
不登校〜定時制夜間高校〜公立大医学部へ コンプレックスが「希少価値な存在」に変わった「浪人時代」
不登校から小児精神科医を目指すまで 母親インタビュー第4回「親の手放しと医学部受験」/全6回 (4/4) 1ページ目に戻る
2026.08.02
教育ジャーナリスト:おおたとしまさ
孝子:医学部と決めてからは、相当勉強しなければなりませんでした。言い出した時点では、「まさか冗談でしょ」というような学力でしたから。
高校の先生との保護者面談では、母親の私が「医学部に行け」と、無茶な目標を息子に無理強いしているんじゃないかと疑われたくらいです。
おおた:その時点では、それくらい、高校の先生から見ても無謀な挑戦だったわけですね。
孝子:だから私もさすがに予備校か塾に行ったほうがいいと思ったんですが、夜間部なので、時間帯的にそもそも塾には行けない状況です。
それで、本当に先生たちには申し訳ないんですけど、授業中は常に内職をしていたそうです。最初はすごく怒る先生もいたみたいですが、ずっとやり通したので、最後は「まあ、いいか」という感じだったみたいで。
勉強自体は、高校に入ったときから、ずっと自分でしていました。高校受験で思ったところに行けなかったので、大学受験では力を発揮したいと思っていたらしくて、そのために。
塾には行かずに、自分なりのノウハウのようなものを確立したみたいです。家には、ものすごい量の参考書がありました。
現役のときは、国立大学の医学部に狙いを絞って受けました。模試はずっとE判定でした。国立大よりは公立大学の医学部のほうが少し偏差値的には下なので、「せめて公立大にしてみたら」とも言ったんですけど、当時は「総合大学に行ってみたい」「何があるかわからないから」と言って国立大を受けて、落ちました。
浪人が決定したわけですけど、このときも、清々しい顔をしてました。
おおた:ラップの大会に出たとき(第3回)と同じ「やりきったぜ体験」ですね。
孝子:浪人時代は、さすがに予備校に通いました。そのときはもう体調(起立性調節障害)は基本的に大丈夫で、朝から通えていました。予備校の医学部コースに入れたのは、現役のときの共通テストの点数が、落ちたとはいえそんなに悪くなかったからです。
でも周りは、そうそうたる進学校の生徒ばかり。自分の出身高校を言っても誰も知らなくて、「どこだそれ」という世界。そのなかで、だんだん「自分は希少価値かもしれない」と思うようになったみたいです。
おおた:マジョリティの側にいる人たちが当たり前だと思い込んでいるものを、外側から相対化できたんですね。
孝子:浪人が決まってから、志望を国立大から公立大に切り替えました。現役のときは、受かるとは思っていなくても、合格までにどれくらいの距離があるのかを知っておきたい、という感じで受けた。
本格的に受験するとなったときに、いろいろ比べて、公立大の医学部にもその良さがあると知って、自分から「公立大のほうがいい」と思うようになったみたいです。それでも、せいぜいC判定でしたけど。
公立大の入試の面接で、不登校の経験を話したら、先生が真剣に聞いてくれたそうです。それがまた嬉しかったみたいで。
自分の経験が希少価値なんだ、とはっきりと気づいた。それまでは、学校に行けていなかったことや、定時制の夜間に通っていることに、コンプレックスを感じていたんです。
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次(第5回)は、見事公立大の医学部合格! 不登校で手に入れた「自分で考えて選択する力」の真価に迫ります。取材・文/おおたとしまさ(教育ジャーナリスト)
●おおたとしまさPROFILE
教育ジャーナリスト。1973年東京生まれ。リクルートから独立後、教育に関してさまざまな観点から取材を行い、著書は90冊以上。2026年5月に『フリースクールという選択』(講談社+α文庫)を上梓。どこの組織にも属さない在野の視点で現代の教育への考察・提言を続けている。メディアへの出演や講演も多数。
(Xアカウント:@toshimasaota)
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おおたとしまさ
1973年、東京都出身。教育ジャーナリスト。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科中退。上智大学英語学科卒業。97年、リクルート入社。雑誌編集に携わり2005年に独立後、教育をテーマにさまざまな取材・執筆を続けている。中高の教員免許、小学校での教員経験、心理カウンセラーとしての活動経験もある。 主な著書に『勇者たちの中学受験』、『子育ての「選択」大全』、『不登校でも学べる』、『ルポ名門校―「進学校」との違いは何か?』、『なぜ中学受験するのか?』など80冊以上。
1973年、東京都出身。教育ジャーナリスト。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科中退。上智大学英語学科卒業。97年、リクルート入社。雑誌編集に携わり2005年に独立後、教育をテーマにさまざまな取材・執筆を続けている。中高の教員免許、小学校での教員経験、心理カウンセラーとしての活動経験もある。 主な著書に『勇者たちの中学受験』、『子育ての「選択」大全』、『不登校でも学べる』、『ルポ名門校―「進学校」との違いは何か?』、『なぜ中学受験するのか?』など80冊以上。