大怪獣ゴジラが70年間愛される理由を3大作品を通して深掘りする!

『ゴジラ』『ゴジラ対メカゴジラ』『ゴジラ-1.0』にゴジラの歴史を見る!

テレビマガジン編集部

1954年、映画『ゴジラ』が公開されました。それから70年、国内だけでも30作の長編映画が作られています。

1974年~1983年と、2005年~2015年という2度の大空白期を乗り越えて、ゴジラが愛される存在であり続けられる理由は何なのでしょうか。

そのゴジラシリーズをはじめとした東宝特撮作品を詰め込んだ『テレビマガジン特別編集 ゴジラ70年記念 ゴジラ大鑑 東宝特撮作品全史』(税込み定価:8800円)のページを使って、ゴジラファンの方にも、そうでない方にも、その魅力をお伝えしましょう。

シリーズ全体を軸として貫く、第1作『ゴジラ』へのリスペクト!

今もなお色あせることのない『ゴジラ』(1954)には、さまざまな想いが結晶のように凝縮されている。  ©TOHO CO.,LTD.
シリーズ第1作目にはシリーズすべての想いが注ぎ込まれるといいますが、『ゴジラ』(1954)もその例にもれず、戦後復興のなか、(旧)日米安全保障条約締結(1951)、第五福竜丸の被曝(1954)などの事件が相次ぐ情勢下での首都破壊は、東京大空襲(1942)を思い起こすまでもなく、不穏なものであったに違いありません。

新兵器であるオキシジェン・デストロイヤーによって初ゴジラは葬り去られますが、その開発者である芹沢博士は為政者が新兵器を使う未来を怖れ、兵器の秘密とともに自らの命をなきものとします。

そこまでしてゴジラを葬ったにもかかわらず、芹沢の恩師である山根博士がラストシーンでうめくように言う「あのゴジラが最後の1匹だとは思えない」という予言のような言葉は、「まだ終わらせられない」という呪文のようにシリーズを続けさせたかにも思えます。

世界に争いが絶えず、科学が幸福ではなく破壊のために使われ、弱い者たちがその犠牲となっている間は、ゴジラは現れることをやめるわけにはいかないのではないでしょうか。

ライバルは自分!? メカゴジラがゴジラ最強の敵になった日

メカニコングという先輩(1967年『キングコングの逆襲』)にも勝るとも劣らない、衝撃的なデザイン!  ©TOHO CO.,LTD.
『ゴジラの逆襲』(1955)のアンギラスを嚆矢(こうし)に、2作目以降の多くの作品で、人間以上の対戦相手として怪獣との戦いを繰り広げてきたゴジラは、「宇宙大怪獣」の二つ名を持つキングギドラを宿敵として、現在に至るまで7作品で戦いを繰り広げています。

3本の首と巨大な翼を持った黄金の龍であるキングギドラは、まさにゴジラと並ぶにふさわしい風格を備えた、もう一体の王者と呼ぶにふさわしい怪獣でしょう。

しかしここであえてクローズアップしたいのは、キングギドラに次ぐ5作品でゴジラと戦ったメカゴジラです。

最初は大宇宙ブラックホール第3惑星人の切り札として(1974・1975)、次には対ゴジラ用防衛システムとして(1993)、そして初代ゴジラの骨格をメインフレームにもつ特生自衛隊の生体ロボットとして(2002・2003)、ゴジラとの激闘を展開したメカゴジラは、ゴジラの人間への呪縛を体現化するように、作品を経るごとにゴジラの影を背負った存在となっていきます。

とくに『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』(2003)の現在のところ最新のメカゴジラ(3式機龍)はDNAコンピューターに自我が芽生えることによって、初代ゴジラの遺志を継ぐものになったかのように、暴走ともいえる行為──みずからゴジラを抱えたまま日本海溝の深海へと沈んでいく──を取ります。

芹沢博士の最期をも思わせるこのメカゴジラの最後の姿は、ゴジラの写し鏡的存在であったメカゴジラにとって、実にふさわしいものだったように思えます。

1947年、ゴジラ東京に上陸す。

『ゴジラ-1.0』では初代ゴジラより7年も早く東京にゴジラを襲撃させるという、まさに逆転の発想が傑作を生みだした。  TOHO CO.,LTD.
ゴジラシリーズが今日まで続くヒットシリーズになった理由の一つは、「連続性」を捨てたことでしょう。具体的には『ゴジラ×メガギラス G消滅作戦』(2000)で定められた「1作限りの世界観で構築していく」という方針により、『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』(2003)が『ゴジラ×メカゴジラ』(2002)の続編である(同時に『モスラ』(1961)の続編でもあります)以外は、それぞれが独立した世界観を持っています。

そのために、「太平洋戦争の犠牲者の怨念の集合体」ゴジラと、「護国聖獣の一体」キングギドラが戦う『ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃』(2001)や、20年間封じ込められていたゴジラをX星人の怪獣軍団と戦わせるために覚醒させる『ゴジラ ファイナル ウォーズ』(2004)などの、設定から解き放たれた作品が生み出されることになりました。自由度の高いさまざまな時間軸が存在しても、ゴジラという太い軸がぶれない限り、確固たるシリーズとして続けられるのが素晴らしいところです。

そうした布石を経て、ついに今まで触れられることのなかった初代ゴジラ出現の設定(1954年に日本初上陸)を捨て、敗戦わずか2年後の1947年にゴジラを東京に上陸させたのが、『ゴジラ-1.0』(2023)でした。初代ゴジラの襲撃がなかった世界観はあっても、その時間軸を早めるアイデアが実現されたことはありませんでした。オキシジェン・デストロイヤーも自衛隊(1954年設立)もない時代に、さらに米軍の助けもないという縛りまでつけることで、主人公・敷島浩一たちは徒手空拳でゴジラと戦わざるを得なくなります。

唯一の新鋭武器として、戦争の忘れ形見の(ほぼ架空兵器ともいえる)戦闘機「震電」がクライマックスを盛り上げます。しかしその大活躍も、敷島の技術と心、そして仲間たちの協力によったものであったことが『ゴジラ-1.0』の大きな魅力となりました。

死を選ばざるを得なかった芹沢博士に対して、自分が生き続けていることに疑問を抱き続けた敷島が生きる選択をする本作は、新時代の『ゴジラ』として実にふさわしいものとなっていたのではないでしょうか。

『ゴジラ大鑑』で東宝特撮作品の歴史をチェック!

『テレビマガジン特別編集 ゴジラ70年記念 ゴジラ大鑑 東宝特撮全史』では、ここで紹介した以外のゴジラシリーズ作品はもちろん、70年にわたって作られてきた怪獣映画、SF映画をはじめとする傑作東宝映像作品の数々が掲載されています。どの作品も、製作スタッフ・キャストの熱いハートと優れた力が込められた、ぜひ観てほしい作品ばかりです。

未見の作品のガイドとして、また観た作品を思い出す一助として、ぜひ『ゴジラ大鑑』をご一読ください。
『テレビマガジン特別編集 ゴジラ70年記念 ゴジラ大鑑 東宝特撮作品全史』(税込み定価:8800円)2024年10月17日発売!  ©TOHO CO.,LTD.
てれびまがじんへんしゅうぶ

テレビマガジン編集部

日本初の児童向けテレビ情報誌。1971年11月創刊で、仮面ライダーとともに誕生しました。 記事情報と付録の詳細は、YouTubeの『テレビマガジン 公式動画チャンネル』で配信中。講談社発行の幼年・児童・少年・少女向け雑誌の中では、『なかよし』『たのしい幼稚園』『週刊少年マガジン』『別冊フレンド』に次いで歴史が長い雑誌です。 【SNS】 X(旧Twitter):@tele_maga  Instagram:@tele_maga

日本初の児童向けテレビ情報誌。1971年11月創刊で、仮面ライダーとともに誕生しました。 記事情報と付録の詳細は、YouTubeの『テレビマガジン 公式動画チャンネル』で配信中。講談社発行の幼年・児童・少年・少女向け雑誌の中では、『なかよし』『たのしい幼稚園』『週刊少年マガジン』『別冊フレンド』に次いで歴史が長い雑誌です。 【SNS】 X(旧Twitter):@tele_maga  Instagram:@tele_maga