【試し読み連載】5分で読める都道府県ミステリー!「その女の子ミランダ」(青森県)

『日本一周ナゾトキ珍道中』[4]

粟生 こずえ

キリさん

「おい、茶化すなよ。こういうのはデリケートなんだから。」

聖司くんはキリさんたちに小さく頭を下げる。

聖司

「短期留学生のミランダっていう子が、明日ブラジルに帰るんです。7月にぼくのクラスに来て、それからハネトの練習もずっといっしょにやってきて。これで会えなくなるの残念だから……ぼく、手紙を書いたんですよ。」

キリさん

「手紙とは古風だね。」

聖司

「ミランダはけっこう日本語をしゃべれるんだけど、書くのは苦手なんです。ひらがなを書くのがやっと。でも、みんなのやり取りが紙に残るのはうれしいから手紙が好きだって。」

キリさん

「へぇ。おもしろい子だね。」

キリさんが言うと、聖司くんの顔がほころぶ。

聖司

「ミランダが来たばっかりのころ、壁新聞をいっしょに作ったんです。そのとき、ミランダが書きまちがえちゃったんです。『ねぶた』を『ねたぶ』って。紙の予備がないし困ったなと思ったら、ミランダがハサミで字を切って、並び替えて貼ったんです。」

キリさん

「機転が利く子だね。」

聖司

「『頭がやわらかいね。』ってほめたら、『頭、やわらかくないよ?』って頭をトントンたたいてキョトンとしたんですよ。それで『頭』にまつわる慣用句を教えたりして……これがきっかけで仲よくなったんですよね。」

キリさん

「そうかぁ。」

聖司くんはふっとうつむいた。

聖司

「さっきミランダにわたした手紙には全部ひらがなで、ぼくの気持ちを書きました。きらわれてはいないと思ってたんだけど。これがミランダからの返事です。」

聖司くんはおりたたんだ紙を取り出し、キリさんとマッキーの前で開いた。

次のページへ ミランダの返事の内容は?
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