海外で活躍するために…サッカー日本代表・南野拓実選手が父から教わったこと

プロになっても目標を設定して努力を続ける[南野拓実インタビュー第2回]

講談社のグローバル・パーパス「Inspire Impossible Stories」のアンバサダーを務める南野選手。初の著書『Inspire Impossible Stories』(講談社)も発売中。 写真:長濱耕樹  スタイリスト:鈴木肇  ヘア&メイク:須賀元子

子どもたちの憧れの職業のひとつであるプロのサッカー選手は、類まれなる才能の持ち主であることに疑いの余地はありません。しかし、彼らは努力の量も一流です。プロになった後も、ライバルたちとの競争に勝って試合に出るために、努力を惜しみません。

2022年現在では日本人の選手が、サッカーの本場であるヨーロッパのチームに所属することもめずらしくなくなりました。南野拓実選手も、海外の強豪でプレーすることを夢見たひとりでした。その目標を達成するために、南野選手は、どのようなことを心がけて、どんな努力を積み重ねてきたのでしょうか? そこには、夢をかなえたいすべての子どもたちに役立つヒントがありました。 
※全3回の2回目です

1回目の記事はこちら

10代の目標は「海外のビッグクラブでの活躍」

2022年11月にカタールワールドカップで初のベスト8入りを目指す日本代表で背番号10を背負い、攻撃陣の中核として活躍する南野拓実選手。その少年時代について振り返っていただいたインタビュー第1回に続き、第2回ではプロのフットボーラーを目指した時期に受けた「家族からのサポート」について聞いていきます。

セレッソ大阪U‐18在籍中の17歳のときにJリーグデビューを果たした南野選手。プロとしてプレーすることを意識した背景には、3つ上のお兄さんの存在がありました

「サッカーを始めた頃から漠然とプロになりたいとは思っていたんですけど、明確に意識し出したのは兄がセレッソ大阪のジュニアユース(U‐15)に入ってからです。

ユース(U‐18)のチームに入るとプロと同じユニフォームを着られるようになります。兄がそれを家に持って帰ってくるのを見て、自分も着たいなと思いました」

そして、自身も中学校入学とともにセレッソ大阪U‐15に。その時点で、プロになったその先についても明確に思い描いていたと言います。

「ユースに入ったことで、具体的にプロを意識しましたし、同時に海外でプレーして成功したいと思うようになりました。

“ビッグクラブと契約して、スタメンで試合に出て活躍する”。それが10代の僕の最大の目標でした」

その夢は胸に秘められたものではなく、家族とも共有していたそうです。

「父も母も兄も応援してくれました。とくに父は熱心だったので、応援する以上に、その目標を実現するためにはどうすればいいかをアドバイスしてくれましたね。サッカーノートをつけることや、目標実現のための手法を教えてくれました。

たとえば、大きな夢を掲げたら、取り組むべき小さな目標を設定し、達成する時間を決めてアプローチしていく。なにが今、自分にとって優先すべきことかを明確にして取り組んでいくといったやり方です。実際、プロになってからも実践していました」

南野選手は2012年、高校3年生のときからJリーグに出場。 写真:渡部薫(ゲキサカ)

目標から逆算して考えることを習慣に

南野選手の初めての著書『Inspire Impossible Stories』(講談社)の取材・文を担当したミウラユウスケ氏によると、オーストリアのFCレッドブル・ザルツブルクに所属していたとき、南野選手が一人暮らしをしていた部屋の壁には、“ビッグクラブに移籍する”“そのためには欧州カップ戦でゴールを決める”“そのために今週の練習では○○に取り組む”といった目標を書き出した紙が貼られていたと言います。

「大人になってみて、父が常に『自分が目指しているものがあるんだったら、そこに向けて今、なにをすべきか考えろ』と言ってくれていたことのありがたみを感じています。

そういう考え方、取り組み方の習慣がないと、人はなかなか目標に向かって進むことができませんよね? もちろん、人にもよると思うんですけど、僕は近くで言ってくれる人がいなければ自分ではできなかったと思うので。

父が『目標から逆算して、なにが必要かを自分で考え、取り組む』ように促してくれたのは、自分にとって大きな財産になっています」

FCレッドブル・ザルツブルクから、イングランドのビッグクラブであるリバプールFC。そして、フランスのリーグ・アンの強豪ASモナコFCへ。

ヨーロッパの最前線で戦う南野選手に、今もご家族からアドバイスが届くことはあるのでしょうか。

「兄がたまにメッセージをしてきますね。普段は、ひと言、二言のやりとりなんですけど、試合を見てサッカーのことをアドバイスしてくるときは、長文なんですよ。まあ、まったく参考にはしないんですけどね(笑)。

もういいよ、思いつつも、ちゃんと最後まで読みます。ただ、既読だけして、返事はせずって感じです。なんか照れくさいですしね、今は。もちろん、見ていてくれるのはうれしいです」

南野選手の前にライバルとして立ちはだかるのは、世界トップクラスの選手たち。 写真:渡部薫(ゲキサカ)

取材・文:佐口賢作 / 構成:奥山典幸(マーベリック)

次回第3回は、W杯に懸ける想いと、W杯の思い出について語っていただきました。

南野拓実(みなみの・たくみ)

1995年1月16日生まれ。大阪府出身。ASモナコFC所属。2013年セレッソ大阪で高卒ルーキーとしてクラブ史上初の開幕スタメンでプロデビュー。各年代の日本代表では中心選手として活躍し、19歳でA代表に選出された。2015年には、オーストリアの強豪FCレッドブル・ザルツブルグに移籍し欧州に活躍の舞台を移す。2019年に欧州CLリバプールFC戦での活躍を認められ、翌年、世界最高峰のクラブチームであるリバプールFCに所属。2022年6月リーグ・アンのASモナコFCに移籍。日本代表でも「10番」を背負う、世界に誇る日本サッカー界の至宝。2022年1月より講談社の「Inspire Impossible Stories」アンバサダーを務める。