コロナ禍で小1・小2不登校児が激増した3つの原因と「子どもと先生の負のサイクル」を小学校教諭が解説
小学校教諭・庄子寛之先生と考える子どもの不登校 #1 コロナ禍と不登校児の関係性について
2023.01.22
小学校教諭:庄子 寛之
文部科学省の調査によれば、2021年度に30日以上学校を欠席した全国の国公私立小中学校の不登校の児童・生徒は24万4940人。2020年度に比べると、24.9 %増の4万8813人で過去最高数となりました。文科省は不登校の原因のひとつに、新型コロナウイルスの影響がうかがえるとしています。
それでは、実際にコロナ禍において、不登校の原因になるようなことが小学校では起こっているのでしょうか? 公立小学校現役教諭である庄子寛之先生にその実態についてお話を聞きました。1回目はコロナ禍で不登校が増えている原因についてです。
(全3回の1回目)
庄子寛之
(しょうじ・ひろゆき)
東京都公立小学校指導教諭。道徳教育や人を動かす心理を専門とする。学級担任をするかたわら、「先生の先生」として全国各地で講演を行っている。担任した児童は500人以上、講師として直接指導した教育関係者は2000人以上にのぼる。
コロナ禍に小1・小2の不登校が増えたのはなぜ?
──2021年度の不登校児の数が前年度に比べて25%も増えているのは、新型コロナウイルスの影響ではないかという報道がありました。実際に教壇に立たれている庄子先生は、どのように感じていますか?
庄子寛之先生(以下、庄子先生):確かに25%という伸び率はすごいなと思います。中学校の不登校も増えていますが、増加率を見ると小学校1年生と2年生がとても増えていますね。
今までは不登校というと、小学校高学年から中学生くらいを想定していました。そのなかで小1・小2が増えているというのがコロナ禍の特徴かもしれません。
──その原因としてどんなことが考えられますか?
庄子先生:原因は3つ考えられます。
1つめは、子どもたちが集団生活をする機会が明らかに減って、我慢力や忍耐力が落ちたこと。
2つめは、それにもかかわらず、学校ではコロナ禍以前と同じように𠮟ったり、指示を出したりしていること。
そして3つめは、テレワークで自宅にいる保護者が増えたことだと思います。
1つめに関していえば、コロナ禍以前は全校朝会があって、登校したらすぐに校庭に並んで、立って、黙って、校長先生の話を聞いていたんです。それがいわゆる我慢したり辛抱したりする機会になっていました。
しかし、コロナ禍において、多くの学校で全校朝会はオンラインで行われるようになり、明らかにそういう機会は減りました。特にコロナ禍に入学した1~3年生に関していえば、入学はしたけれどほとんど登校することはありませんでしたから、その傾向は顕著だと思います。
2022年になって学校に戻ってきている子どもたちとコロナ禍以前の様子を比べると、朝礼や音楽会などの練習でも、黙って立っていられる時間は確実に短くなりました。
コロナ禍で不登校児が増えた3つの要因
●集団生活をする機会が減ったことで子どもたちの忍耐力や我慢力が落ちたこと
●子どもたちが変わっているのに、学校の指導は変わらないこと
●テレワークが増えて保護者が自宅にいること
子どもと先生の間に起きる負のサイクルとは?
──先生たちは、コロナ禍以前と以降で、子どもへの教え方や接し方は変わりましたか?
庄子先生:我慢する力、忍耐力が落ちていますから、コロナ禍以前と同じように𠮟ったり指示を出したりしても子どもたちは動きません。
忍耐力、我慢力がない子どもたちは、授業中に立ち歩いたり、人にちょっかい出したり……。また、立ち歩かないまでも、授業を聞かなかったり、言われたことをやらなかったりを繰り返します。
そうなれば当然、先生も注意せざるを得ません。子どもは注意されればおもしろくありませんから、また立ち歩いたり、人に危害を与えたりして、先生に怒られる。まさに負のサイクルですね。
そのうちに先生が保護者に電話するようになると、「そんなに嫌なことがあるのにどうして学校に行かなくちゃいけないの?」という疑問を抱くようになります。
また、コロナ禍以前は、「自分たちの子どものときはこうだったから」と教える先生がたくさんいました。そして今、社会情勢も子どもたちも変わったにかかわらず、同じように𠮟ったり、指示を出したりする先生が少なからずいます。不登校の子が増えても仕方ない状況だと思います。
──先ほど3つめの原因という、保護者のテレワークについてですが、自宅で仕事をすることでの影響が不登校とどのようにつながるのでしょうか?
庄子先生:実は、この10年くらいで日本の共働き率はすごく上昇しています。コロナ禍以前、特にお母さんが仕事するためには、当然、子どもは学校に行ってもらわなければなりませんでした。
しかし、コロナ禍で仕事の形態がテレワークへと変化し、自宅にいることができているわけです。それなら、子どもが嫌な思いをしたり、毎日のように学校から電話かかってきたりするくらいなら、保護者のほうは「学校へ行かなくてもいい」と思っても仕方ないのかもしれません。