2021.11.03

「早生まれは不利」の原因は親!?心配する親がやりがちな誤ちと本当にすべきこと

人生相談本コレクター・石原壮一郎のパパママお悩み相談室〔09〕

滑り台でジイジに思いっきり笑顔を向ける孫・F菜ちゃん。石原ジイジもF菜ちゃんも早生まれです。
写真:おおしたなつか

パパママは今日も悩んでいます。夫婦の関係や子育てをめぐる困りごとに、どう立ち向かえばいいのか。

500冊を超える人生相談本コレクターで、2歳の孫のジイジでもあるコラムニスト・石原壮一郎氏が、多種多様な回答の森をさまよいつつ、たまに自分の体験も振り返りつつ、解決のヒントと悩みの背後にある“真理”を探ります。

今回は、「早生まれは不利なのか?」という心配が募るママ(3月生まれ5歳男児の母34歳)のお悩み。はたして人生相談本&石原ジイジの答えは?

小学校半ばで差は縮まると小児科医

「早生まれの子」の親は、心配が募って仕方がない。あちこちから「早生まれは不利」という声が聞こえてくる。何がどう不利なのか、本当にそうなのか。

今回の相談者の息子(5歳)は3月生まれ。同年代の子どもに比べて体は小さめで、幼さも目立つという。「ママ友から『どうして早生まれにしたの?』と聞かれてショックだった」とも。自明のことのように言われがちな早生まれの「不利」。その意味をあらためて考えてみよう。

最初は、4歳の子を持つ母親からの【三月生まれなので、他の子よりも幼い感じがします。体力や知力はいつ頃追いつけるのでしょうか】という相談。小児科医で元白百合女子大学教授の中村孝さんは、「小学生でも早生まれの問題は大きいのですから、幼稚園児のこの一年の差は相当大きいものになる」と前置きしつつ、追いつくのはいつ頃かを答える。

〈小学校二~三年の頃ではないかと考えております。私の息子も三月生まれでしたが、小学校一・二年ではちょっと辛そうでした。小学校三年になって、仲間との遊びが対等になっていることがわかりました。この頃になるとそれぞれの個性が伸びてきて、得意、不得意が生まれ、ひとりひとり活躍の場面が異なり、全体的な優劣の差がなくなるようです〉
(引用:育児文化研究所編『幼稚園のころのママの悩み相談100』1999年、赤ちゃんとママ社)

つまりは「やがて追いつくから大丈夫」と言ってくれている。早生まれの子を持つ親としては、それはわかっていても、追いつくまでの期間に「不利」や「損」があるのではないかと心配をふくらませてしまう。そもそも先を歩いていくほうが「有利」で「得」なんじゃろうか。しかも、あくまで「平均」の比較であり、個人差のほうがよっぽど大きい。

「早生まれだから」という親の思い込みが元凶

続いては、早生まれの子に関する悩みを現役保育士や専門家にぶつけた、女性向けWebサイトの記事から。40代の保育士さんは「早生まれの子にはメリットしかないように感じられる」と断言する。

たとえば、遅生まれで口が達者な子と比べて「保育園のリズムになじみやすい」という特徴があるとも。長年にわたって月齢順のクラス分けを行なっている玉川学園小学部の後藤健教育部長は、心配する親に向けてこうアドバイスする。

〈集団にもまれる中で「早生まれだから、僕はこれができないんだ」という劣等感を子どもが覚えそうになったら、「あなたのこんなところはとても素晴らしいのよ」と安心させて、自信につなげてあげること。(中略)生まれ月が大人になってまで影響するわけではないので、今できないことは月齢の差や個人差だと思って、そこまでの頑張りを認めてあげてください。その子自身をよく見て、できることを褒める。そういう姿勢で常に接していれば、子どもは自然と自分に自信を付けていきます〉
(引用:「日経xwoman」2016年8~9月掲載「早生まれの子を育てる(1)~(3)」日経BPより)

後藤さんは「その子自身には決して月齢を意識させないように育てるといい」とも。同学園の別の先生からは「なわとびが得意な子は年少クラスのほうが多いんですよ。身軽ですから」という発言も。

逆に、親が「4月生まれなのに、なぜできないんだ」と考えていると、子どもが焦りやプレッシャーを感じることもあるそうじゃ。「早生まれだから」という決めつけは、どうやら子どもにとって迷惑でしかない。

生まれ月に関係なく得意を伸ばすことが大切

最後は「年長女の子の母」さんのお悩み。3月生まれで「幼いときから同じ学年の子の中では小さく、運動能力も劣って見えました」とか。最近、自分は運動が苦手だと気づいたようで、赤ちゃん時代から通っている体操教室に「行きたくない」と言い出した。

いっぽうで「机に向かってやる作業は人より得意」らしい。親はどんな態度でいればいいかという相談に、児童臨床医で川崎医療福祉大学客員教授の佐々木正美さんは、次のように答えている。

〈「苦手でも一生懸命やることが大事だ」なんて、5才の子が考えるとは思えません。苦手を努力で克服することができるケースもないとはいえないでしょう。でも私は、あえてそれをしないのがいいと思っています。それは「運動が苦手な子はよくない」「いまのままのあなたではダメなのだ」というメッセージになってしまうからです。得意なことと不得意なことがあるのであれば、まずは得意なことを伸ばすほうがずっといいのです〉
(初出:雑誌『Como』の連載。引用:佐々木正美著『佐々木正美先生の子育てお悩み相談室』2016年、主婦の友社)

相談者は「早生まれ」を気にしているが、佐々木さんは回答の中でいっさいそこには触れていない。我が子の得意不得意をしっかり見て、得意なことや好きなことを思いっ切りさせてあげる大切さを説いている。

親がしょっちゅう「あなたは早生まれだから」なんて言ってると、子どもの側は「自分はダメな存在なのかも」と思ってしまうかもしれん。

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