2021.05.28

たまには手を抜こう! 絵本専門士が選ぶ「料理が億劫なとき」おすすめの3冊

大人に効く絵本〔06〕『ワタナベさん』『ふしぎなでまえ』『11ぴきのねことあほうどり』がおすすめ

毎日の料理作りに疲れてしまったら、食べ物にまつわる楽しい絵本が気分転換のきっかけになることも。
写真:アフロ

絵本は、子どものためのもの。そんなイメージがありますが、美しい絵に癒やされたり想像力が鍛えられたり、ハッと気付かされたりと、実は大人にとっても感動がいっぱい。子育て中なら、子どもの頃とはまた違った向き合い方をすることで、わが子に、より絵本のよさを伝えられるかもしれません。

この連載では、“絵本のプロ”がパパママにこそ読んでほしい絵本を、毎回テーマに合わせてピックアップ。第6回は、絵本専門士・井上まどかさんが、「料理をするのが億劫になったとき」をテーマに厳選した3冊をご紹介します。

こんなお鍋があったらいいのに

「今日は料理をしたくないなぁ」というとき、誰にでもありますよね。私自身もカフェの店長という職業柄、お店では毎日料理をしているのですが、家に帰ってから自分のために作るとなると、なかなか億劫だったりします(笑)。

特にこのコロナ禍、家にいる時間が増えて、1日3食自炊という方もいらっしゃるでしょう。でも、どうかがんばりすぎずに! これからご紹介する絵本にも登場しますが、大変なときはテイクアウトや出前にお任せして、食事の時間そのものを楽しむのもアリだと思うのです。手抜きではなく、息抜き。今回は、そんな、食事を楽しむヒントにもなりそうな<料理>の絵本をお届けします。

1冊目は、料理屋を営む“お鍋”が主人公の『ワタナベさん』(作・絵:北村直子)です。ワタナベさんとは擬人化した“お鍋”のキャラクターの名前で、自分自身、つまりお鍋ひとつでどんな料理でも作れる“料理上手なお鍋”。メニューは、おでん、ロールキャベツ、カレー、中華鍋、炊き込みごはん……と和洋折衷で、レパートリーもたくさん! 顔を真っ赤にしながら作ってくれます。お客さんとやり取りする様子は、まるで食堂のおばちゃんのようです。お客さんが自分の家のお鍋を持って、料理を買いにくるというテイクアウトのスタイルも、今の時代に合っていますよね。

そんなある夜のこと、最後にやってきたお客さんの男の子から思わぬ注文が入りました。「ナポリタン3にんまえ ください」。さすがにフライパンがなければ作れないと、困ってしまうワタナベさん。果たして、無事にナポリタンを作ることができるのでしょうか――?

一家にひと鍋、ワタナベさん! おいしそうな料理の数々に「ワタナベさんのようなお鍋があったらいいのになぁ~」と、思わずにはいられません。巻末には、ワタナベさんのオリジナルレシピ付き。お鍋ひとつでできるなら、料理が面倒なときも「作ってみようかな」という気持ちになりそうですよね。お子さんと挑戦してはいかがでしょう?

昔ながらの大きな鍋、懐かしい佇まいの店先など、かわいいイラストにもほっこりする『ワタナベさん』(作・絵:北村直子/偕成社)

出前を取るのが楽しみになりそう!

続いてご紹介するのは、『ふしぎなでまえ』(著:かがくいひろし)。ベストセラー『だるまさんが』『だるまさんの』『だるまさんと』で知られる、かがくいひろしさんの作品です。かがくいさんは50歳のときに絵本作家としてデビューされたのですが、その4年後に急逝されています。創作期間は短いものの、かわいらしく、印象深い作品をたくさん残されていて、『ふしぎなでまえ』もそのひとつです。

主人公は、ぐうたらなじゃがいもの「じゃがさん」と、さつまいもの「さつまさん」。ある日、ごはんを作るのが面倒になったふたりは、出前を取ることにしました。カレーライスとラーメンを注文したのですが、やってきたのは、空っぽのお皿とラーメン丼。そして、なぜかじゃがさんとさつまさんが、自分たちで料理をすることになって――。

出前やデリバリーが身近になった今、「もし、こんな出前が来たらどうしよう?」と、大人でもワクワクする1冊です。じゃがいもやさつまいも、お皿など、擬人化したキャラクターたちの表情が豊かで、予想のつかない展開に大笑いしてしまいます。そして、ラストにはおまけのオチも……。出前を注文した後にこの絵本を開くと、料理が届くまでの時間も楽しく過ごせそうですね。

だるまさん』シリーズの絵本作家・かがくいひろしが描く『ふしぎなでまえ』(著:かがくいひろし/講談社)。ユニークでおいしい出前のお話

ねこたちの作るコロッケが食べたくなる!

最後は、お子さんと読んでいただきたい絵本として『11ぴきのねことあほうどり』(作:馬場のぼる)をご紹介します。とらねこ大将と10ぴきの仲間の冒険を描いた『11ぴきのねこ』シリーズ。子どものころ、大好きだったというパパママも多いのではないでしょうか。私自身もそうで、シリーズの中でいちばん好きなのがこの作品です。

コロッケ屋さんを始めた11ぴきのねこ。お店は繁盛するのですが、だんだん売れ残るようになり、ねこたちは毎晩コロッケを食べました。今日もコロッケ、明日もコロッケ。嫌いではないけれど、毎日続くと、さすがにイヤになってしまう。これって、料理が面倒になったときの気持ちとリンクするかもしれませんね(笑)。そんなふうに、コロッケにうんざりしながら「おいしいとりのまるやきがたべたいねえ」なんて話をしていると、そこに1羽のあほうどりが訪ねてきて――。

ちょっぴりずるいけれど、どこか憎めないねこたち。純粋で悪気のないあほうどり。かみ合っているようでかみ合っていない彼らのやり取りと、テンポのよいストーリー展開がおもしろい作品です。そして、ねこたちは飽き飽きしていたコロッケですが、読んでいる私たちには、とってもおいしそうに見えるんですよね。もしかしたら、「コロッケ、作ってみようかな」と、料理への意欲が湧いてくるかも……!? 世代を超えて愛される絵本、ぜひお子さんと楽しんでくださいね。

50年以上愛され続ける『11ぴきのねこ』シリーズの2作目、1972年発行の『11ぴきのねことあほうどり』(作:馬場のぼる/こぐま社)

絵本カフェの店長で、絵本専門士、元保育士など、さまざまな肩書を持つ井上まどかさん。
写真提供:本人

プロフィール
井上まどか

絵本カフェ「ムッチーズカフェ」店長。絵本専門士、保育士、幼稚園教諭一種、認定心理士の資格を保有。都内の公立保育園に9年間勤務した後、“夢と魔法の王国”での自称・お姉さんを経て、2016年、大人のための絵本カフェ「ムッチーズカフェ」をオープン。2020年11月には、東京・西荻窪にリニューアルオープンを果たす。絵本コラムを多数執筆し、雑誌『たのしい幼稚園』(講談社)では、おすすめの絵本を紹介する連載『たのしい絵本館』を担当。2021年度より、「認定絵本士養成講座」(国立青少年教育振興機構)の講師も務める。

ムッチーズカフェ 公式サイト https://mucchis-cafe.jimdofree.com/
ムッチーズカフェ Twitter  https://twitter.com/mucchiscafe

構成:星野早百合