子どもには助言せずに相談に乗る <小学校中・高学年>家庭学習のコツ

子どもの「やりたい!」を引き出す家庭学習のヒント#4

高村 ミチカ

中・高学年向け「ワクワク型」のオススメ学習法

中・高学年になると、「自分なりの表現をしたい」という思いが出てきます。そのため、中・高学年の「ワクワク型」では、表現の幅を広げて考えてみるといいでしょう。

例えば、調べたことを紙に書いてまとめるだけではなく、タブレットを活用してプレゼンテーションするなど、子どもの「表現したい」という思いを、お家の人が引き出しましょう。

オススメの本のCMをつくろう

本が好きなお子さんなら、「本を紹介する」という学習法はぴったりです。

ポスターを作成したり、書店のPOP広告のようにまとめたりすると、あらすじやお気に入りのポイントを整理する必要があるので、国語の「読む力」を活用することができます。

また、本が苦手なお子さんでも、タブレットの動画編集ソフトを使って「CMにまとめる」という方法なら、比較的楽しんで取り組めるでしょう。

iPadを使用しているなら、iMovieの「予告編」のテンプレートを使うのがオススメです。文字や写真を配置するだけで、簡単にCMを作ることができます。

また、学校のタブレットで「ジャストスマイル」という学習ソフトが入っている場合は、「ジャストスマイル」内にある「動画ツール」は使いやすくておすすめです。慣れていない場合は、はじめはお家の人が手伝ってあげる必要があるかもしれません。しかし、一度コツを覚えてしまえば、子どもはあっという間に使いこなしてしまうでしょう。

CMは短い時間で伝えなければならないので、使う写真や動画、キャッチコピーなどを吟味する必要があります。そのため、紹介したい本の話の中心を捉え、的確な言葉で表現する力が求められます。

これはまさに「国語」の力です。デジタルの表現であっても、試行錯誤しながら、写真や言葉を選ぶとき、思考の力が働いています。「紙に書かせなきゃ」と思わず、その子にあった表現の仕方を認めてあげることが大切です。

地図帳で妄想旅行!?

学習指導要領が改定され、今まで4年生に配布されていた地図帳が3年生で配布されるようになりました。

3年生の社会科では、身近な地域や市区町村の様子について、4年の社会科では都道府県の様子や県内の特色ある地域の様子について調べる学習をします。

地図帳を活用し始める中学年の家庭学習には、「地図帳旅行」がぴったりです。「地図帳旅行」とは、地図上で行ってみたいところを見つけて、妄想で旅行をすることです。

まずは、地図上で行ってみたいところを見つけて、印をつけます。そして、地図上で主要な路線や道路を探しながら、目的地までの経路を考えましょう。

どうやって行くのか調べることで、市街地に多く交通網が広がっているなど交通の広がりについての特徴に気づくことができます。

次に、どれくらい離れているか距離を調べましょう。距離を調べるときには、「縮尺」を意識することが大事です。地図上には、「スケールバー」と呼ばれる縮尺を表した図が載っていて、実際の距離を計算で割り出すことができます。

実は、縮尺の計算をするためには、社会の知識はもちろん、算数の計算の技能も必要になります。「実際の長さ=地図上の長さ÷縮尺」で表されますが、この縮尺は分数で表されるため、分数の割り算が理解できていないと、計算ができないのです。

最後に、せっかくの旅行なので、その地域の名所や名産などについても調べてみましょう。

Googleマップのストリートビューを使うと、名所を実際に巡ることもできます。また、「お土産に何を買って帰ろうかな」と考えてみるのも楽しい想像です。

名所や名産を調べることは、その土地の特徴をつかむことにつながります。これは、4年生の社会科の都道府県の様子についての学習と大きく関わってきます。

高学年は、日本の特色と世界の特色について学習をするので、世界旅行をしてみるといいでしょう。

プログラミングで論理的思考を養う

2020年度から小学校でのプログラミング教育が必修化された。
写真:アフロ

新学習指導要領の柱の一つに「プログラミング教育」があります。プログラミングと言っても、難しいコードを書くわけではありません。

簡単なプログラミングを体験することで、コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な「論理的思考力」を身につけるための学習活動として位置づけられています。

「Scratch」や「プログラミングゼミ」などの「ビジュアルプログラミング」の無料アプリ を使えば、家庭でも簡単にプログラミングを体験することができます。

「ビジュアルプログラミング」とは、アイコンや絵で表されたブロックを組み合わせてプログラミングをするもの。子どもでも抵抗なく取り組むことができます。

オリジナルのキャラクターを考えてアニメーションをつくったり、自分の作った音楽に合わせてイラストをつけてMVをつくったりするなど、自由に創作をすることができます。

また、ブロックをうまく組み合わせると、簡単なゲームをつくることもできます。このように、プログラミングは、子どもの自由な創作にぴったりなのです。

高村さんオススメの「ビジュアルプログラミング」アプリ
・Scratch

・プログラミングゼミ

失敗してもO K!自分でやることを大切に

中学年以上になると、自我が育ち、強く自己主張するようになります。

そのため、低学年では親の言うことを素直に聞いてくれていた子が、急に反抗的な態度になったと感じることも多いもの。「勉強しなさい」と命令されたり、「もっと〜した方がいいよ」とアドバイスをされたりするのを嫌がるようになります。

親としては悲しいですが、これは、大切な発達過程のひとつであり、親からの自立に向けた第一歩。

子どもを無理に押さえ込むのではなく、失敗してもいいから自分でやらせることが大切です。

大人からすると、「なんでそんな無駄なことするの?」「もっといいやり方があるのに」と思うこともあるかもしれませんが、子どもに声をかけるのはグッとこらえてください。子ども自身が「うまくいかない」「アドバイスを聞きたい」と思ったときまで待ち、子どもからのヘルプがあったら答えましょう。

大人の助言を受け入れる体勢が整うのは、子どもが求めたときなのです。

大切なのは、困ったときに相談できる存在がいること。

お家の人は、子どもに「困ったことがあったら相談してね」と声をかけておき、見守るようにしましょう。相談を受けたときには、「なんでこんなこともわからないの?」などと否定せず、寄り添って話を聞いてあげることが大切です。

「相談してよかった」と思える経験が、安心して相談できる関係性を築いていきます。子どもが主体的に学習に取り組むには、お家の人と子どもとの関係性が大切なのです。

取材・文/高村ミチカ

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たかむら みちか

高村 ミチカ

教育専門家

東京学芸大学教育学部卒業後、公立小学校に3校勤務し、11年間担任を務める。1〜6年生まで全ての学年を経験。主に国語科を中心に授業研究を行い、子どもが主体的に学ぶ姿を目指した。独自の授業プランが評価され、「教育技術」等教員向けの雑誌の記事執筆経験もある。 現在は、ライターとして活動する傍ら、教員の経験を生かし、オンライン相談サービス「ウチのこは」で教育専門家として活動中。子どもに関することでお悩みの保護者の方や教員の方からの相談を受けている。 ◯教育実践の執筆 ・雑誌「教育技術」(小学館) ・「学力がグーンとアップする!自学力育成プログラム」(明治図書出版) ・「子どもが輝くいい授業作り」(東洋館出版) ・「『見方・考え方』を働かせる実践事例&プラン」(東洋館出版)

東京学芸大学教育学部卒業後、公立小学校に3校勤務し、11年間担任を務める。1〜6年生まで全ての学年を経験。主に国語科を中心に授業研究を行い、子どもが主体的に学ぶ姿を目指した。独自の授業プランが評価され、「教育技術」等教員向けの雑誌の記事執筆経験もある。 現在は、ライターとして活動する傍ら、教員の経験を生かし、オンライン相談サービス「ウチのこは」で教育専門家として活動中。子どもに関することでお悩みの保護者の方や教員の方からの相談を受けている。 ◯教育実践の執筆 ・雑誌「教育技術」(小学館) ・「学力がグーンとアップする!自学力育成プログラム」(明治図書出版) ・「子どもが輝くいい授業作り」(東洋館出版) ・「『見方・考え方』を働かせる実践事例&プラン」(東洋館出版)