「自由進度学習」で子どもも先生も劇変! 広島・公立小・驚きの実例公開

【小学校教育2.0】廿日市市立宮園小学校の挑戦#1「自由進度学習、驚きの効果」

ライター:川崎 ちづる

「一人ひとりに合わせた学び」「自主性を大切にした授業」。こうした教育は、独自の教育方針を掲げる私立学校に行かなければ受けられないと思っている方も多いかもしれません。

しかし、新学習指導要領がスタートし、「みんなで同じことを、同じペースで」から脱却した新しい授業方法を取り入れている学校が、公立学校の中からも少しずつ現れはじめています。

広島県廿日市市立宮園小学校は、2020年度から一部の授業に「自由進度学習」を取り入れています。そのことで子どもの学びへの姿勢が大きく変わり、学力も向上したといいます。

いったいどのような方法で取り組んでいるのか。宮園小学校の挑戦を、連載3回を通してご紹介します。

第1回は、自由進度学習の具体的な実践方法と、その成果についてうかがいました。
※全3回の第1回

本当に授業中? 「自由進度学習」の教室で繰り広げられる光景

教室に入ると、机をつけて友だちと話し合いながら学ぶ子、一人で黙々とプリントに取り組む子、タブレットを使って問題を解く子、子どもたちはそれぞれ、自分のペースで学習に取り組んでいます。

友だちとの相談もOK。椅子に座って学習しなければいけないというルールはありません。  写真提供:宮園小学校
タブレットも上手に活用しながら、自分のペースで学んでいきます。  写真提供:宮園小学校
わからないところは、友だち同士で教え合うことも。  写真提供:宮園小学校

隣の教室をのぞくと、いくつも設けられた「学習コーナー」(後述)の前で、子どもたちが何やら作業中。熱心に砂をビニール袋につめたり、ペットボトルに水を入れたり、友だちと相談しながら粘土を組み合わせてはかりに載せたり……。みんなミッションを成し遂げるために、真剣な表情です。

実際に砂の重さを計って、単位を学びます。  写真提供:宮園小学校
「水でピッタリ1kg」を計っています。  写真提供:宮園小学校

算数の授業中とは思えないこの光景。広島県廿日市市立宮園小学校の3年生の授業です。宮園小学校では、2020年度からこうした「自由進度学習」を授業の一部※に取り入れています。

※2020年度からの2年間、広島県の「個別最適な学びに関する実証研究事業」として、一部の教科で自由進度学習を実施。実証研究は2021年度で終了したが、2022年度も取り組みを継続中。

自由進度学習とは、子どもたちが教科書やプリントなどの教材を使い、自分のペースで学びを進めていく方法です。

クラス全員が同時に先生の話を聞いて、一斉にドリルなどの教材に取り組む従来型の授業とは異なり、子どもたちは計画表に基づき、それぞれ自分自身で学びを進めていきます。

子どもたちに自由進度学習の感想を聞くと、「楽しい」「自分のペースで進められるところがいい」「先生の指示を待たなくてもいいのでうれしい」と、イキイキした表情でその「良さ」を話してくれます。

「自由進度学習どう?」と質問すると、笑顔で「自分のペースで進められて楽しい」と答えてくれました。  写真提供:宮園小学校

全体の授業数からみると、自由進度学習に切り替えたのはほんの一部ではありますが、子どもたちの授業、学びに向かう姿勢には劇的な変化がありました。そして、その様子に、先生方は大きな衝撃を受けたといいます。

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