「厳しすぎる校則」を子どもたちが変える! 教育学者が伝授【こども基本法】お悩み解決策

教育学者・末冨芳先生の「こども基本法お悩み相談」~子を守り、親を救う答えとは?~#2「理不尽な校則どうすれば?」

教育学者・日本大学文理学部教育学科教授:末冨 芳

◆子育て中の保護者の方へ

厳しすぎたり、理不尽な校則に子どもが悩んでいる、そんなときには「がまんしよう」とだけは言わないでください。

大人になって、理不尽なルールに悩んだり、ハラスメントにあったときに「がまん」した結果、心身の健康を壊したり、最悪、自殺をしてしまう大人にわが子が育ってしまいかねません。

何をかくそう、私もその一人だったからです。

以前勤めていた職場で、勝手に作られた理不尽なルールを一部の人が押し付けてくることも含め、ハラスメントに遭っていました。

職場で助けてくれる人がほとんどいなかったときに、「がまん」を続けてしまい、ふと気づいたら電車に飛び込みそうになっていました。

その後、職場の相談窓口、信頼できる同僚や、友人知人に相談した結果、いろいろなアドバイスをもらうことができ、加害者たちと距離を置くことができ、その後、転職のチャンスもいただくことができました。

理不尽なことに「がまん」せず、正しい考え方や行動をとれる大人に育つことが、子ども自身が自分を守り、幸せに生きていくために大切ではないでしょうか。

それでは、親はどうすればよいのでしょうか。

まず校則や、校則を理由とする教員のハラスメントを、どのようにわが子が受け止めているのか、話を聞くことです。

我が家の長女も中学2年生、毎日のようにスカート丈や靴下のことで、先生たちに注意されて、家で文句を言っています。

そんなときに「がまんしなさい」とは我が家では一言も言いません。

まず不満を受け止めたうえで、どのように問題を改善したいかを確認します。大きな選択肢は3つです。

【1】先生と対話したり、生徒会に意見を伝えたりして、少しずつでも良いので学校を変えていく

【2】校長先生に子どもの実態や意見を伝えて、学校全部を変えていくために動く

【3】フリースクールや違う学校に転校する


長女の学校は残念ながら、まだ学校としての校則見直しに取り組んでいません。先生方も子どもの権利や「こども基本法」を学ばれていません。

学校の先生方が、子どもの権利や「こども基本法」を理解しながら、生徒たちと対話して、より良いルールを作っていくことができれば、もっと素敵な学校になるだろうなと思いながら、長女の自己決定権を今はサポートしています。

我が家の長女は今のところ、【1】の選択肢をとっています。しかし先生たちが、子どもの権利を知らず、平気で子ども自身の尊厳や権利を傷つけているようであれば、【1】の選択肢も効果を発揮しないかもしれませんね。

そのときには、【2】の選択肢が大切になります。校長先生に実態を伝えて、先生たちに改めてほしいことを具体的に伝えたり、校則を見直してもらえないかを伝えることも大切です。

そんなことをしたらわが子が学校で先生たちにいじめられてしまうのでは、成績など評価を低くつけられるのではないか、と心配される親御さんも多いと思います。

私自身は、人柄のあたたかい信頼できる弁護士さんと一緒に、校長先生に相談することにすると思います。

たとえば、ルールメイキングプロジェクトという取り組みや、校則の見直しについて、かかわってこられた弁護士さんがいます。

お金は少しかかりますが、校長先生と話すときに同席してサポートしてもらったり、子ども自身に不利益が生じないことを確認してもらえれば、子どもさん自身の権利・利益は守られる可能性が高くなります。

弁護士さんは依頼人の権利・利益を守る法の専門家です。

その弁護士さんが一緒に話をするということは、学校側も、親と子どもの真剣に伝えたい思いを理解してもらいやすいでしょう。

もっとも、意見を伝えても、子どもの権利・利益が侵害されるようなひどい状態にある学校であれば、【3】の違う学校に通う選択肢も大切になってきます。

今の日本の学校は、生徒が校則で嫌な思いをしていると伝えたら、改善しようと動かれる学校のほうが多いと私は判断しています。

しかし、そうではない残念な学校があるのも事実です。

【3】のように学校を転校したほうが良い状態というのは、学校に校則を理由とした理不尽なハラスメントが蔓延していたり、先生方や校長先生と対話が成り立たない状態です。

子どもを守れるのは、誰よりも親です。

もしも、そのような状況であれば「子どもの守られる権利」を最優先して、フリースクールや、ルールメイキングに積極的に取り組む学校への進学も検討されてはどうでしょうか。

子ども自らが、理不尽な校則をおかしいと感じて、親に伝えることは、とても良い成長をし、大切な力を身につけている証(あかし)です。子ども自身が意見表明の権利を親に対して行使できているのですから。

その大切な力を育て、大人になっても役立つ自分自身を正しい方法で守る術(すべ)を校則を通じて、親子で考えたり、ときには行動につなげる機会でもあるのです。

文末に紹介している相談窓口では、親向けの相談窓口も紹介してくれます。
もしもお子さんが校則によって傷つけられていたり、悩んでいるときには、親も学んだり相談しながら、子どもを支えていくことも大切になります。

そのように親御さんが寄り添って成長したお子さんは、大人になっても理不尽なルールを誰かに課したりしないし、「がまん」をして心身の健康をこわすことなく、自分や大切な人も守れる大人に成長していくのではないでしょうか。

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