
【ブックハウスカフェ店長・茅野由紀さん】子どもの本の専門店店長が語る『100万回生きたねこ』
刊行50周年記念インタビュー第2回
2026.09.25
写真提供:ブックハウスカフェ
『100万回生きたねこ』は、2027年に刊行50周年をむかえます。それを記念して、絵本と関わりの深い方々に『100万回生きたねこ』にまつわる想いや思い出を取材する連載第2回。今回は、「ブックハウスカフェ」店長の茅野由紀さんにインタビューします。

『100万回生きたねこ』50周年のロゴマークができました!
”日本一あたたかい本屋さん”を目指す店長として
───茅野さんは、神保町にある子どもの本の専門店「ブックハウスカフェ」の店長をされています。まずは、お仕事について教えてください。
茅野由紀さん(以下茅野さん):ブックハウスカフェができたのは、2017年。そのときから店長を務めています。前身から数えると、書店員としては21年目になります。
「子どもが主役のお店」「子どもが本を選びやすいお店」にしたいと思い、活動してきました。ベビーカーですみずみまで行けるように通路の幅を広く、中央の本棚の高さは120cm、子どもが店内を見渡せる高さに、平台は40cm、赤ちゃんがたっちして、ちょうどさわれる高さになっています。オムツ替えスペースを設け、書店の中心にあるカフェでは、キッズメニューの提供も行っています。
スタッフもみな子どもに優しく、「日本一あたたかい本屋さん」を目指しています。
茅野由紀さん(以下茅野さん):ブックハウスカフェができたのは、2017年。そのときから店長を務めています。前身から数えると、書店員としては21年目になります。
「子どもが主役のお店」「子どもが本を選びやすいお店」にしたいと思い、活動してきました。ベビーカーですみずみまで行けるように通路の幅を広く、中央の本棚の高さは120cm、子どもが店内を見渡せる高さに、平台は40cm、赤ちゃんがたっちして、ちょうどさわれる高さになっています。オムツ替えスペースを設け、書店の中心にあるカフェでは、キッズメニューの提供も行っています。
スタッフもみな子どもに優しく、「日本一あたたかい本屋さん」を目指しています。
書棚の高さを抑え、お子さんが店内を見渡せるように。 写真提供:ブックハウスカフェ
カフェスペースでは読み聞かせ会の開催も。 写真提供:ブックハウスカフェ
───書店員さんとして、『100万回生きたねこ』をどのように売っていらっしゃるのでしょうか?
茅野さん:私は佐野洋子さんの絵本が大好きで、『100万回生きたねこ』も含め、佐野洋子さんの著作を店頭にそろえています。そういった作家さんは多くはないのです。
名前は聞いたことがあったけれど、じつは読んだことがなかった、というお客さまもいて、買っていってくださる方も多いですし、不思議と『100万回生きたねこ』を手に取って見ている方も多い、もしかしたら、「ブックハウスカフェ」という書店が『100万回生きたねこ』と合っているのかもしれません。そして、私自身が、そういうお店を作りたかったのかもしれません。
書店員になって、絵本を仕事として見るようになったときに、佐野洋子さんの絵本がとても心に刺さったんです。どんな著作があるのか調べて、追いかけるようになりました。
佐野さんの絵本は、よけいな言葉がなく、読者にゆだねてくれるところが大きいと思います。想像力をかきたて、テキストに書かれていないことも感じさせる絵がありますよね。そういうところも、お勧めする理由です。
茅野さん:私は佐野洋子さんの絵本が大好きで、『100万回生きたねこ』も含め、佐野洋子さんの著作を店頭にそろえています。そういった作家さんは多くはないのです。
名前は聞いたことがあったけれど、じつは読んだことがなかった、というお客さまもいて、買っていってくださる方も多いですし、不思議と『100万回生きたねこ』を手に取って見ている方も多い、もしかしたら、「ブックハウスカフェ」という書店が『100万回生きたねこ』と合っているのかもしれません。そして、私自身が、そういうお店を作りたかったのかもしれません。
書店員になって、絵本を仕事として見るようになったときに、佐野洋子さんの絵本がとても心に刺さったんです。どんな著作があるのか調べて、追いかけるようになりました。
佐野さんの絵本は、よけいな言葉がなく、読者にゆだねてくれるところが大きいと思います。想像力をかきたて、テキストに書かれていないことも感じさせる絵がありますよね。そういうところも、お勧めする理由です。
店頭に平積みされた『100万回生きたねこ』。 写真提供:ブックハウスカフェ
『100万回生きたねこ』は大人のための本か?
───以前お目にかかったとき、「『100万回生きたねこ』は、大人の絵本と言われるけれど、私は子どもに読み聞かせをしてきたし、いまもいっしょに読んでいる」と茅野さんがおっしゃっていたのが印象的でした。
茅野さん:書店員になったときに、著名な編集者の方から言われたんです。『100万回生きたねこ』は、大人の本だと思う、と。そのとき、「子どもの私は、どう読むんだろう? 私は大人の視点で読んでいるのだろうか?」と思いました。
自分の子どもが2歳くらいのとき、読み聞かせをしたことがあって。子どもたちはじっと本を見て、読み聞かせに耳をかたむけていました。そのシーンを他の方が写真に撮ってくださったんですけど、子どもと私の表情に驚きました。とてもいい顔をしていたんです。
『100万回生きたねこ』が大人のための絵本かどうかは私にはわからないけれど、この絵本を読み聞かせできる、この絵本を読み合うことができる親子関係って、なんて豊かなんだろうと思いました。
それからずっと読み聞かせをしてきましたが、いつも最後のほうの「ある日, 白いねこは, ねこの となりで しずかに うごかく なっていました。」で始まるページで泣いてしまうんです。子どもは「どうして泣くの?」と聞くけれど、家で読んでも、「ブックハウスカフェ」での読み聞かせ会などでも、必ずそこで泣いてしまう……。
「どうして?」と言っていた子どもが、高校生になり、この絵本を読んで「ママの気持ちがわかる気がする」と言いました。私は、そうか、少し大人になったんだなと思いました。
これからも折に触れて読み返し、子どもの生涯に寄り添う絵本になるのだろうと思いました。
茅野さん:書店員になったときに、著名な編集者の方から言われたんです。『100万回生きたねこ』は、大人の本だと思う、と。そのとき、「子どもの私は、どう読むんだろう? 私は大人の視点で読んでいるのだろうか?」と思いました。
自分の子どもが2歳くらいのとき、読み聞かせをしたことがあって。子どもたちはじっと本を見て、読み聞かせに耳をかたむけていました。そのシーンを他の方が写真に撮ってくださったんですけど、子どもと私の表情に驚きました。とてもいい顔をしていたんです。
『100万回生きたねこ』が大人のための絵本かどうかは私にはわからないけれど、この絵本を読み聞かせできる、この絵本を読み合うことができる親子関係って、なんて豊かなんだろうと思いました。
それからずっと読み聞かせをしてきましたが、いつも最後のほうの「ある日, 白いねこは, ねこの となりで しずかに うごかく なっていました。」で始まるページで泣いてしまうんです。子どもは「どうして泣くの?」と聞くけれど、家で読んでも、「ブックハウスカフェ」での読み聞かせ会などでも、必ずそこで泣いてしまう……。
「どうして?」と言っていた子どもが、高校生になり、この絵本を読んで「ママの気持ちがわかる気がする」と言いました。私は、そうか、少し大人になったんだなと思いました。
これからも折に触れて読み返し、子どもの生涯に寄り添う絵本になるのだろうと思いました。
絵本はいつも子どもの友だち。 写真提供:ブックハウスカフェ
『100万回生きたねこ』は普遍的な人間の営みを描く絵本
───茅野さんにとって、『100万回生きたねこ』はどんな絵本でしょうか?
茅野さん:普遍的な人間の営みが書かれた絵本だと思います。人間の文化や科学は発展しているけれど、いろいろな装飾を省いていったら、残るのは、この絵本のテーマだと思います。「生きる」「死ぬ」「愛する」という……。「人間は愛し、愛されて、大切に生きていったらいい」。
ラブストーリーでもあると思いますが、恋人同士の愛というよりは、もっと壮大なラブストーリーなのではないかな……と。時代を超えて、人間として最も大切な営みである「日々の営み」「誰かを慈しむこと」や「愛」を描いていると思います。戦争や複雑な社会情勢がある中で、改めて人としての根本を問いかける作品だと思っています。
絵本ですと、最後は幸せな結末をしめすことが多いのですが、この絵本は、よけいな言葉を加えず、「ねこは もう, けっして 生きかえりませんでした。」という1文で終わっている。こういうところが佐野洋子さんの絵本の魅力であり、作家性だと思います。文章と絵の潔さに、読者への信頼を感じています。
茅野さん:普遍的な人間の営みが書かれた絵本だと思います。人間の文化や科学は発展しているけれど、いろいろな装飾を省いていったら、残るのは、この絵本のテーマだと思います。「生きる」「死ぬ」「愛する」という……。「人間は愛し、愛されて、大切に生きていったらいい」。
ラブストーリーでもあると思いますが、恋人同士の愛というよりは、もっと壮大なラブストーリーなのではないかな……と。時代を超えて、人間として最も大切な営みである「日々の営み」「誰かを慈しむこと」や「愛」を描いていると思います。戦争や複雑な社会情勢がある中で、改めて人としての根本を問いかける作品だと思っています。
絵本ですと、最後は幸せな結末をしめすことが多いのですが、この絵本は、よけいな言葉を加えず、「ねこは もう, けっして 生きかえりませんでした。」という1文で終わっている。こういうところが佐野洋子さんの絵本の魅力であり、作家性だと思います。文章と絵の潔さに、読者への信頼を感じています。
『100万回生きたねこ』(佐野洋子 作・絵/講談社)より ©JIROCHO, Inc. / KODANSHA
これから出会う読者に向けて
───これからこの絵本を読まれる方にメッセージを送るとしたら、どんなことを伝えたいですか?
茅野さん:人生の節目など、折々に読み返すと不思議と印象が変化していくおもしろさがある絵本で、それは人が生きるうえで大切なことが書かれているからではないかと思っています。生涯寄り添ってくれる名作に、いつどのタイミングでもいいから、ぜひ出会ってほしいと願っています。
茅野さん:人生の節目など、折々に読み返すと不思議と印象が変化していくおもしろさがある絵本で、それは人が生きるうえで大切なことが書かれているからではないかと思っています。生涯寄り添ってくれる名作に、いつどのタイミングでもいいから、ぜひ出会ってほしいと願っています。
─── ─── ─── ─── ───
佐野洋子さんの著作が大好き、とおっしゃる茅野さん。小さな新聞の記事の切り抜きも取ってあるとおっしゃっていたのが印象的でした。『100万回生きたねこ』を愛し、『100万回生きたねこ』が読者の方と出会う場を作りつづけてくださっていることに編集部一同改めて感謝した取材でした。
取材・文/幼児・学習図書出版部
佐野洋子さんの著作が大好き、とおっしゃる茅野さん。小さな新聞の記事の切り抜きも取ってあるとおっしゃっていたのが印象的でした。『100万回生きたねこ』を愛し、『100万回生きたねこ』が読者の方と出会う場を作りつづけてくださっていることに編集部一同改めて感謝した取材でした。
取材・文/幼児・学習図書出版部
































茅野 由紀
1万冊を超える絵本を取り揃えた、子どもの本専門店「ブックハウスカフェ」(東京・神保町)店長。2005年から絵本の世界に携わり、20年。新聞などのメディアで書評やコラムを連載するほか、教育機関で講師も務める。2児の母。 ●ブックハウスカフェ
1万冊を超える絵本を取り揃えた、子どもの本専門店「ブックハウスカフェ」(東京・神保町)店長。2005年から絵本の世界に携わり、20年。新聞などのメディアで書評やコラムを連載するほか、教育機関で講師も務める。2児の母。 ●ブックハウスカフェ