「子どもが仲間外れ!?」心配に振り回されないための親のふるまいとは
人生相談本コレクター・石原壮一郎のパパママお悩み相談室〔07〕
2021.09.03
コラムニスト&人生相談本コレクター:石原 壮一郎
〈周囲の女の子たちの態度がいじめかどうかは、もう少し様子を見たいですね。(中略)子供の成長過程は決してすんなり行くものではなく、やったやられたは毎度のこと。悲しいことや悔しいこと、うれしいことなど、様々な体験から人格が育っていくのです。親がはらはらするような体験もあっていいのです。少し距離をとって、また長い目で、わが子の成長を冷静に見守ることを心がけましょう〉(早乙女勝元)
(初出:読売新聞に連載中の『人生案内』。1994年10月16日付。引用:読売新聞社編『人生の相談ごと 二十代の悩み三十代の生き方』1995年、読売新聞社)
早乙女さんも「見守ること」を勧めておる。ご自身も3人の子どもを育てて、振り返ると「最初の長男の時が一番たいへん」だったとか。「私たちが親になったばかりで、分からないことだらけだったからです」とも。
子育てでは次々と「一大事」が勃発して、親としてはそのたびに右往左往してしまう。結果的には「時間が解決してくれた」こともたくさんあるが、そうなるかどうか渦中にいるときにはわからないのが難しいところじゃな。
子どもには子どもの世界があり、ひとりひとり自分の個性を発揮しながらその中で生きている。親から見れば、心配の種は尽きない。
もちろん、本当に深刻な状況にあるときは、親の手出しや口出しが必要である。しかし、必要のない場面での親の手出しや口出しは、子どものたくさんの可能性をつぶしてしまう。
心配するのはいいとして、今は親として何をすればいいのか、何をしないほうがいいのか、常に厳しく己に問い続けたいものじゃ。
心配の沼におぼれず 親も自分の感情と戦うべし
<石原ジイジの結論>
親をしていくうえでもっとも難しいのは、「心配」という感情とどう付き合うかではないだろうか。子どもがいくつになっても、孫ができたらできたで孫に対しても、いろんな心配をしてしまう。
そしてあとから思えば、心配のほとんどは「取り越し苦労」である。仮に心配したことが起きたとしても、つまるところ本人がどうにかするしかない。
ただ、心配するという行為は魅惑的であり、それだけに危険である。心配すればするほど「いい親」になった錯覚を抱けるので、無駄にエスカレートしやすい。
「心配だから」という理由を振り回せば、子どもに対する「理不尽な行為」を正当化することもできる。
「子どもが仲間外れになっている(いじめられているかもしれない)」という心配は、もし取り越し苦労じゃないとしたら、極めて深刻じゃ。その場合は、具体的で毅然とした対処が必要である。
いっぽうで取り越し苦労だとしたら、話はぜんぜん違う。人生相談の森では、今回紹介した3つに限らず、取り越し苦労を前提とした回答が多数派だった。
「心配」という厄介な感情に振り回されないためには、どこに注意すればいいのか。たくさんの回答を総合すると、要は次のふたつの心がけが重要だと言っている。
その1「子どもごとに個性がある。親の『理想』との違いにうろたえるべからず」
その2「まずは冷静に見守ろう。けっして親が先回りして手を打ってはいけない」
親からは「つらい状況」に見えても、実際に子ども自身もつらさを感じていたとしても、同時にそれは子どもにとって貴重なチャンスでもある。
「つらい姿を見たくない」という親の自己満足で困難を取り除いてしまうのは、迷惑以外の何ものでもない。
子どもが懸命に戦っているんだから、親も負けずに「何もせずに耐える」という戦いに挑まねばならぬ。
那須正幹さんの回答にある「親にできることは、わが子を世界じゅうのだれよりも信頼することです」という言葉は、とても重くて大切である。
その気持ちが伝わっていれば、本当に必要な状況になったら、相談したりSOSを出してくれたりするに違いない。心配する快感におぼれ過ぎると、肝心の信頼がお留守になりがちである。くわばらくわばら。
とは言っても、心配をつのらせるのは親のサガである。そして、親の喜びでもある。子どもの人間関係がままならないように、親の自分自身の感情との付き合いもままならない。
いっしょに鍛えられて、いっしょに成長していきたいものじゃ。
石原 壮一郎
コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアでの発信を通して、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせている。女児(2019年生まれ)の現役ジイジ。 おもな著書に『大人力検定』『コミュマスター養成ドリル』『大人の超ネットマナー講座』『昭和だョ!全員集合』『大人の言葉の選び方』など。故郷の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。ホンネをやわらげる言い換えフレーズ652本を集めた『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』も大好評。 林家木久扇がバカの素晴らしさを伝える『バカのすすめ』(ダイヤモンド社)では構成を担当。2023年1月には、さまざまな角度のモヤモヤがスッとラクになる108もの提言を記した著書『無理をしない快感 「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が発売。 2023年5月発売の最新刊『失礼な一言』(新潮新書)では、日常会話からメール、LINE、SNSまで、さまざまな局面で知っておきたい言葉のレッドラインを石原壮一郎氏がレクチャー。 写真:いしはらなつか
コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアでの発信を通して、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせている。女児(2019年生まれ)の現役ジイジ。 おもな著書に『大人力検定』『コミュマスター養成ドリル』『大人の超ネットマナー講座』『昭和だョ!全員集合』『大人の言葉の選び方』など。故郷の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。ホンネをやわらげる言い換えフレーズ652本を集めた『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』も大好評。 林家木久扇がバカの素晴らしさを伝える『バカのすすめ』(ダイヤモンド社)では構成を担当。2023年1月には、さまざまな角度のモヤモヤがスッとラクになる108もの提言を記した著書『無理をしない快感 「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が発売。 2023年5月発売の最新刊『失礼な一言』(新潮新書)では、日常会話からメール、LINE、SNSまで、さまざまな局面で知っておきたい言葉のレッドラインを石原壮一郎氏がレクチャー。 写真:いしはらなつか