「子育てひろば」全国に7800ヵ所 “孤育て”をサポートしてもらう第一歩とは?
NPO法人せたがや子育てネット代表理事 松田妙子氏に聞く「子育てひろば活用術」#2 ~実践編~
2023.01.19
NPO法人せたがや子育てネット代表理事:松田 妙子
近年、少子化対策として数多くの施策が施行されていますが、依然多くの人が現代社会での子育てに不安を抱いています。
子育てをする人の実に7割以上が、故郷以外の見知らぬ土地で育児をスタートさせる“アウェイ育児”であるという調査結果(※1)もあり、頼れる人の少ない土地で、初めての経験である“子育て”をする不安感は、はかり知れないものです。
そんな不安感を解消するためのサポートをしてくれるのが、“子育てひろば”や“子育てサロン”“子育て支援センター”と呼ばれる地域子育て支援拠点。
「あるのは知っている」「行きたいけれど、ちょっと不安」という人のために、東京都世田谷区で20年以上“子育てひろば”(以下ひろば)を地域に増やす活動と、運営をしているNPO法人せたがや子育てネット代表理事の松田妙子(まつだ・たえこ)さんに、ひろばへのファーストステップを教えていただきました。
※全3回の2回目(#1を読む)
赤ちゃんがいるから子育て講座へ行けない!?
「パパに赤ちゃんを預けられないので、今日はひろばに行くことができません」
ある日、子育てひろば(以下ひろば)にかかってきた電話でのひと言。電話に出たひろばの運営者・松田妙子(まつだ・たえこ)さんは、思わず戸惑ってしまい、すぐに返す言葉が見つかりませんでした。
その日は、ひろばで保護者対象の育児講座が開催される日で、電話の主はその参加予定者。
「今日の講座には、どうしても参加したくて、パパに子どもを預けるつもりだったんです。でも、急に面倒を見てもらえなくなってしまって、行くことができなくなりました。すみません……」
とても残念そうに話す相手に松田さんは、ていねいに説明しました。
「お母さん、連絡をくださってありがとうございます。でもね、大丈夫ですよ。ひろばは、赤ちゃんと一緒に来られる場所なんです。
育児講座ももちろん、赤ちゃんを抱っこしながら受けられます。もちろん、途中で赤ちゃんが泣いてしまっても大丈夫。だから、安心して赤ちゃんと一緒にいらしてください」
それを聞いた電話の主は、赤ちゃんと一緒に育児講座に参加。「来られて本当に良かったです!」と笑顔を見せ、これをきっかけに積極的にひろばを利用してくれるようになったといいます。
この体験を通して、松田さんは「ひろばの正しい認識が広まっていない」と痛感したと語ります。
「“子育てひろば”や“子育てサロン”という、言葉を知っている保護者は増えてきていますが、実際にどんな場所なのかを知っている人は、まだまだ少ないと感じています。
ひろばは、“赤ちゃんが泣いても誰も責めないし、むしろ一緒に寄り添ってくれる人たちがいる場所”なのだということを、もっと知ってもらわなくては! と決意を新たにしましたね」
ひろばは妊娠中からウエルカム!
“ひろば”こと「地域子育て支援拠点」は、児童福祉法に位置づけられている国が推進している事業です。全国の市区町村が設置をしており、全国に約7800ヵ所(※2)あり、運営は地域のNPO法人・保育所・児童館などさまざまな施設が担っています。
未就園児とその保護者が利用することが多いのですが、保育所や幼稚園・認定こども園に通う親子が訪れることもあり、総合的な子育て支援プログラムが提供されている場所なのです。
多くの自治体では母子健康手帳の配布時に、ひろばの情報が掲載された冊子などを一緒に渡しています。しかし、実際に出産して子育てが始まり、利用対象者となったとしても、慌ただしい生活に追われ、その存在を忘れて利用しないままという人も。
「ひろばに来てくれる人は、いろいろなタイミングの人がいます。母子健康手帳をもらったばかりの妊娠期の人もたくさん来ています。
妊娠期に一度、ひろばに来た経験のある人が、里帰り出産中にご実家から『赤ちゃんが生まれて、まだ実家にいるのですが、○○に困っていて、どうしたらいいですか?』というような電話やメールをくれることもありますよ。
妊娠期に、一度ひろばに来た経験のある人は、赤ちゃんが生まれた後も、比較的気軽に遊びに来てくれることが多いですね。そこで、スタッフにいろいろな育児相談をしたり、ママ友を作ったりして、自分の居場所として思ってくれる人も多いです。
ひろばは、もちろん、子どものための場所ですが、それと同じくらい、保護者さんのための場所でもありますから」