
【母乳と食事制限】授乳中にケーキはダメ? 「乳腺炎になる」は誤情報! 母乳育児の正しい食生活〔小児科医が解説〕
#14 令和の「子どもホームケア」~授乳中の食生活~ (2/3) 1ページ目に戻る
2026.01.25
小児科専門医:森戸 やすみ
授乳期の赤ちゃんがいるママたちをまどわすのが、母乳に関するあらゆる説。
中には母親の食生活についての情報も多く、親世代や先輩ママから「ケーキを食べると乳腺炎になる」「甘いものやごちそうは母乳の質を悪くする」などと聞いて、食べるのを躊躇(ちゅうちょ)するママも少なくないはずです。
授乳中、ケーキや甘いものは控えたほうがいいのでしょうか。『新装版 産婦人科医ママと小児科医ママのらくちん授乳BOOK』(共著:宋美玄/内外出版社)の著者であり、母乳育児に詳しい森戸やすみ先生に聞きました。
ケーキを食べても「おっぱい」は詰まらない
母乳には、昔からさまざまな説がありますね。ケーキや甘いもののほか、乳製品や油っこい料理など、脂肪分の多い食べものは「おっぱいが詰まって乳腺炎になるから、食べないほうがいい」と、当然のこととして広まっています。
でも実は、これらはすべて誤解。ある研究結果により、お母さんの食べたものと乳腺炎にはまったく関連性がないことが明らかになっています(※1)。
母乳中の脂肪というとドロッとしたものをイメージするかもしれませんが、実際は粒状です。この粒は乳房内の細い「乳管」(母乳を乳頭まで運ぶ管)の直径よりもはるかに小さく、くっついて大きくなる性質もありません。母乳中の脂肪によって乳管が詰まることもないですし、体の仕組み上、食べものの脂肪分がそのまま乳管に入って詰まることもないのです。
乳腺炎のおもな原因は、赤ちゃんが飲む量より母乳の分泌量が多かったり、長時間授乳ができなかったりで乳房内に大量の母乳がとどまること、下着や抱っこ紐によるしめ付け、不適切な授乳姿勢、細菌感染です。母親の疲れや肩こりなども関係あるかもしれません。
お母さんの食べたものとの関係は証明されていないので、授乳中にケーキや甘いものを食べても何も問題はありません。
食べもので母乳の塩分・糖分は変わらない
「甘いものを食べると、母乳が甘くなる」「しょっぱいものを食べると、しょっぱくなる」など、母乳の味に関する説も多々ありますね。赤ちゃんに最良の母乳を与えたいお母さん、母乳を飲んでくれないと悩むお母さんにとって気になるところですが、これらも科学的根拠のない迷信です。
母乳は、全身をめぐる血液を材料にして乳腺体で作られます。食べものが消化され、栄養となって全身に運ばれるルートとは直接つながっていません。食べたものが、そのまま母乳になって出るわけではないのです。
例えば、長期的に動物性タンパク質をとらなかった厳格なベジタリアン女性の場合、母乳中のタンパク質やビタミンB12などが低下することがわかっています。でも、このような極端な食生活を送らない限り、お母さんが何を食べても、母乳に含まれる主要な栄養素は変わりません。
母乳は恒常性が高く、乳糖とナトリウムの濃度も一定ですから「母乳が甘くなる」「しょっぱくなる」という説は間違いです。
よく「和食の粗食に努めているお母さんの母乳はサラサラで、おいしくて質がよい」「ドロドロの母乳はまずくて質が悪い」とも言われますね。何をもって“母乳の質”というのか、おいしい・まずいについても科学的根拠がなく疑問に思います。
たしかに母乳は、出始めは脂肪の割合が低くだんだんと増えていくため、1回の授乳のうちで、飲み始めと飲み終わりでは濃度や味に違いがあるかもしれません。でも、だからといって、赤ちゃんが途中で飲まなくなることはないでしょう。
「匂い」は移る? イグ・ノーベル賞の研究
母乳の味や主要な栄養素はそう簡単に変わりませんが、「匂い」は食べもので多少変化するとされています。
2025年、「母親がニンニクを食べると母乳に匂いが移る」という研究が、ユニークな研究を讃える科学賞、イグ・ノーベル賞を受賞し、話題になりました。
授乳中の母親にニンニクカプセルを摂取してもらい、その後の母乳の匂いの変化と赤ちゃんの授乳行動を観察したものです。
母乳のニンニクの匂いは、摂取後約2時間でピークに達し、その後は徐々に減少。匂いが移ったと推定される時点で、赤ちゃんはより乳房に吸い付き、授乳行動が活発になったと報告されています。ただし、飲んだ量に有意差は出ていません(※2)。
この論文自体は1991年に発表されたもので、食べたものの匂いが母乳に移る可能性は以前から言われていました。大切なのは「匂いが変わっても赤ちゃんは母乳を嫌がらずに飲んだ」という結果です。ニンニクの場合、むしろ好んで飲んでいたかもしれませんね。
スパイスの効いた食べものも匂いが移る可能性がありますが、一時的なことですから、さほど気にしなくてよいでしょう。



































