豚肉と木の棒で、スズメバチ軍団が壊滅 その1
2017.11.21
ある夏の日、家で録画したアニメを見ていたとき、私の携帯電話が鳴った。
かけてきたのは、同じ大学の同じクラスの、しかし、そんなに親しくもない奴。
彼がいうことには、どうも自分の住むマンションの玄関先に、スズメバチが巣を作り始めたらしい。
このままだとどんどん巣が大きくなり、出入りのたびに襲われそうだ。でも、自分で巣をとるのはおっかない。
「お前は虫にくわしいだろうから、どうにかこの巣を取り除いてほしい」
という話だった。
正直、その話を聞いただけでは私は協力する気にはなれなかった。なにしろ危険だし、そんなに親しくもない奴のためにそこまでしてやる理由もない。
ハチ退治の業者にでも頼めばいいだろ、と、私は電話口で彼に告げるつもりだったが、私がそれをいうよりも早く「もし巣を取ってくれたら、メーヤウ(当時、大学のそばにあったカレー屋)の焼き飯を一杯おごるからさぁ。」といわれた。
私は、二つ返事でスズメバチの退治を引き受けた。
<必殺! 豚肉おびきよせ作戦>
その日の夜、さっそく私は彼の住んでいるアパートまで出かけた。
彼の住んでいる部屋は3階。
ドアのチャイムを押して、そいつにハチの巣のありかを聞くまでもなく、ドアのすぐ真上、だいたい高さ3mくらいの天井に巣はあった。
何となく予想はしていたが、コガタスズメバチのものだった。
大きさはサッカーボールより一回り小さいくらいで、私一人でも十分とれそうだった。
コガタは、日本のスズメバチとしてはわりとおとなしめの部類だ。とはいえ、相手はスズメバチ、油断はできない。
さて、これをどうするか。
また、下手に退治しようとして失敗すると、ハチどもが狂暴化し、このアパートの住人たちをかえって危険にさらす。
やるならば徹底的にやらねばならないが、あの巣の中に何匹ハチが隠れているかもわからない状態で、うかつなまねはできない。
考えた結果、ある方法を思いついた。
私は、ハチ退治をたのんできたその彼に、
「何か、いらない豚肉とか魚の切り身とかないか?」
と聞いた。冷蔵庫に古い豚バラ肉があるというので、それを取ってこさせ、その間に私は近所の道ばたに出て、あの巣に届く長さの木の棒をひろってきた。
その棒の先に、私は豚肉を巻きつけた。そして、その豚肉つきの棒で、ハチの巣の表面を軽くなでた。
すると、巣の中から一匹のハチが何事かと出てきた。
ハチは豚肉つきの棒が自分の巣に触っていることに気づくと、すぐに駆け寄って豚肉に飛びついた。
そして、その豚肉にガリガリとかじりつき始めたではないか!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
スズメバチは豚肉がお好き!?
その2につづく。
お楽しみに!