「漫画」を読むのは「劣った読書」? 「子どもに安心して渡せる漫画」を話題の〔出版ジャーナリスト〕が徹底解説

出版ジャーナリスト・飯田一史が児童書ファンのための漫画サイト「ビブリオシリウス」を分析

出版ジャーナリスト・ライター:飯田 一史

日本では「マンガは子どものもの」ではなくなっている

一方、日本はどうだろうか。

そのむかしは小学生が自分のおこづかいで当たり前にマンガ雑誌を買っていたが、いまはもうそういう時代ではない。スマホを手にするような年代になると、マンガアプリやウェブマンガ誌を読むことも選択肢に入るが、小学生、とくに女子は紙のマンガ雑誌を買わなくなっている。

そもそも地域によっては、小学生向けの少女マンガ誌を買える場所が近くにない。書店がないところも多いし、コンビニも雑誌から撤退しつつある。コミックスも、児童向けのタイトルは書店のマンガ棚では隅のほうにあり、なかなか目に入りづらい。

学校図書館も公共図書館も、多くはいまだにマンガに対しては比較的慎重だ。

保護者はというと、子どもに話を聞いても、しばしば「マンガは学習マンガしか買ってくれない」といった声があがる。

「コミックなんか読書じゃない」という意見が20世紀のあいだ主流だった欧米は、2010年代以降、猛烈な勢いでコミックの読書推進に積極的になり、実証的な研究をもとにそのポジティブな効果が謳われるようになっている。

対して「マンガ大国」を自称し、20世紀には放っておいても子どもがマンガを読むような環境だった日本のほうが、今では子どもがマンガから遠ざかっている。

写真:graphica/イメージマート
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べつに私は「マンガだけ読めばいい」と言いたいわけではない。

ただ、先ほど言ったように「読み慣れていない子にはマンガのほうが入りやすい」「読み切ったという達成感を得やすい」「字が苦手な子も比較的抵抗が薄い」といったメリットがある。であれば読書の「選択肢」として、あったほうがいいと思う。

「図書館にマンガも置いておくとマンガ以外の本の貸出も増える」とか「ずっとマンガしか読まない子は少数派」といったことが読書研究ではわかっている。

マンガから多くの楽しみや感動を得てきた世代が大人になっているのだから、子どもに対して児童書もマンガも両方提供するほうが自然ではないだろうか。

子どもに安心して渡せる「児童文庫・児童文学のマンガ版」が誕生!

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