2021.04.07

GIGAスクールに準備せよ! 幼児期からのICT教育はじめの一歩

いつから?なにから?プログラミングって必要?|デジタルネイティブの育て方#2

寄稿家:豊福晋平

コロナ禍の混乱が続く2021年、文部科学省はGIGAスクール元年を宣言しました。2年後には生徒ひとりに1台のICT(Information and Communication Technology=情報通信技術)端末が配り終わる予定ですが、子どもたちの学校生活がどのような着地点を迎えるかは、まだまだ流動的です。不確定な未来を生きる子どもたちのために、未就学のいまから保護者が備えてあげられるICT教育とは。国際大学GLOCOM主幹研究員でICT教育研究の第一人者、豊福晋平先生に具体的な導入方法をうかがいました。

写真:アフロ

スマホのおもちゃをにぎりしめながら 子どもたちは未来を夢みている

いまや、ベビーカーに乗った赤ちゃんがおもちゃのスマホを握りしめている時代です。GIGAスクール入学に向けて、本物のICT機器にいつから、どのように向き合わせるべきなのでしょうか。

「『幼少期はICTはもちろんテレビも禁止』というご家庭もあるでしょう。それはご家庭の方針なので問題ありません。ただ、親が使っているスマホやPCは、子どもたちのあこがれです。その端末のなかに、自分の未来があると子どもたちは感じるからです。親が使っているのであれば、ICT機器を子どもから排除することは無理があるでしょう。

ICTスキルは、これからの情報社会を生きるために必須です。忌避するのではなく、ポジティブにとらえた上で、リスクコントロールする方が現実的だと僕は思います」(豊福晋平先生)

大人の動きを見て、子どもは勝手に操作方法を覚えてしまうものです。子どもが興味を示したら、ICT教育がスタート。いっしょにあそびながら、大人がお手本を見せていくことが、はじめの一歩になります。

「視覚優位な幼児期には、タブレットで絵を描いたり、写真を撮ったりといったビジュアルあそびがおすすめです。歌ったり踊ったりが好きな子なら、動画にしてもいい。本人の想定とできた映像を比較して、『次はこうしよう』という工夫も生まれてきます。

むかしだったら、写真を現像するのに時間もお金もかかりました。デジタルを使えば試行錯誤も気軽にできます。『やってみて、結果を受けとる』までの応答サイクルが短いのが、デジタルの強み。子どもが夢中になるポイントです。ゲームにハマるのも、すぐに結果が返ってくるからなんですよ」(豊福晋平先生)

デジタルもアナログも すべての経験が子どもの学びにつながる

クレヨンがまだ上手に使えなくても、タブレットを使えば指先で絵が描けて楽しいはず。しかも、クレヨンと違い、机も壁も汚れることはありません。——とはいえ、幼児期からデジタル環境に慣れさせることで、身体性の経験が乏しくなることに、不安もありますが……。

「まったく心配ありません。くもった窓ガラスに指で絵を描くのも、タブレットで絵を描くのも、子どもにとっては同じ経験。アナログだろうが、デジタルだろうが、子どもにとってリアルな経験なのです。『どちらを先にすべき』とか、『これは勉強で、これはあそび』と世界を二分することにも意味はありません。『経験することのすべてが学びになる』というのが、発達心理学の考え方です」(豊福晋平先生)

デジタルをむやみに怖がらなければ、アナログではなかなかできない経験もできます。子どもの可能性を広げるツールとして、あそびにデジタルを活用していきましょう。デジタルとアナログを行ったり来たりすることで、あそびの幅も豊かになります。

「たとえば、タブレットで描いたケーキの絵をプリントアウトして、ダンボールに切って貼れば、“ケーキ屋さんごっこ”ができます。絵が描けない子は写真を撮ってもいい。いろんな楽器の演奏や、作曲だってできる。保護者世代が子どものころに、やりたくてもできなかったことが、デジタルをつかえばかんたんにできます。いろいろな可能性にひもづけて、豊かな経験ができる恵まれた時代を享受しましょう」(豊福晋平先生)

気になるプログラミング必修化 家庭でどこまで教えればいいの?

GIGAスクール構想に先行して、「プログラミング必修化」も2020年から始まりました。これを見据えた子ども向けプログラミング教室も人気です。中学受験でも、プログラミングを意識した出題傾向がみられることもあり、気になる保護者も多いでしょう。

「本人が望むならともかく、好きでもないのにプログラミング教室に通わせる必要はありません。小学校のプログラミングの授業で、適性を見極めてからでも十分です。環境さえ整っていれば、子どもは勝手に覚えます。ゲーム好きな子が、教えてもない裏技を獲得したり、友だちからゲームのデータやプログラムを不正に改ざんするチート情報を仕入れてくるのと同じです。インターネットでGitHub(編集部註:ソフトウェア開発のためのソースコード管理サービス。SNS機能も備えている)などを駆使して独学する小学生プログラマーもめずらしくありません」(豊福晋平先生)

教室に放り込む前に保護者ができることは、子どもが興味をもったときに、自分で学びを深める環境を整えてあげることなのかもしれません。

タブレット一択ではない! 未就学児の端末選びはキーボードに着目

では、具体的にどのような環境を整えてあげればいいのでしょうか。保護者の端末を自由に使わせることには抵抗もあります。子ども専用のデバイスを選ぶときのポイントはなんでしょうか。

「学校にあがれば、自分の端末をもらえます。それまでは、保護者のお古の端末でも十分ですが、あえて子ども用にそろえるのであれば、キーボードの有無が考えどころです。

10年前に欧州の小学校を視察したときは、低学年ではタッチデバイスを使い、キーボードを使うのは高学年からでした。ところが、コロナ禍直前の2020年1月にあらためて調査に行ったところ、Google社の独自OSを搭載したノートパソコンChromebookを、1年生から全員使っていて驚きました。子どもたちはもう家でタッチデバイスに慣れていてキーボードを使いたがるので、取り入れることにしたそうです」(豊福晋平先生)

リモートワークが普及したとはいえ、日本の家庭ではPCよりスマホやタブレットの利用が主流なので、ヨーロッパとは事情が異なります。キー入力も、日本語はちょっと複雑です。端末を選ぶときは、子どもたちのあこがれの対象がどこにあるかがヒントになると、豊福先生はいいます。

「家にタッチデバイスが一切ないなら、導入として選択することも悪くありません。ただ、まわりでキーボードをつかっている大人がいるのなら、はやいうちから子どもも使いたがるでしょう。その場合は、タブレットにキーボードがついた“2イン1”も選択肢のひとつです」(豊福晋平先生)

そうはいっても、ひらがなもあやしい未就学児にキーボード入力ができるのでしょうか。ローマ字を習うのも小学校3年生です。

「大人がやるのを見ていれば、意外にできてしまうのが、子どもの能力です。最初は文字というより、場所で覚えているので、パスワードなど、すぐに見破られるので気をつけましょう。

小学3年生で習う前でも、パソコンを使えばローマ字入力を覚えることは難しくないので、やらせてみたらいいと思います。カナキー入力でもかまいませんが、後で覚え直す手間が増えるので、あまりおすすめしません。

ただ、英字の大文字と小文字がわからなくて困っている子どもはけっこういます。メーカーによって、キーボードには大文字か小文字のいずれかしか表記されていないことが多く、大文字と小文字が混在するIDやパスワードを打たなければならないときに混乱してしまうのです。これは、シールを貼るなどの工夫が必要です」(豊福晋平先生)

『自分も使えるようになりたい』という強いあこがれが、子どもを成長させる原動力です。くれぐれも、ひらがなやローマ字を無理やり教え込むことのないように。芽生えた好奇心をタイミングよくサポートしてあげることが、大人のつとめと心得ましょう。

取材・文/湯地真理子

寄稿家紹介

豊福晋平

豊福晋平(とよふく・しんぺい)
国際大学GLOCOM主幹研究員/准教授。修士(教育学)1967年北海道生まれ。横浜国立大学大学院教育学研究科修了、東京工業大学大学院総合理工学研究科博士課程中退。専門は学校教育心理学・教育工学・学校経営。教育の情報化をテーマに研究を続けるとともに、学校におけるプログラミング教育やGIGAスクール構想などへの提言も積極的に行っている。
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