MOVEラボ研究員がレポート! この夏、ぼくは「化石ハンター展」に2回は行こうと思う

国立科学博物館で開催「化石ハンター展」一足先に研究員助手のひであきが行ってきました

恐竜好きの子どもたちは必見! 伝説の化石ハンターの軌跡をたどる

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伝説の化石ハンターであるロイ・チャップマン・アンドリュースと、彼が率いた「中央アジア探検隊」の軌跡をたどる特別展「化石ハンター展 〜ゴビ砂漠の恐⻯とヒマラヤの超大型獣〜」が国立科学博物館(東京・上野)にて開催中。開催前の内覧会に、MOVEラボ研究員の中学生メンバーが行ってきました。

MOVEラボ・中学生メンバーがみた「化石ハンター展」

MOVEラボ研究員・ひであき
今回、レポートしてくれたのはMOVEラボの中学生メンバーである助手のひであき(中3)。恐竜が大好きで小学生の頃からMOVEラボの活動に参加。中学生になった今では、研究の幅をグッと広げて、恐竜や化石、石についての研究を深めています。

<MOVEラボ研究員とは?>
MOVEラボ研究員は、厳正な選考によって選ばれた、生きものや自然科学に興味のあるMOVE読者の代表です。研究員は、MOVEラボの活動に参加し、フィールドや博物館、動物園などをリアルに楽しみます。また、ラボの研究員は、自分たちの研究レポートをMOVEラボのサイト上で発表します。

メンバーは現在18名! 中学生以上は「助手」として活動しているよ!
https://lab.zukan-move.kodansha.co.jp/
 今回僕は、7月16日から国立科学博物館で開催中の「化石ハンター展」の報道内覧会に行かせていただいた。
今回の特別展のコンセプトは「化石ハンター達の探検を追いかける」というもので、ロイ・チャップマン・アンドリュースと彼の背中を追いかけたハンター達に焦点を当て、彼らの物語を紡いでいくというイメージを持ってつくられたそう。

本展ではモンゴルのゴビ砂漠とチベット高原で見つかった化石を主に紹介しており、どれも重要な化石のため、一日中楽しめそうだ(足が棒になったことを除けば)。そして、頭上の展示物は見逃しやすいため、上も注意しながら観覧することをお勧めする。また、モニターに映し出される解説動画を見ながら展示物を追う形となるため、動画も見落とさないようにしてほしい。
僕が一番の見どころだと感じたのが、オレンジとブルーで2つの区域を分けたところ。実はこれ、「アウト・オブ・チベット」説を前面に押し出すための工夫だそうで、それぞれオレンジがゴビ砂漠、総合監修の木村由莉先生が個人的に“チベットブルー”と呼ばれているブルーが、チベット高原を表しているそう。

内覧会にいらした木村先生によると、普通の展覧会だと1つのテーマで最後までいくものだけれど、アジア発の新しい学説「アウト・オブ・チベット」を広く紹介したいということから、2つのゾーンにあえて分けたそうだ。
総合監修の木村由莉先生(左)とMOVEラボ研究員・ひであき(右)

本展は章が7つあるので、各章の見どころを紹介したい。

第1章では、主にアンドリュースについての展示だ。ここで注目したいのは、アンドリュースと日本の関係だ。詳しい事はネタバレになるため書かないが、実はアンドリュースが初めてアジアの土を踏み、初めて長期的にアジアで調査したところこそ、日本なのだ。また、アンドリュースは9年で5度ゴビ砂漠に行った事から、相当な冒険好きだったことがうかがえる。

第2章では、主にゴビ砂漠でアンドリュースによって発見された化石の代表的なものが並んでいる。その中でも特に興味深かった物が、プロトケラトプスの成長過程が一目で分かる展示である。特に、著しく成長しているフリルに注目して欲しい。どんどん丸く、横長になっていくのがよく分かる。
プロトケラトプス
第3章では、主に第2次大戦後に活躍した化石ハンター達と、見つかった化石について説明されている。ここでの一番の見どころは、ポーランドの研究チームである。この時、3人の女性研究者が所属するチームだった。このチームこそ、女性研究者が活躍し始めたきっかけになったのかもしれない。

第4章では、主に哺乳類の展示がされている。この展示の面白い所は、体長7m越えのパラケラテリウムの全身骨格の反対側の壁に、5cmにも満たない小さな齧歯類(ネズミの仲間)を展示していることだ。これらはすべてアンドリュース率いる中央アジア探検隊によって発見されており、これだけ大きさに差がある化石を取りこぼさない中央アジア探検隊は凄いと感じた。

第5章では、主にチベット高原の成り立ちと、生態系に与えた影響について解説している。ここでの話が、後の展示を理解するのにとても重要なので、しっかりと見ることをお勧めする。

とはいえ、ラストまでに疲れてしまうかもしれないので、最後までじっくりと見たい人は、奥のベンチで一度休むといい。
第6章では、目玉展示となる、チベットケサイの復元骨格と生体模型の展示

この展示は、いきなり現れた来場者に驚き、家族を守ろうとするオスのケサイ(骨格標本)と、雪で遊ぶ子供と、それを見守るメスのケサイ(生体模型)が表現されている。そして、このチベットケサイの発見によって提唱された仮説が、「アウト・オブ・チベット」説だ。

詳しくは展示を見ていただくとして、このチベットケサイ、実は既存のケブガサイよりも、眼球より上の頭骨の反りが弱いこと、また鼻孔から反対側が見えていて、左右の鼻孔の仕切りがおそらく軟骨で化石に残っていないこと、などから、より原始的な種だと分かったことが学説の元になっているそうだ。
チベットケサイ 生体復元モデル/国立科学博物館蔵
木村先生に聞いたのだが、チベットケサイの小さなツノは、鼻先のツノに比べ圧倒的に小さく、腐敗した木の様な華奢な見た目上、ほぼディスプレイ以外のなんでもなかったようだ。他には、ケブガサイの頭骨を見れば分かりやすいが、眼球の上と鼻先から凸凹した部分があるが、実はそこにツノがあった証拠で、逆にツルツルな所は筋肉が付いていたそう。

最後の第7章では、研究者の話や、いつも使用している道具の数々が並んでいるが、大体の模様は一般的で、研究者達と少なからず親近感を覚えるかもしれない。また、彼らの話を読んでいても、特段、研究者になるために恵まれた環境ではなかったケースもあるし、決して雲の上の人ではなく、時の運を味方に付ければ、あとはひたすらがむしゃらに、という感じがした。
チベットケサイ 全身骨格復元標本/国立科学博物館蔵
先生が、一度展覧会を見て、図録を買って読み込んで、もう一度じっくり見に来るといい、と仰っていた。私も図録を読み込んでから、もう一度行くのが楽しみだ。

取材・文・写真提供(一部のぞく)/MOVEラボ研究員・松岡秀明
特別展「化石ハンター展 〜ゴビ砂漠の恐⻯とヒマラヤの超大型獣〜」
開催期間:2022 年 7 月 16 日(土)〜10月10日(月・祝)
※会期等は変更になる場合がございます。
会場:国立科学博物館(東京・上野)
https://kaseki.exhn.jp/
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