「親が必死に生きる姿が教育」作家・斉藤洋が語る、子どもに一生ついてまわる親子の関係性

君に贈る「物語の処方箋」 (2/4) 1ページ目に戻る

逃げながら戦っているうちに、児童文学作家になった

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斉藤:そういう家庭環境が影響しているかはわからないけど、一流企業の就職試験にはいくつも落ちたりした。

出発点がそうだから、僕の人生は最初から「撤退戦」なんだよ。撤退戦、わかる? 撤退戦というのは、ただ逃げるんじゃない。

ナポレオン戦争のとき、プロイセンの将軍は「ナポレオンは本人がいる戦場では強いが、いない場所ではそうでもない」と見抜いて、主戦場からナポレオンを引き離すために、後ろを振り返りながらときどき撃つような「逃げながら戦う訓練」を徹底した。

僕もそうやって現実から逃げながら、ときどき後ろを向いて戦っているうちに、いつの間にかドイツ文学の研究者になり、児童文学作家になっちゃったわけ。

小説の本質は「娯楽」 おもしろくなきゃ読まれない

──大学では長年ドイツ文学の研究をされ、その後は教鞭を執られていました。ご自身の創作活動において、その研究経験は影響していますか。

斉藤:
大学院も含めて長く大学にいて分かったのは、結局「小説というのは娯楽だから、面白くなければいけない」ということ。それだけ。でもそれがすごく大事。昔は、貴族や商人の奥さんが昼間のひまつぶしに小説を読んだわけで、ある程度面白くなければ読んでもらえない。ためになるとかならないとかは、その後の問題。

僕が児童文学でときどき違和感を覚えるのは、「友だちとの別れを寂しがっちゃいけない。笑顔で送り出しましょう」みたいな、きれいごとを肯定しようとするところ。

置いていかれる子どもの立場になれば、ニコニコしていられるわけがない。でもそれが中学入試の問題になって、「この後どうなるか書きなさい」なんて出題されることもある。

その正解は、作者の意図ではなく「出題者(大人)が書いてほしい道徳的な答え」だったりすることもあるから、それはどうなんだろうと思っている。

そんなウソや大人のおしつけでは伝わらない。物語はまず「娯楽」として面白く、ウソがないものでなければならない、というのが僕の信条なのです。

児童文学を深く知りたい人に読んでほしい3冊

──今回、先生の作品を愛読する子どもたちや親世代におすすめの3作品を選んでいただきました。それぞれの作品の魅力について教えてください。

作品が描かれる背景にあるもの
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