
小学校「ほんとうの入学準備」 教育コンサルタントが提唱する「教える」より「受け止める」新常識とは?
《第1回》家庭を「安全基地」にしよう/幼児期に「生きる強さ」を身につける7つのこと(全7回) (2/2) 1ページ目に戻る
2026.03.27
文章力養成コーチ・教育コンサルタント:松嶋 有香
学校に「お任せ」は卒業! 家庭でしかできない“役割”を意識しよう
松嶋:まず、就学前の親御さんに知っておいてほしいのが、「学校は万能ではない」ということです。
小学校では、保育園や幼稚園よりもさらに多い人数を担任の先生ひとりが見るので、どうしても個別対応が難しくなります。親は教室の中を見ていられませんし、子どもは子どもの世界を生きます。学校で起きることすべてを、親はコントロールできません。
ですから「学校にさえ行けば、先生がいるからお任せでだいじょうぶ」という認識を改め、「学校任せにせず、家庭でしかできない役割をしていこう」と思ってください。
必要なのは、座って授業を受けることができるとか、先生の言うことをちゃんときけるといった「学校にいる時間を完璧にする」ことではなく、帰ってきたあとに、子どもの気持ちや疲れを回復できる仕組みです。親が「学校でちゃんとできる子」にしようとすると、家庭も学校や塾と同じ訓練の場になり、子どもの逃げ場がなくなってしまいます。
基本的に家庭は、疲れた体を休め、リラックスする場所です。そして安心できる安全基地であり、困ったことがあったら親に言える場所。こういった家庭環境をつくることこそ、「ほんとうの入学準備」として第一に取り組んでほしいと思います。
「ねえ聞いて」を逃さない! 子どもの話に耳を傾けることが “安心の貯金”になる
──具体的にどうすれば、家を子どもの安全基地にできますか?
松嶋:共働き家庭が増えた今は、親が子どもより後に帰ってくることも多いでしょうし、仕事帰りに学童にお迎えに行っていっしょに帰宅する方もいると思います。
いずれの場合でも、家に帰ったら「おかえり」「ただいま」と迎えて、抱きしめるなどのスキンシップで緊張を解いてあげるとよいでしょう。時間がない中で夕飯や洗濯、お風呂などの家事に追われますが、子どもが「ねえねえ、聞いて」と話しかけてきたら少しの時間でよいので、子どもの顔を見て、はなしを聞いてあげてください。
そうやってストレスを緩和してあげると、子どもはとっても安心します。辛いことや悲しいことがあっても、家に帰れば大好きなお父さんお母さんが優しくしてくれる。その体験の積み重ねが、親子の信頼の強さにつながるのです。
これは、保育園や幼稚園に通っているときからできることです。自宅以外の場所では、子どももストレスを受けるという前提を受け入れ、子どもの顔を見ておしゃべりして、がんばったことをほめてあげる。
幼児期は親とのスキンシップや関わりで信頼関係を構築する時期。その土台が、ひとりで小学校に通う力になっていきます。
習い事や地域コミュニティで「頼りになる第三の大人」を見つける
──スキンシップをする、子どもの顔を見て話すことの大切さはわかりましたが、実際にやる自信がありません……。なにか助けになることはありますか?
松嶋:実家が近くにあって頼れる祖父母や親戚がいればよいですが、親子だけの家庭ですべて背負おうとすると、親の負担が大きくなりますよね。だからといって学校だけに任せきりにするわけにもいかない。
その場合は、ぜひ「家庭と学校と地域」で子どもを育てるというイメージを持っていただきたいと思います。
たとえば地域のお祭や子ども会、ボーイスカウト、習い事、児童館などのイベントに参加するのもよいでしょう。そこで「名前を知ってくれている第三の大人」をつくっておくと、子どもだけでなく親にとっても、困ったときの相談先が増えます。また防犯の面でも、顔見知りが多いことは強みになるでしょう。
子育てひろば・児童館などは、赤ちゃんの頃に数回行ったのみ、という方も多いかもしれません。ですが月に何回か幼児向けのイベントがあることも多いですし、年齢の違う子がガヤガヤいる環境に触れられます。価値観がいろいろで、めちゃくちゃな子がいる場面もあるかもしれません。
けれど社会は本当に雑多です。家庭の価値観だけで世界ができているわけではない。子どもがそれを早めに知ることは、のちのち自分を守る力になります。
座る練習は必要? 先取り学習をすべき? 入学前の「Q&A」
国語教師・文章コンサルタントとして、35年以上子どもから大人までの生徒を指導してきた松嶋さん。現在、不登校支援や講演会も行っている松嶋さんが、入学準備に悩む親御さんの質問に答えます!
《Q.1》園で毎日外遊びしている元気な子が、小学校の教室で長時間座れるか不安です。家庭でいまからできる準備はありますか。
松嶋:子どもに「小学校では机の前に座って授業を受けるんだって」と知らせておくことは大事ですが、練習は必要ありません。
グループワークなどが増えてきたとはいえ、基本的に小学校では全員前を向いて座り、先生が決まっていることを話すという座学での教育方法は変わりません。3月まで走り回っていた子が4月から急に座るのは確かに大変です。
実際に「座っていられない子」は必ず出てきますし、先生たちもわかった上で対応してくれるので、そこはあまり心配しなくてよいでしょう。
《Q.2》先取り学習は必要ですか?
松嶋:学習内容においても、本来は自分の学びたいことを自由に探求できるような学び方をさせたいところですが、一般的な公立小学校ではまだ、「早く正しく」答えにたどり着く方法を教えがちです。
しかし実際には、テストでは測れない力のほうが、人生で使う場面が多いですよね。ですから、幼児期はぜひ遊びの中で試し、失敗し、工夫する時間を大切にしてください。
《Q.3》小学校に上がった子どもから「保育園は楽しかった、小学校は楽しくない」という声を聞くことがあり、不安です。
松嶋:入学前には「小学校が楽しみ」と期待に胸を膨らませていた子が、いざ入学すると「勉強がいやだ」ということはよくあります。また学校は集団行動を学ぶ場でもあり、「まるで軍隊みたい」と感じる場面もあるでしょう。
そこで合わない子が出るのは自然なことです。問題は、学校生活に合わないだけで、子どもの可能性までつぶされてしまうことです。だから私は、ご家庭で学校との付き合い方、自分たちの指針を持ってほしいと思っています。
学校に合わせるだけではなく、家庭に戻れば安心できる。その環境が、子どもの心と成長を守ります。
《Q.4》スマホとの付き合い方はどう考えればいいですか。未就学のうちから慣れさせたほうがよいのでしょうか?
松嶋:以前私は学校現場で調べものにスマホを使う提案もしていましたが、その後、スマホによる子どもの目や脳への影響を考え、この考えを改めています。スマホデビューが0歳になっている現状もありますが、できるだけスマホデビューは後ろに延ばすことをおすすめします。
新しい環境は子どもにとってストレスです。そこで家庭が訓練所になってしまうと、子どもは逃げ場を失います。
今日からできることは、特別な教材を買うことではありません。帰宅後に目線を合わせて話を聞く。抱きしめる。笑顔を向ける。「親は味方なんだ」と子どもが思える時間を増やす。入学前のいまは、その「安心の貯金」がいちばん効くんですよ。
全7回でお届けする連載企画「幼児期に「生きる強さ」を身につける7つのこと」。【第2回】は「過干渉をやめて自立を促すコツです。
全7回の1回目
2回目を読む※3月27日よりリンク有効

































松嶋 有香
静岡大学教育学部卒。海外にも教室がある大手塾の講師を経た後、教育支援業と執筆業を開業。文章指導歴は35年というベテラン講師。またライターとして、自身の教室の他、いろいろなプロジェクトで「書くこと」を担当。言葉、子育て系、国語系の記事やコラム、クラファンの広報文などを手がける。地域未来塾、不登校支援のほか、バンド活動も行っている。 オフィシャルサイト 文章力養成コーチ ゆか先生の「書きまくるトレーニング」
静岡大学教育学部卒。海外にも教室がある大手塾の講師を経た後、教育支援業と執筆業を開業。文章指導歴は35年というベテラン講師。またライターとして、自身の教室の他、いろいろなプロジェクトで「書くこと」を担当。言葉、子育て系、国語系の記事やコラム、クラファンの広報文などを手がける。地域未来塾、不登校支援のほか、バンド活動も行っている。 オフィシャルサイト 文章力養成コーチ ゆか先生の「書きまくるトレーニング」