シロナガスクジラの心臓は超巨大! 哺乳類のふしぎに迫る『大哺乳類展3』開催中!

MOVEラボ研究員が『大哺乳類展3─わけてつなげて大行進』をレポートします

『大哺乳類展3─わけてつなげて大行進』高校生研究員がレポート!

本展会場でのアフリカゾウとアジアゾウの全身交連骨格の展示の様子
撮影/山本倫子
国立科学博物館(東京・上野公園)では、2024年6月16日(日)までの間、特別展「大哺乳類展3-わけてつなげて大行進」を開催中。

「分類(=わける)」と「系統(=つなぐ)」をテーマに、哺乳類たちの見た目や内部の特徴、DNAなどをもとにグループ分けし、それらの関係性をつなぎあわせることで浮かび上がる哺乳類のふしぎを紐解きます。哺乳類の進化と多様化に迫った展示から、哺乳類の奥深さを学べるはず!

今回レポートするのはMOVEラボ研究員 助手のひであき

MOVEラボ研究員・ひであき(高2)
恐竜が大好きで小学生のころからMOVEラボの活動に参加。高校生になった今では、研究の幅をグッと広げて、恐竜や化石、石についての研究を深めています。夢は恐竜の研究者。

〈MOVEラボ研究員とは?〉
MOVEラボ研究員は、厳正な選考によって選ばれた、生きものや自然科学に興味のあるMOVE読者の代表です。研究員は、MOVEラボの活動に参加し、フィールドや博物館、動物園などをリアルに楽しみます。また、ラボの研究員は、自分たちの研究レポートをMOVEラボのサイト上で発表します。

メンバーは現在24名! 中学生以上は「助手」として活動しているよ!
https://lab.zukan-move.kodansha.co.jp/

生物研究の学びになる展示がとても面白い!

3月中旬に僕は、国立科学博物館の特別展「大哺乳類展3─わけてつなげて大行進」の内覧会にお邪魔させてもらいました。

第3弾となる今回の大哺乳類展では、監修者である国立科学博物館・動物研究部・脊椎動物研究グループの川田伸一郎先生と田島木綿子先生のお二方それぞれの分野で大発見があり、その発見と紐づける形で哺乳類の紹介がなされています。この特別展で、生物研究の基礎を知ってもらいたいという思いがあるそうです。
2024年6月16日まで国立科学博物館(東京・上野)で開催中。
この特別展のキーワードは、「収斂進化(しゅうれんしんか)」です。これは、違う種の生きものがそれぞれ進化したにもかかわらず、似たような見た目になってしまう現象です。近年、この収斂進化によって似てしまった結果、分類を間違えていた生きものが、遺伝子を調べることでたくさん見つかっているのだそうです。

哺乳類のふしぎな特徴が骨格から学べる!

そして今回、たくさんの哺乳類の骨格が展示されており、それぞれ比較ができます。僕がぜひみてほしいとおすすめする身体の部位は、首に近い背骨です。棘突起と呼ばれる背中の一番外側の部分が帆のように飛び出ています。これは頭を支える筋肉が発達しているため、それと一緒に前だけ発達した結果だそうです。海に住む生きものには見られない部位です。
アジアゾウの全身交連骨格(国立科学博物館所蔵)

シロナガスクジラの心臓は僕の身長と同じくらいの大きさ!

展示の第1章では、筋肉や内臓、骨格などの標本を使って育児、歩行などの哺乳類の特徴を説明しています。ここで見てほしい標本は、シロナガスクジラの心臓のプラスチネーション標本(水分と脂肪を樹脂に置き換えたもの)のレプリカ。このレプリカは実物大で、僕の身長と同じくらい大きな心臓に圧倒されます。それだけ大きいのにもかかわらず僕たち人間の心臓と基本構造が同じことに驚きました。
シロナガスクジラの心臓の実物大レプリカ
Courtesy of ROM (Royal Ontario Museum), Toronto, Canada
撮影/山本倫子

偶蹄類、食虫類の観点からの解説も面白い!

第2章では、監修者お二方それぞれの分野である偶蹄類と食虫類の観点から、分類と系統について解説しています。

入ってまず目につくのはレオポン。これはヒョウとライオンが別種であることを示した例です。本来、種の判別には子孫を残すか実験しないと分からないのですが、この実験が難しいため、見た目などの特徴で判断しています。
鯨偶蹄目に分類される哺乳類(左からコビトカバの剝製標本、スジイルカのFRP標本/国立科学博物館所蔵)
偶蹄類は最近、クジラが偶蹄類の一員であることが分かったのだとか。このため、分類名を「鯨偶蹄類」にするか、そのままにするかで密かに話題となっていたようです。実際の展示ではどうしたか、会場でぜひ答え合わせをしてみてください!
食虫類に分類されていた哺乳類(左からハリテンレック 、、ヨーロッパハリネズミ、コウベモグラ、ジャコウネズミ、コモンツパイの仮剝製標本/国立科学博物館所蔵)
そして食虫類は、かつて「分類のくずかご」とまで言われたほど、250年もの間、分からないことだらけだったのですが、DNAを調べた結果、いろいろな生きものが食虫類から外れ、しっかりと整理されたそうです。

個人的には、この章に展示されているツチブタの歯が面白かったです。実は彼らの歯は他の哺乳類とは成分も構造も違うそうなのです。

まるで巨大な図鑑を読んでいるよう!

本展会場での哺乳類大行進の様子
撮影:山本倫子
第3章では、圧巻の剝製たちが並んでいます。系統ごとに整理され、巨大な図鑑を読んでいるような気分になります。真ん中のシカやウシのなかまの剝製もいいのですが、反対側のネズミたちも面白いです。

ジャコウネズミのキャラバンがかわいいですし、いろいろな頭骨の見比べも楽しいです。そして、胃の展示でのカバの立ち位置も必見です。反芻をするグループとしないグループのちょうど中間の特徴を持っていて、反芻するかしないか分かっていないのです。標本を見比べながら考えてみると面白いですよ。
カバとハンドウイルカの複胃(国立科学博物館所蔵)

研究者を目指す人は必見!

第4章では、分類学の過去とこれからについて、昔の本も使いながら解説しています。今までは分類の基本として使われてきた系統図が、これからはDNAの調査で…という説明があり、研究したい方には見逃せないブースです。

この特別展は哺乳類に疎い僕でも面白く、一緒に行ってくださった柴田先生も楽しそうに話されていて、いろいろな楽しみ方のある展示でした。さすが楽しみにしていた大哺乳類展の第3弾だなと感動しました。
取材・文/MOVEラボ研究員・松岡秀明

特別展「大哺乳類展3-わけてつなげて大行進」
会期 : 2024年3月16日(土)〜6月16日(日)
会場 : 国立科学博物館 東京・上野公園(〒110-8718東京都台東区上野公園 7‐20)
National Museum of Nature and Science (Ueno Park, Tokyo)
https://mammals3.exhibit.jp/

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