このような変わった形をしたアンモナイトのことをまとめて、「異常巻きアンモナイト」と呼び、それぞれに生物種としての学名がついています。
北海道からは白亜紀のアンモナイト化石がたくさん見つかりますが、異常巻きアンモナイトは外国と比べても特に多様で、北海道だけで見つかる固有種も多く知られています。
僕は、異常巻きアンモナイトのことが不思議だなぁと思って研究していて、これまでに2つの新種を北海道で発見しました。それらについては、また改めて紹介したいと思います。
異常巻きアンモナイトは、アンモナイトの進化の中でも終わりの方である中生代白亜紀(ティラノサウルスやトリケラトプスなどの恐竜が生きていた時代)に特に繁栄しました。そんなこともあって、異常巻きアンモナイトのことを、「進化の末の奇形だ」「病気だ」「このような形になったから絶滅したのだ」などと考える人も、過去にはいたようです。
しかし、そのような考えは現在の科学で正しくないとされています。それは、どんなに不思議な形をした異常巻きアンモナイトの殻も、デタラメではなく、それぞれの法則性の元に形が作られていていることが判明したからです。
では、なぜこのような変わった形をしていたのでしょうか?
この形にどのような利点があったのでしょうか?
これらについては、残念ながらまだよくわかっていません。きっと何かしらの環境に適応して、何かしらの生活スタイルを送る上で都合が良くて、このような形に進化したのだと思いますが、具体的なことは、まったくと言っていいほどわかっていないのです。
「異常巻きアンモナイトの形がもつ意味」は大きな謎ですが、異常巻きアンモナイトの進化を詳しく調べることができる北海道は、その謎を解明できる良い研究の舞台かもしれないと思っています。
最後に……。
日本国内の化石を展示しているそれなりに大きな博物館では、北海道産の異常巻きアンモナイトが展示されていることも多いです。様々な異常巻きアンモナイトを見ながら、身近にあるどんなものに似ているか考えてみると楽しいですよ。
形と機能には密接な関係があるので、「似ている」という気づきは、もしかしたら異常巻きアンモナイトの形の謎の解明への第一歩になるかもしれません。
相場 大佑
深田地質研究所 研究員。1989年 東京都生まれ。2017年 横浜国立大学大学院博士課程修了、博士(学術)。三笠市立博物館 研究員を経...