大人気の古生物 アンモナイトってどんな生物!? ふしぎな“異常巻きアンモナイト”って知っている?

【ちょっとマニアな古生物のはなし】古生物学者・相場大佑先生が見つけた古生物のふしぎ

古生物学者:相場 大佑

アンモナイトのぐるぐるのふしぎ

アンモナイト「プレシオテキサナイテス・カワサキイ」(北海道産)
アンモナイトと言えば、多くの方は、写真のようなぐるぐる巻いた殻の化石を思い浮かべると思います。この殻の形が巻貝に似ているので、アンモナイトは巻貝のなかまに間違えられることもしばしばですが、こう見えてイカやタコ、それから生きた化石として有名なオウムガイなど頭足類のなかまです。
こちらはオウムガイ イラスト/川端修二
実は、アンモナイトの中には、普通の「ぐるぐる」とは異なる、少し変わった形の殻を持つものがいます。

その例を少し見てみましょう。「蚊取り線香」のように渦巻きが少し解けたようなもの、チョコがたっぷり詰まったおいしいパン「チョココルネ」のようなもの、ボールペンの中に入っている「バネ」をビヨーンと引き伸ばしたような形をしたもの、紙をまとめる「ペーパークリップ」のような形をしたもの……実にさまざまです。
様々な異常巻きアンモナイト。左上から順に、「スカラリテス・スカラリス」、「マリエラ・オーレンティ」、「ユーボストリコセラス・ジャポニカム」、「ノストセラス・ヘトナイエンゼ」、「ポリプチコセラス・シュードゴウルチナム」、「エゾイテス・シュードイクアリス」。いずれも北海道産、三笠市立博物館所蔵標本。
このような変わった形をしたアンモナイトのことをまとめて、「異常巻きアンモナイト」と呼び、それぞれに生物種としての学名がついています。

北海道からは白亜紀のアンモナイト化石がたくさん見つかりますが、異常巻きアンモナイトは外国と比べても特に多様で、北海道だけで見つかる固有種も多く知られています。
僕は、異常巻きアンモナイトのことが不思議だなぁと思って研究していて、これまでに2つの新種を北海道で発見しました。それらについては、また改めて紹介したいと思います。

異常巻きアンモナイトは、アンモナイトの進化の中でも終わりの方である中生代白亜紀(ティラノサウルスやトリケラトプスなどの恐竜が生きていた時代)に特に繁栄しました。そんなこともあって、異常巻きアンモナイトのことを、「進化の末の奇形だ」「病気だ」「このような形になったから絶滅したのだ」などと考える人も、過去にはいたようです。

しかし、そのような考えは現在の科学で正しくないとされています。それは、どんなに不思議な形をした異常巻きアンモナイトの殻も、デタラメではなく、それぞれの法則性の元に形が作られていていることが判明したからです。

では、なぜこのような変わった形をしていたのでしょうか?
この形にどのような利点があったのでしょうか?

これらについては、残念ながらまだよくわかっていません。きっと何かしらの環境に適応して、何かしらの生活スタイルを送る上で都合が良くて、このような形に進化したのだと思いますが、具体的なことは、まったくと言っていいほどわかっていないのです。
「異常巻きアンモナイトの形がもつ意味」は大きな謎ですが、異常巻きアンモナイトの進化を詳しく調べることができる北海道は、その謎を解明できる良い研究の舞台かもしれないと思っています。

最後に……。
日本国内の化石を展示しているそれなりに大きな博物館では、北海道産の異常巻きアンモナイトが展示されていることも多いです。様々な異常巻きアンモナイトを見ながら、身近にあるどんなものに似ているか考えてみると楽しいですよ。
形と機能には密接な関係があるので、「似ている」という気づきは、もしかしたら異常巻きアンモナイトの形の謎の解明への第一歩になるかもしれません。

写真提供/相場大佑

あいば だいすけ

相場 大佑

Daisuke Aiba
古生物学者

深田地質研究所 研究員。1989年 東京都生まれ。2017年 横浜国立大学大学院博士課程修了、博士(学術)。三笠市立博物館 研究員を経...

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