心配は尽きないからこそ真の見極めが必要 

3つ目の相談は【女子にいじめられる長男 小二(※原文ママ)、男子も加わる前に解決したい】。

二年ほど前から女の子たちにいじめられていて、そばに行くと「シッシッ」と追っ払うようなしぐさをされてしまう。長男はおとなしくて、いじめられても黙って相手を見つめていることが多いとか。

児童文学も手掛ける作家の早乙女勝元さんは、どうすればいいかと悩む母親をこうなだめる。

〈周囲の女の子たちの態度がいじめかどうかは、もう少し様子を見たいですね。(中略)子供の成長過程は決してすんなり行くものではなく、やったやられたは毎度のこと。悲しいことや悔しいこと、うれしいことなど、様々な体験から人格が育っていくのです。親がはらはらするような体験もあっていいのです。少し距離をとって、また長い目で、わが子の成長を冷静に見守ることを心がけましょう〉
(初出:読売新聞に連載中の『人生案内』。1994年10月16日付。引用:読売新聞社編『人生の相談ごと 二十代の悩み三十代の生き方』1995年、読売新聞社)

早乙女さんも「見守ること」を勧めておる。ご自身も3人の子どもを育てて、振り返ると「最初の長男の時が一番たいへん」だったとか。「私たちが親になったばかりで、分からないことだらけだったからです」とも。

子育てでは次々と「一大事」が勃発して、親としてはそのたびに右往左往してしまう。結果的には「時間が解決してくれた」こともたくさんあるが、そうなるかどうか渦中にいるときにはわからないのが難しいところじゃな。

子どもには子どもの世界があり、ひとりひとり自分の個性を発揮しながらその中で生きている。親から見れば、心配の種は尽きない。

もちろん、本当に深刻な状況にあるときは、親の手出しや口出しが必要である。しかし、必要のない場面での親の手出しや口出しは、子どものたくさんの可能性をつぶしてしまう。

心配するのはいいとして、今は親として何をすればいいのか、何をしないほうがいいのか、常に厳しく己に問い続けたいものじゃ。

心配の沼におぼれず 親も自分の感情と戦うべし

<石原ジイジの結論>

親をしていくうえでもっとも難しいのは、「心配」という感情とどう付き合うかではないだろうか。子どもがいくつになっても、孫ができたらできたで孫に対しても、いろんな心配をしてしまう。

そしてあとから思えば、心配のほとんどは「取り越し苦労」である。仮に心配したことが起きたとしても、つまるところ本人がどうにかするしかない。

ただ、心配するという行為は魅惑的であり、それだけに危険である。心配すればするほど「いい親」になった錯覚を抱けるので、無駄にエスカレートしやすい。

「心配だから」という理由を振り回せば、子どもに対する「理不尽な行為」を正当化することもできる。

「子どもが仲間外れになっている(いじめられているかもしれない)」という心配は、もし取り越し苦労じゃないとしたら、極めて深刻じゃ。その場合は、具体的で毅然とした対処が必要である。

いっぽうで取り越し苦労だとしたら、話はぜんぜん違う。人生相談の森では、今回紹介した3つに限らず、取り越し苦労を前提とした回答が多数派だった。

「心配」という厄介な感情に振り回されないためには、どこに注意すればいいのか。たくさんの回答を総合すると、要は次のふたつの心がけが重要だと言っている。

その1「子どもごとに個性がある。親の『理想』との違いにうろたえるべからず」

その2「まずは冷静に見守ろう。けっして親が先回りして手を打ってはいけない」

親からは「つらい状況」に見えても、実際に子ども自身もつらさを感じていたとしても、同時にそれは子どもにとって貴重なチャンスでもある。

「つらい姿を見たくない」という親の自己満足で困難を取り除いてしまうのは、迷惑以外の何ものでもない。
子どもが懸命に戦っているんだから、親も負けずに「何もせずに耐える」という戦いに挑まねばならぬ。

那須正幹さんの回答にある「親にできることは、わが子を世界じゅうのだれよりも信頼することです」という言葉は、とても重くて大切である。

その気持ちが伝わっていれば、本当に必要な状況になったら、相談したりSOSを出してくれたりするに違いない。心配する快感におぼれ過ぎると、肝心の信頼がお留守になりがちである。くわばらくわばら。

とは言っても、心配をつのらせるのは親のサガである。そして、親の喜びでもある。子どもの人間関係がままならないように、親の自分自身の感情との付き合いもままならない。

いっしょに鍛えられて、いっしょに成長していきたいものじゃ。

【石原ジイジ日記】
ウチに来るや否や「ジイジ、かくれんぼしよ」と提案するF菜。まだルールを把握していなくて、別の部屋から「もーいいかい、まーだだよ、もういいよー」と一気に言っています。探しに行って見つけると、声を上げて大はしゃぎ。鬼もいなければ勝ち負けもない。ある意味、理想の社会を体現したかくれんぼですね。

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いしはら そういちろう

石原 壮一郎

コラムニスト&人生相談本コレクター。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多く...

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