不登校のキミはどう生きるか? 鴻上尚史が解く「不登校」の背景 学校・教師が抱える問題とスマホの悪影響
シリーズ「不登校のキミとその親へ」#8‐4 作家・演出家の鴻上尚史さん~学校とスマホ~
2024.10.31
作家・演出家:鴻上 尚史
スマホがもたらしたマイナスの影響
子どもたちにとって、もちろん大人にとってもですけど、インターネットというのは大きな存在です。便利でおもしろいけど、やっかいで恐ろしい。人類は今、壮大な実験をしている最中です。
いわばキングコングみたいな怪物を上手に御する方法は、まだ見つかっていません。世の中を大きく変えてくれていると同時に、弊害もずいぶん出てきています。
心がやわらかい子どもは、ともするとネットやSNSに振り回されてしまう。でも縁を切るわけにはいきません。その接点となるスマホと、どう付き合えばいいのか。
最近書いた本(『君はどう生きるか』講談社)の中で、スマホがもたらすマイナスの影響を7つ考えてみました。その中で、自分を守るためにとくに意識してほしいのは「自意識を拡大した」「不安を加速した」のふたつです。
「自意識を拡大した」というのは、自分が人からどう見られているかが、無限に気になってしまうということ。「自分は何をおもしろいと思うか」より「何をおもしろいと思えばたくさんの『いいね』がもらえるか」が基準になる。そうなると、キミの心は迷路に迷い込んでしまいます。反応なんて気にしないで、自分が本当に好きなものや興味があるものを見つけましょう。
「不安を加速した」は、あらゆる情報が入ってくるようになったおかげで、自分と他人を比較し続けなければいけなくなったということ。そんなことをしていたら、自信も安心も得られずに不安ばかりがふくらみます。
何かの分野について、自分以上に詳しい人がどこかにいたって関係ありません。大事なのは、キミが「それが好き」ということです。
孤独な時間を奪ったり、公私の境目をあいまいにしたりなど、ほかにもマイナスの影響はたくさんあります。スマホを見るのがつらくなったら、あるいは常に見ていないと不安になるようなら、半日ぐらい電源をオフにしてみましょう。
折に触れて「これは自分の心を疲れさせるものだ」「これは自分自身を見失わせるものだ」と、念入りに自分に言い聞かせて、スキあらばキミを振り回そうとする悪だくみをけ散らしてください。
学校を取り巻く環境にせよ、その外側にある社会を取り巻く環境にせよ、今の時代に子どもをやっていくのもラクではありません。でも、今の時代は「お先真っ暗」なのかというと、そんなことは絶対にない。
「今は未来に希望なんてない」と言いたがる大人も、たしかにいます。でもそれは、その人が自分の人生に限界や絶望を感じていて、それを正当化するために言っているだけです。「あなたといっしょにしないでください」と思っていればいい。
学校に行っていても行ってなくても、友だちが多くても少なくても、何が得意で何が苦手でも、キミは何にだってなれる。キミはあらゆる可能性を持っています。
キミがどんな幸せを求めるかで、君の人生が決まります。キミの幸せを決められるのは、君だけです。人生という「自分の幸せを探す旅」を思いっきり楽しんでください。
取材・文/石原壮一郎
※鴻上尚史さんの「不登校」記事を読む
・#1
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石原 壮一郎
コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアでの発信を通して、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせている。女児(2019年生まれ)の現役ジイジ。 おもな著書に『大人力検定』『コミュマスター養成ドリル』『大人の超ネットマナー講座』『昭和だョ!全員集合』『大人の言葉の選び方』など。故郷の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。ホンネをやわらげる言い換えフレーズ652本を集めた『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』も大好評。 林家木久扇がバカの素晴らしさを伝える『バカのすすめ』(ダイヤモンド社)では構成を担当。2023年1月には、さまざまな角度のモヤモヤがスッとラクになる108もの提言を記した著書『無理をしない快感 「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が発売。 2023年5月発売の最新刊『失礼な一言』(新潮新書)では、日常会話からメール、LINE、SNSまで、さまざまな局面で知っておきたい言葉のレッドラインを石原壮一郎氏がレクチャー。 写真:いしはらなつか
コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアでの発信を通して、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせている。女児(2019年生まれ)の現役ジイジ。 おもな著書に『大人力検定』『コミュマスター養成ドリル』『大人の超ネットマナー講座』『昭和だョ!全員集合』『大人の言葉の選び方』など。故郷の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。ホンネをやわらげる言い換えフレーズ652本を集めた『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』も大好評。 林家木久扇がバカの素晴らしさを伝える『バカのすすめ』(ダイヤモンド社)では構成を担当。2023年1月には、さまざまな角度のモヤモヤがスッとラクになる108もの提言を記した著書『無理をしない快感 「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が発売。 2023年5月発売の最新刊『失礼な一言』(新潮新書)では、日常会話からメール、LINE、SNSまで、さまざまな局面で知っておきたい言葉のレッドラインを石原壮一郎氏がレクチャー。 写真:いしはらなつか
鴻上 尚史
1958年愛媛県生まれ。早稲田大学法学部卒業。1981年に劇団「第三舞台」を旗揚げする。以降、数多くの作・演出を手がける。紀伊國屋演劇賞団体賞、岸田國士戯曲賞、読売文学賞戯曲・シナリオ賞など受賞。 舞台公演のほか、エッセイスト、小説家、テレビ番組司会、ラジオ・パーソナリティ、俳優、映画監督など幅広く活動。また、俳優育成のためのワークショップや講義も精力的に行うほか、表現、演技、演出などに関する書籍を多数発表している。 『「空気」を読んでも従わない~生き苦しさからラクになる』(岩波ジュニア新書)、『親の期待に応えなくていい』(小学館Youth Books)、『君はどう生きるか』(講談社)など、子どもと若者へのメッセージが詰まった著書も多数。 ●サードステージ公式HP
1958年愛媛県生まれ。早稲田大学法学部卒業。1981年に劇団「第三舞台」を旗揚げする。以降、数多くの作・演出を手がける。紀伊國屋演劇賞団体賞、岸田國士戯曲賞、読売文学賞戯曲・シナリオ賞など受賞。 舞台公演のほか、エッセイスト、小説家、テレビ番組司会、ラジオ・パーソナリティ、俳優、映画監督など幅広く活動。また、俳優育成のためのワークショップや講義も精力的に行うほか、表現、演技、演出などに関する書籍を多数発表している。 『「空気」を読んでも従わない~生き苦しさからラクになる』(岩波ジュニア新書)、『親の期待に応えなくていい』(小学館Youth Books)、『君はどう生きるか』(講談社)など、子どもと若者へのメッセージが詰まった著書も多数。 ●サードステージ公式HP