室井滋「驚異の15役」を演じ分け!『ムーミン谷の彗星』原作側が惚れ込んだ朗読【Amazonオーディブル】

【Amazonオーディブル】『ムーミン谷の彗星』スペシャルインタビュー 前編 (3/3) 1ページ目に戻る

フィンランドの原作側が惚れ込んだ「室井滋のムーミン」

室井さん:その後、ムーミン関連のイベントで朗読をする機会を何度かいただきました。

──フィンランドの原作側の方が室井さんの朗読を聴いて、「とても良い朗読だ!」と惚れ込んだそうですね。原作側のみなさんにも素敵な朗読として届いたのですね。

室井さん:
ムーミンの物語って、独特の深みがあるんですよね。子どものころに見ていたアニメの「かわいい」というイメージだけじゃなくて、もっとシニカルで、人生の奥底をじわじわと突いてくるような哲学がある。大人になって読み返すと、受け止め方が全然違って、私自身改めて面白いと思いました。

世界が終わる不安の中で、 どう生きるか

──今回朗読された『ムーミン谷の彗星』は、彗星が衝突して世界が滅びるかもしれないという、ある種のパニック映画のような設定でもあります。

室井さん:
そうなんです。彗星が来たり、大洪水が起こったり。これって、災害の多い今の日本や、先の見えない現代にもすごく重なりますよね。

物語の中で、ムーミンたちはジャコウネズミさんに「地球が滅びる」と脅かされ、不安でいっぱいになります。でも、そんなときにムーミンパパとママは「自分たちの目で確かめてきなさい」と、子どもたちを旅に送り出します。

これってすごいことですよね。親も不安だけれど、子どもを信じて広い世界へ冒険に行かせる。そして最後には、大きな不安の中でも「みんなで一緒にいれば大丈夫」と包み込む。

ムーミンたちは、最後のほうでは信じられないくらい長い竹馬に乗って歩いたり、ヘムレンさんのスカートで遠くまで飛んだり、不思議でおかしなことがたくさん起こるのですが、ムーミンパパもムーミンママも常にいつもどおり。

そんな姿には「怖いことばかり考えなくていい。失敗しても何度でもやり直せる」という、人生のバイブルのような教えが詰まっているなと思います。

▲金箔押しのスペシャルな装幀が印象的な『ムーミン谷の彗星 特装版』を手にした室井滋さん
▲金箔押しのスペシャルな装幀が印象的な『ムーミン谷の彗星 特装版』を手にした室井滋さん
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\ムーミン谷の彗星 特装版/

15役を演じ分けたプロのこだわり

──実際の収録はいかがでしたか? かなりのキャラクター数を演じ分けられたと聞きました。

室井さん:
私、普段の読み聞かせでも、つい声色を変えて演じてしまうタイプなんです。Audibleの方に「どうしますか?」と聞いたら、「ぜひ変えてください!」と言われたので、本気でやったら大変なことになりました(笑)。

通りすがりのキャラクターまで含めると、15役くらいはいたでしょうか。

その中で特に私が気になっちゃうのはスニフでしたね。ちょっと問題児というか、欲張りだったり臆病だったりして目が離せないんです。だからつい力が入ってしまいました(笑)。

スニフには猫ちゃんとの物語があるのですが、それがすごく可愛いんですね。だから最後、スニフが初めて洞窟の中で猫ちゃんと眠れたシーンでは、私自身も「本当によかったね」と思いながらセリフを言いました。

──3日間、一日4時間ほどのペースで収録を終えられたと聞きました。

室井さん:
読んでいて本当に楽しくて、時間を忘れてしまうんです。スタッフさんがいなければ、泊まりがけで1日で読み切りたかったくらい(笑)。それくらい、物語に引き込んでくれる魅力が詰まってました。

聞きどころは「全部」! それぞれの物語にも耳を傾けて

──最後に、子育てに奮闘している読者の皆さんへメッセージをお願いします。

室井さん:
毎日忙しくて、自分の時間なんてないという親御さんも多いと思います。Audibleなら、お子さんと一緒に聴くこともできますし、何かをしながら音楽のように聴くこともできます。

『ムーミン谷の彗星』の聞きどころは……難しいですね、全部です(笑)。

長い冒険の物語で、それ自体が面白いですし、キャラクター全員にそれぞれの哲学があって、先ほどお話ししたスニフの物語のように、ムーミンたち以外のキャラクターにもひとりひとりしっかりとした物語があるんですよね。

そこには「名言集」や「切り抜き」だけではなかなか伝わらない深みがあるので、ぜひ何度も何度も繰り返し聴いて、みなさんで発見していただけたらと思っています。

─────────────

世界的に愛される『ムーミン谷の彗星』Amazon Audible版で朗読を担当された室井滋さんへのインタビューは前後編。「ムーミンの物語が教えてくれること」をお聞きした今回の【前編】に続き、次回の【後編】では、室井さんの子ども時代や、本や朗読との出会いについて伺います。

取材・文/小川聖子
撮影/安田光優

室井滋(むろいしげる) PROFILE
富山県出身。早稲田大学在学中に映画デビュー以来、多くの映画賞や芸能賞を受賞。著書に、大ヒットしたエッセイ『むかつくぜ!』(マガジンハウス、のちに文春文庫)をはじめ、絵本『しげちゃん』(金の星社)など電子書籍化含め著書多数。最新刊『背中合わせの恐怖』(金の星社)が4月下旬発売予定。近著に『やっぱり猫 それでも猫』(中央公論新社)、『ゆうべのヒミツ』(小学館)、絵本『タケシのせかい』(アリス館)。全国各地でしげちゃん一座絵本ライブを開催中。2023年4月1日付けで富山県立高志の国文学館の館長に就任。

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Seiko Ogawa
ライター

東京都出身。アパレル系企業に勤務したのちライターに。雑誌やWeb系メディアにてファッション関連記事や人物インタビュー、読み物記事の構成や執筆を行う。長男はついに成人、次男は中学生に。1日の終わりに飲むハイボールが毎日の楽しみ。

東京都出身。アパレル系企業に勤務したのちライターに。雑誌やWeb系メディアにてファッション関連記事や人物インタビュー、読み物記事の構成や執筆を行う。長男はついに成人、次男は中学生に。1日の終わりに飲むハイボールが毎日の楽しみ。