「不登校」の子どもと親に『パラレル登校』が良い理由 教育・不登校の実態を見続けた識者が説く「選択肢」

「おおたとしまさ(教育ジャーナリスト)✕辻田寛明(ワオフル代表)」特別対談 前編 (3/3) 1ページ目に戻る

辻田:この本を書かれる前後で、おおたさんの中でフリースクールに対する考えは何か変わりましたか。

おおた:僕の中に一番強く残った印象は、フリースクールに通う子どもたちがみんな本当に優しいこと。子どもなので幼さはありますが、人間的な深みがある。これはフリースクール全体に共通する印象です。

また、一歩引いてフリースクールという存在をとらえ直したとき、現代のフリースクールは「昔の私塾」に似ていると感じました。

名門校について本を書いたときに学校史を記したぶ厚い資料をたくさん読んだのです。すると、最初は◯◯村にあった誰々さんちを校舎にしてたった6人の生徒から始まった、という成り立ちがよく書かれている。

今回、フリースクールを取材すると、フリースクールの校舎って使われなくなった民家などを使っているケースがとても多くって。その様子を見て、これは昔の私塾じゃん! と重なりました。

今、学びを自分たちの手に取り戻す活動が始まっているのではないか。それがフリースクールっていうものなのかもしれないなと。今回この本を書くことによって気づきまして。

辻田:なるほど。学びには、地域に根づいた思いや歴史が大きく影響していると僕も考えています。

おおた:本当にそれですよ。地域教育って今、ものすごく貧弱になっちゃってるんだけど、地域が持っている教育力とか、文化が持つ力って知らず知らずのうちに人に染み込んでる。

僕らが生きていくうえで必要なことのほとんどは、学校以外の場所から学んでいると思うんです。実は学校で学べることって本当にわずかなのに、学校に対して、僕たちはものすごい誇大妄想を抱いてしまっている。これは近代以降の社会のクセなんじゃないかなという気もします。

子どもが安定する「パラレル登校」

辻田:「学ぶ=受験に受かるための延長」という認識も刷り込まれてしまっていますね。不登校になったとき、子どもも親御さんもとてもしんどいとは思うんです。

でもそれをきっかけに少し離れて改めて学びをとらえ直すと、本来の学びや生きるとは何なのか。そこを気づくきっかけになったと語る不登校の親御さんはたくさんいらっしゃいます。この経験は大きいですよね。

おおた:本当ですね。学校に行かないと真っ当に生きていけないとずっと思い込まされていたことに気づいた、という話はよく聞きます。世の中の多くの大人は、その呪いをかけられています。不登校の親当事者になって初めて「学校に行かなくちゃいけないというのは思い込みかもしれない」と気づくのですね。

辻田:オンラインの夢中教室や夢中カレッジを利用しながら、リアルなフリースクールにも通っている子どもも多いです。僕らが提唱している「パラレル登校」とも重なるんですけどね。

※パラレル登校=子どもが学校やフリースクール、家庭学習(オンラインなど)などを組み合わせて、自分に合った複数の場所で並行(パラレル)して学ぶスタイル。「不登校」という呼び方も「パラレル登校」に変えたいと辻田氏は提唱している。

▼オンラインフリースクール「夢中カレッジ」の記事はこちら

おおた:辻田さんのパラレル登校というキーワードは本(『フリースクールという選択』)の中でも書いてますけど、複数のフリースクールを掛け持ちしている子どもは相当数いるようです。その日の調子によってオンラインにしたり、リアルにしたり、いくつかの選択肢を持っている。学校にも週に1~2回通いつつ、フリースクールも行っているという子どもも多い。

ただ、そのとき問題になるのが学校の先生から「学校かフリースクールのどちらかにしないんですか?」と詰められるケース。これたぶん、先生がめんどくさいのだと思うんですよ。

だってどっちも通うって素晴らしいことじゃないですか。複数の居場所を持つことは安全基地を増やすってことで、それで子どもは安定するんだから。どんどん推奨すればいいのに、学校側の立場だといわゆるお役所的な手続き上、煩雑になるから「どっちにするんですか」と聞くんでしょうね。

「どちらか一方を選ばなきゃいけないことなんですか?」と言いたいです。パラレル登校が常識になってほしいと強く思いますよね。

辻田:今は社会も生き方もどんどん多様化してきて、副業だってOKな時代です。学び方も複数あっていいはずです。もちろん、学校があっている子どもは学校だけでもいいと思いますが。

おおた:僕はそれを本『不登校でも学べる』で書き、そのときは「モザイク模様の学び環境」って言葉を使いました。

例えば我々が会社員として、お昼休みにランチを食べに行くときに、今日はカレーかな、ラーメンかな、定食屋さんかなって選べるじゃないですか。好きに選べることで今日は社食でいいかって思える日もあり、社食も前向きに受けとめられるわけですよ。だけど、学校って毎日必ず社食で決められた定食を食べなさいって決められているようなものじゃないですか。

学びにも複数の選択肢があり、その中の1つとして学校を利用する。そういう社会になっていくべきじゃないでしょうか。

今、不登校が増えている理由として学校にいろんな問題があるからだってよく言われますが、学校は学校でダメなところがある前提で、学校の機能が不完全だとしても、それを補う多様な学びの場がたくさんある社会を作るほうが、よっぽど現実的じゃないでしょうか。

※2026年6月2日オンライン開催 「おおたとしまさ✕辻田寛明」特別対談より一部抜粋して構成

\親の不安を安心に変える、新しい居場所の探し方/

フリースクールという選択

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おおたとしまさ

おおたとしまさ

教育ジャーナリスト

1973年、東京都出身。教育ジャーナリスト。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科中退。上智大学英語学科卒業。97年、リクルート入社。雑誌編集に携わり2005年に独立後、教育をテーマにさまざまな取材・執筆を続けている。中高の教員免許、小学校での教員経験、心理カウンセラーとしての活動経験もある。 主な著書に『勇者たちの中学受験』、『子育ての「選択」大全』、『不登校でも学べる』、『ルポ名門校―「進学校」との違いは何か?』、『なぜ中学受験するのか?』など80冊以上。

1973年、東京都出身。教育ジャーナリスト。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科中退。上智大学英語学科卒業。97年、リクルート入社。雑誌編集に携わり2005年に独立後、教育をテーマにさまざまな取材・執筆を続けている。中高の教員免許、小学校での教員経験、心理カウンセラーとしての活動経験もある。 主な著書に『勇者たちの中学受験』、『子育ての「選択」大全』、『不登校でも学べる』、『ルポ名門校―「進学校」との違いは何か?』、『なぜ中学受験するのか?』など80冊以上。