【母乳と食事制限】授乳中にケーキはダメ? 「乳腺炎になる」は誤情報! 母乳育児の正しい食生活〔小児科医が解説〕

#14 令和の「子どもホームケア」~授乳中の食生活~ (3/3) 1ページ目に戻る

小児科専門医:森戸 やすみ

では、本当に気をつけるべきものは何でしょうか? 実は、授乳中に控えたほうがいい食べもの・飲みものは、ほとんどありません。

カフェインは母乳に移行するため、お母さんが大量に摂取して授乳すると、赤ちゃんの寝付きが悪くなったり、興奮状態になることがわかっています。とはいえ、適量を守れば大丈夫。コーヒーなら1日2~3杯が目安です。

アルコールも母乳に移行します。赤ちゃんは大人に比べてアルコールの代謝に時間がかかるため、お母さんが継続的に大量の飲酒をして授乳すると、赤ちゃんの成長発達に悪影響を及ぼす恐れがあります。

完全にNGではありませんが、飲むなら少量に。ビールやワインを1杯飲んだら、2~3時間あけてから授乳しましょう。アルコールの代謝には個人差がありますが、授乳の直後に飲酒をすれば、次に授乳する3時間後にはほぼ代謝されるはずです。

カフェインもアルコールもお母さん自身の睡眠の質を悪くする可能性があるので、そういう意味でも、飲みすぎには注意してくださいね。

このほか、摂りすぎに気をつけたいのが、セージやペパーミント。乳汁分泌抑制効果があるため、ハーブティーの飲み過ぎやサプリメントでの摂取はおすすめできません。また、水銀濃度の高いマグロやカジキ、キンメダイなどの魚は、母乳を介して赤ちゃんに悪影響を与える恐れがあるため、週1~2回以下にしましょう。

「母親は子どものためにがまんしなくてはいけない」と考える人がいます。でも、お母さんは妊娠中から身体的な苦痛・飲食の不自由に耐えて、出産後も多大な時間と手間を惜しみなく赤ちゃんに使わなければなりません。科学的根拠のない飲食の自由まで制限しては、あまりに気の毒です。

もし食べものの影響が気になるなら、授乳直後に食べたり飲んだりしてはいかがでしょうか。赤ちゃんはお腹いっぱいでよく眠れますし、たとえ母乳の匂いや成分が変わったとしても、次の授乳までの3時間程度で通常はもとに戻ります。

変に食事制限はしないで、なるべくバランスよく。お母さん本人の健康を害するほどでなければ、ケーキでもコーヒーでも好きなものを楽しんで、リラックスする時間を作っていただきたいです。

母乳育児にはデマ・迷信があふれている

「これを食べると母乳がたくさん出る」「これを飲むと乳腺炎が治る」などと謳っている食品や飲料がたくさんありますが、どれも科学的根拠のないものばかりで驚きます。

今のところ母乳を増やしたり、乳腺炎を治したりする食品や飲料はありません。医薬品医療機器等法(薬機法)に触れるので、そのような表示があるものは存在しないはずです。

母乳育児には正しい情報を伝える専門家が少ないため、デマや迷信があふれています。一般の人やSNSだけでなく、知識をアップデートしていない医療関係者が広めていることも残念ながら多々あります。そうした医療関係者から「母親なんだからがまんしなさい」と言われ、罪悪感を持つお母さんも少なくありません。

あるお母さんのブログに「チョコレートを食べた途端、胸が張った。チョコレートを食べるのはやめよう」と書いてあるのを読んだことがあります。原因がわからないことは不安ですから、お母さんは“直前にやっていたこと=チョコレートを食べた”が原因だと考えたのですね。

でも、消化吸収されないうちに「チョコレートで乳腺炎になった」とするのは早すぎます。きっとチョコレートを食べた罪悪感がそうさせるのでしょう。

特に母乳やミルクについては、個人的な経験や価値観にもとづいてアドバイスしている人がたくさんいます。デマや迷信に惑わされず、根拠のある正しい情報かどうか、ぜひ確認していただきたいと思います。


【子どものホームケアの新常識 その14】
食べものと乳腺炎に関連性はなく、食べたものによって母乳の主要な栄養素も変わらないので、授乳中にケーキを食べてもOK。



取材・文/星野早百合

〈参考〉
※1=日本助産師会、日本助産学会「乳腺炎ケアガイドライン2020」
https://www.midwife.or.jp/user/media/midwife/page/guilde-line/tab01/nyusenen_guideline_2020_2.pdf

※2=国立医学図書館国立バイオテクノロジー情報センター「Maternal diet alters the sensory qualities of human milk and the nursling's behavior」
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1896276/

●森戸 やすみ(もりと・やすみ)PROFILE
小児科専門医。一般小児科、新生児集中治療室(NICU)などを経験し、現在は都内のクリニックに勤務。医療と育児をつなぐ著書多数

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もりと やすみ

森戸 やすみ

Yasumi Morito
小児科専門医

小児科専門医。1971年、東京都出身。一般小児科、新生児集中治療室(NICU)などを経験し、現在は都内のクリニックに勤務。『子育てはだいたいで大丈夫』、共著に『やさしい予防接種BOOK』(共に内外出版)など、医療と育児をつなぐ著書多数。『祖父母手帳』(日本文芸社)の監修も手がける。子どもの心身の健康や、支える家族の問題について幅広く伝える活動を行っている。

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小児科専門医。1971年、東京都出身。一般小児科、新生児集中治療室(NICU)などを経験し、現在は都内のクリニックに勤務。『子育てはだいたいで大丈夫』、共著に『やさしい予防接種BOOK』(共に内外出版)など、医療と育児をつなぐ著書多数。『祖父母手帳』(日本文芸社)の監修も手がける。子どもの心身の健康や、支える家族の問題について幅広く伝える活動を行っている。

ほしの さゆり

星野 早百合

ライター

編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。

編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。