2022.06.23

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乳幼児は“ありのままを受け入れ”が大切。子どもの「愛される権利」を知ろう

教育学者・末冨芳教授「こども基本法」と「子どもの権利」#2〜乳幼児編〜

教育学者・日本大学文理学部教育学科教授:末冨 芳

子どものありのままを受け入れるとはどんなことか。そんなとき、末冨教授は優しかった祖母を思い出すと語ります。 イメージ写真:アフロ

「こども基本法」設立を強く願い、活動してきた教育学者で日本大学教授の末冨芳(すえとみかおり)先生。自身も子どもの権利を大切した子育てを心がけてきましたが、とはいえ、子どもの行動に戸惑い、悩むこともあったと言います。

乳幼児の子育てで特に大切にするべきことは“ありのままを愛すること”と末冨先生。ありのままを愛するとはどんなものなのか。末冨先生の子ども時代や子育てを振り返りつつ、語ります。

※前回(#1)を読む

「こども基本法」の未就学児にとって大切なこととは?

今国会で成立し、来年春から施行される「こども基本法」には子どもの権利を大人たちが実現していくこと、子どもの意見を聞き、尊重することなど、大切なルールが書かれています。

とくに未就学児にとって大切なのは、「愛される権利」を規定した「こども基本法」の以下の部分です。

第3条2「全てのこどもについて、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され保護されること、その健やかな成長及び発達にその自立が図られること、その他の福祉に関する権利が等しく保障されること」
(※わかりやすくするために、条文の一部の表現を意味が変わらないよう、少しだけ変更しています。)

子どもの「ありのまま」を受け入れ 愛することの大切さ

子どもの「愛される権利」とはどんなことでしょうか?

三重県東員町(とういんちょう)の子どもと大人が考えた「子どもの権利条例」には、次のような、わかりやすい説明があります。

子どもには、ひとりの人間として尊重され、愛される権利があります。
(1) ありのままの自分を受け入れてもらうこと。
(2) 自分の気持ちや考え、個性や能力が認められ、大切にされること。


子どもの「ありのまま」を受け入れること、子ども自身の気持ち、考えや個性を大切にすること、新米ママだった頃から、私自身がわが子に対して大切にしてきたことでもあります。

「ありのまま」を受け入れるというのは、子ども自身が自分を大切に思う気持ち(自尊感情)をはぐくむために、心理学理論などに基づきながら、保育士さん助産師さん保健師さんや産婦人科医、小児科医や子どもに関わる実践者たちが重視している姿勢です。

その基本にあるのは「アタッチメント(愛着)形成」という考え方です。

イギリスの児童精神医学者ジョン ボウルビィが、提唱した考え方ですが、幼少期に親(ママとは限りません)を含む養育者たちが、乳幼児の欲求や行動を無条件に受け入れ、愛し、抱っこしたり、お世話することの大切さを説明している理論です。

子育てサイト等でみなさんも目にされたことがあるかもしれません。赤ちゃんがぐずっても、我慢させず、積極的に抱っこしましょうというようなアドバイスが多いと思います。

私自身も子どもが幼いときは、なるべく抱っこしましたし、しょっちゅう「あなたのことが大好きだよ」と言葉にして子どもに伝えています(さすがに思春期の長女にはちょっと迷惑そうにされますが)。

子育ての本では、「〇〇をする子がいい子」というかわいがり方をする「条件つきの愛」は、子ども自身の成長にとってよくない、ということが、時々書いてあると思います。

「ありのまま」ってどれくらい?

しかしながら、子どもの「ありのまま」を受け入れるということは、どういうことなのだろうか、悩む方も多いと思います。私自身もそうです。

自分自身が「条件付きの愛」の中で育てられてきたママやパパも少なくない日本です。

子どもの「ありのまま」を受け入れるということについて、私は祖母の姿を大切にしています。

どの孫に対しても、「お前はいい子だよ~」と心の底から笑顔で言ってくれ、子どもたちの好きなように遊ばせてくれました。はたから見れば、甘やかしすぎのおばあちゃんに見えていたと思います。

長女を妊娠中に会いにいったのが生きている祖母にあった最後の機会でしたが、お腹の長女に「いい子だね~」とニコニコと笑顔で話しかけてくれました。

子どもの「ありのままを受け入れる」ことってどういうことだろう、そう考えるときに、ふと思い出すのが、「いい子だね~」と心の底から笑顔で言ってくれる祖母の姿なのです。

その祖母が、若い頃に子どもを病気で亡くしていたことを知ったのは、最近のことです。

命の尊さ、子どもが元気に育つことが当たり前でないこと、それを身をもって経験してきた祖母は子どもが「いまそこにいること」、それだけで尊くありがたい、という感覚をもって、子どもたちに接していたのだろうと、思います。

子どもの人格や個性を大切にする、ありのままを受け入れ愛する、そのような子どもの権利の考え方の根本には、人間ひとりひとりの生命を尊いものと大切に思う感情があるはずだと、母となっていっそう強く確信しています。

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