【かがくいひろしの世界】子どもへの思いを形にした伝説の絵本作家

卓越した才能とユーモア、子どもへの限りない愛情を持った絵本作家の世界と誕生秘話

「おもちのきもち」 かがくい ひろし 表紙イラストより

絵本作家・かがくいひろしさんの誕生

かがくいひろしさんは、2005年「第27回講談社絵本新人賞」を受賞し絵本作家としてデビューしました。以来、一躍、人気作家となり、次々と絵本を刊行しましたが、2009年、膵臓(すいぞう)がんのため、54歳で急逝。わずか4年の間に、16冊もの絵本を残した伝説の絵本作家をご紹介します。
かがくいひろし
東京都生まれ。1980年、東京学芸大学教育学部美術学科卒業。千葉県下の特別支援学校で28年にわたり教鞭をとる傍ら、人形劇の公演活動や立体作品の制作・発表をおこなう。50歳のとき『おもちのきもち』(講談社)で「第27回講談社絵本新人賞」を受賞し、絵本作家デビュー。以降、2009年に病で急逝するまでの4年間に「だるまさん」シリーズ(ブロンズ新社)、『ふしぎなでまえ』『みみかきめいじん』(講談社)、『おむすびさんちのたうえのひ』(PHP研究所)、「まくらのせんにん」シリーズ(佼成出版社)など16冊の絵本をのこす。

受賞の電話では女子高生のように喜んだ

2005年『おもちのきもち』で、第27回講談社絵本新人賞を受賞し、絵本作家デビューをした、かがくいひろしさん。受賞の知らせを受けたときのことを、こんなふうに振り返っています。

「うれしかったです。連絡の電話をくれた編集者には『女子高生のように喜んでいた』と言われたほど。最初の応募が佳作で、次も佳作。そのとき、前作のほうが面白かったと言われたこともあり、『講談社の賞には合わないのかな?』とあきらめかけていたんです。でも受賞パーティーでお会いした書店員さんたちが『やめちゃだめ!』と強く後押ししてくださって。佳作の2作を見て応援していてくれたのです。それで、よし、最後だと思って応募したこともあって、うれしかったですね」(絵本通信「絵本新人賞インタビュー」より)

受賞作『おもちのきもち』はこうして描かれた

『おもちのきもち』創作のアイデアが描かれたノート。 撮影:黒澤義教
デビュー作『おもちのきもち』は、とてもユニークな発想とユーモアあふれる絵が大好評。刊行からずっと版を重ねて大勢の読者に愛されています。お正月に飾られた「かがみもち」が逃げだすところから始まるこの作品、どのようにして生み出されたのかというと……。

絵本の着想を記録するメモにあった何編かの作品のメモや「おもち」のイラストから、「おもちが逃げだしたらおもしろいんじゃないか」と考えたそうです。そこから絵や言葉が浮かんできて、「おもち」が形を変えるところや、柔らかくなったり固くなったりすることをヒントに、話を展開していったと語ります。

絵本作家になるまで

絵本作家としてデビューするまで、特別支援学校の教員を務めていた、かがくいひろしさん。人形劇や読み聞かせなど、障害のある子も楽しめる取り組みを長く続けてきました。

「人形劇では、動きと音との兼ね合いが好きだったんです、オノマトペとか。子どもも大好きでしょ。その動きと言葉を考えているうちに、自分のなかで音と絵がつながったのかな」(絵本通信「絵本新人賞インタビュー」より)

絵本作家として大切にしたいこと

絵本作家として、身体感覚や生理的なこと、生きている人に共通する感覚を大事にしていきたいと語った、かがくいさん。描いていて、自分自身が気づけば笑っている、そんな絵本ならOKと言っていたかがくいさんは、その言葉どおり、子どもも大人も思わず笑ってしまう楽しい絵本をたくさん生み出しました。

「かがくいひろしの世界展」開催中

かがくいひろしさんの4年間の軌跡と絵本作家になるまでの人生、絵本作家としての原点を追いかけた、はじめての大規模展覧会「日本中の子どもたちを笑顔にした絵本作家 かがくいひろしの世界展」が開催中です。

絵本作家としては、『おもちのきもち』や「だるまさん」シリーズが有名なかがくいひろしさんですが、彼が特別支援教育に携わっていたことはあまり知られていません。彼の絵本の原点には、障がい児教育の現場での経験がありました。

今回の展覧会では、絵本の原画を中心に、アイデアノートや未完のラフなどとともに絵本作家としての軌跡をたどりながら、教員時代に手がけた教材や人形劇の記録などから、絵本創作のルーツに迫ります。

開催スケジュール

長野県【会期終了】
開催中:~2023年9月16日(土)
会場:イルフ童画館
https://www.ilf.jp/exhibition/kagakuihiroshi/

岩手県【会期終了】
開催期間:2023年9月30日(土)~12月24日(日)
会場:花巻市博物館
https://www.city.hanamaki.iwate.jp/bunkasports/bunka/1008981/1009017/1018710.html

高知県
開催期間 : 2024年4月20日(土)~6月16日(日)
会場 : 香美市立やなせたかし記念館
https://anpanman-museum.net/exhibition/pfeoujkaaeqz4cm1.html

兵庫県
開催期間 : 2024年6月29日(土)~9月1日(日)
会場 : 神戸ファッション美術館
https://www.fashionmuseum.jp

東京都
開催期間 : 2024年9月14日(土)~11月4日(月・祝)
会場 : 八王子市夢美術館
https://www.yumebi.com/

宮崎県
開催期間 : 2024年11月16日(土)~2025年1月8日(水)
会場 : みやざきアートセンター
https://miyazaki-ac.com/

福島県
開催期間 : 2025年1月25日(土)~3月9日(日)
会場 : 福島県立美術館
https://art-museum.fcs.ed.jp/

かがくい ひろしの絵本

「おもちのきもち」 かがくい ひろし
お正月のかがみもち、その気持ちは、「もう たいへんなんです」いつなんどき食べられてしまうか、わかりません。そこで、かがみもちは、ある決心を……。
「もくもくやかん」 かがくい ひろし
「いちについてー、いきますよー。」かんかんでりの、ある日のこと。やかん、ポット、じょうろ、きゅうすが集まって……さてさて、なにが起きるのかな?
「ふしぎなでまえ」 かがくい ひろし
こんな出前が来たらどうする!? ものぐさ者のじゃがさんとさつまさんのところに、「ふしぎなでまえ」がやってきた! かがくい ひろしのふしぎでおかしいお話。
「はっきよい畑場所」 かがくい ひろし
豊作御礼!! 野菜たちの大相撲がはじまるよ。おおずもう畑場所の千秋楽。たまね錦、なすび里、だいこの嵐……畑でとれた力士たちが大奮闘。結びの一番は両横綱の手に汗にぎるおおずもう。さて、軍配は!?
「みみかきめいじん」 かがくい ひろし
「みみかきして!」お客が続々つめかけます。
みみかき名人の先生と、ひょうたんのひょうすけが、次々にやってくるお客さんを相手に大奮闘。最後にやってきたのは……! さて、先生とひょうすけは、どうする?
「うめじいのたんじょうび」 かがくい ひろし
今日はうめじいのたんじょうび。ところで、うめじいって、いくつなんだろ? 100さい? 200さい?? 1000さい!? 浅漬けきゅうりや、たくあんや、らっきょう漬けや千枚漬けが梅干しのうめじいをかこんで、たんじょうびを祝います。

かがくい ひろし

Hiroshi Kagakui
絵本作家

東京都生まれ。1980年、東京学芸大学教育学部美術学科卒業。千葉県下の特別支援学校で28年にわたり教鞭をとる傍ら、人形劇の公演活動や立体作品の制作・発表をおこなう。50歳のとき『おもちのきもち』(講談社)で「第27回講談社絵本新人賞」を受賞し、絵本作家デビュー。以降、2009年に病で急逝するまでの4年間に「だるまさん」シリーズ(ブロンズ新社)、『ふしぎなでまえ』『みみかきめいじん』(講談社)、『おむすびさんちのたうえのひ』(PHP 研究所)、「まくらのせんにん」シリーズ(佼成出版社)など16冊の絵本をのこす。写真撮影:大志摩洋一

東京都生まれ。1980年、東京学芸大学教育学部美術学科卒業。千葉県下の特別支援学校で28年にわたり教鞭をとる傍ら、人形劇の公演活動や立体作品の制作・発表をおこなう。50歳のとき『おもちのきもち』(講談社)で「第27回講談社絵本新人賞」を受賞し、絵本作家デビュー。以降、2009年に病で急逝するまでの4年間に「だるまさん」シリーズ(ブロンズ新社)、『ふしぎなでまえ』『みみかきめいじん』(講談社)、『おむすびさんちのたうえのひ』(PHP 研究所)、「まくらのせんにん」シリーズ(佼成出版社)など16冊の絵本をのこす。写真撮影:大志摩洋一

幼児図書編集部

絵本をつくっている編集部です。コクリコでは、新刊の紹介や作家さんのインタビュー、イベントのご案内など、たのしい情報をおとどけします! Instagram : @ehon.kodansha Twitter : @kodansha_ehon

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