支援相談室」 https://tetote-tama.com 著書『発達障害&グレーゾーンの子 小学校生活の困りごと解決Book 学校の先生が教える!発達が気になる子のための困りごとヒント1』 https://amzn.to/3GVGKii

1978年宮城県出身。小学校(通常の学級/特別支援学級)・特別支援学校(小学部・高等部)の教員として20年以上にわたり教育経験を積む。退職後、教育関連のWebメディアや雑誌への寄稿・監修、書籍執筆を行う。発達支援や教育DX、不登校、受験などの分野において、教育現場や官公庁、当事者への取材多数。 【URL】 ポートフォリオサイト https://ainakamura.edire.co/ ブログ「てとて~みんなの発達支援相談室」 https://tetote-tama.com 著書『発達障害&グレーゾーンの子 小学校生活の困りごと解決Book 学校の先生が教える!発達が気になる子のための困りごとヒント1』 https://amzn.to/3GVGKii