保健室の先生直伝! 子どもが自ら話し始める「子どもの心をきく」3つのテクニック
我が子との心の距離が縮まる! 保健室の先生に学ぶコミュニケーション術#3
2022.11.16
保健室の先生として30年以上のキャリアを持ち、3000人以上の子どもとその保護者の相談にのってきた渡邊真亀子先生。
コロナ禍を経てますます心の不調を抱える子が増えている中、保健室では日々、精神的支援を必要とする子どものケアが行われています。
しかし、子どものメンタルケアはおうちの方の理解と協力が不可欠です。保健室から生まれた子どもの心に寄り添い、ケアするコミュニケーションメソッドを渡邊先生が教えてくれます(全3回の3回目。#1、#2を読む)。
「子どもの心をきく」とはどういうこと?
本シリーズ第1回と第2回(#1、#2を読む)を通して、子どもが出している小さなサインを察知し、親と子どもの距離を縮めていく方法を「みる」という観点から理解を深めてきました。その地続きとして「きく」があります。
「子どもの気持ちを知るには、話を『きく』ことが大切です。当たり前のことだと思われますが、では、いつものきき方を振り返ってみてください。次のような会話をしていないでしょうか。
(1)別のことに気を取られながらきいている
(2)用事や時間に追われ、落ち着かない態度できいている
(3)リアクション薄くきいている
(4)子どもの話を遮って、別の話題を挟む
(5)早とちりや決めつけをしてしまう
(6)子どもの考えを否定する
現在の子育て世代は、いろいろなことに追われて忙しい日々を送っていますから、以上のシーンに心当たりのある方がいるのではないでしょうか。
シリーズ第1回目でもお話ししましたが、子どもには子どもの話したいと思うタイミングがあり、今しかありません。前述したような、大人の都合はできるだけ控えることが大切です。
また、『あなたの話をちゃんときいていますよ』『あなたと向き合っていますよ』というメッセージも込めることが重要です。
『きく』には3つの種類がありますが、そのうちの『聴く』と『訊く』が重要になってくるでしょう」(渡邊先生)
3つの「きく」にはこんな違いがある
渡邊先生がいう「きく」には3つの種類があります。それぞれの意味をまずは知っておきましょう。
プロセス1)無意識に耳に入る「聞く」
これは無意識に耳に入ってくることを意味します。駅のアナウンスや周囲の話し声などがそれにあたるでしょう。
自然に入ってくる情報ですが、時にはその中に聞き逃せないことが含まれています。子どもがポツリといった言葉が気になったら、プロセス2の「聴く」に自然に意識は動いていくでしょう。
プロセス2)意識してきく「聴く」
「聴く」は、相手の話を意識してわかろうとする行為です。「傾聴」ともいいます。傾聴するには急に核心に触れるのではなく、段階が必要です。
まずは、子どもに「どうしたの?」と声をかけてみたり、「お話しするって難しいよね」、体に痛みがあるなら「痛いよね」など共感したりする言葉と態度を示すといいでしょう。その上で、次の3つのポイントを押さえながら聴いていきます。
(1) 相手を尊重する
子どもの気持ちを汲み取るように聴きます。子どもには子どもの理屈がありますから、それを尊重しながら「あなたの話をちゃんと聴いていますよ」という姿勢を示してあげてください。
「◯◯ちゃんは、こう思ったんだね」「◯◯ちゃんにはそんなことがあったから、つらかったんだ」など、子どもを主語にした言葉をかけてあげるといいでしょう。親側が子どもの気持ちを汲んだ態度を取ると、子どもは自分のもっと深い部分を理解してもらおうと話し出します。
(2) 集中して聴く
子どもの話には集中してください。スマホやテレビをチェックしたり、意識が別のところに向いていたりするのはNGです。
(3) いったんすべてを肯定する
心に不安を抱えている子どもは、おそるおそる口を開くことが少なくありません。こんなことをいったら𠮟られてしまうのではないか、と気に病んでいることもあります。
従って子どもが語り出したら、親は口を挟まず、ただただ受け入れてあげることが大切です。傾聴の最終目標は子どもの中に溜まっているモヤモヤした気持ちを吐き出すことなので、感情や言葉は無条件で受け取ってください。
気持ちを吐き出すときに子どもから暴言や乱暴な言葉が出ても、話の途中で親側の意見をいうことと、評価はしないでください。ここで大人の価値観を押し付けてしまうと、せっかく開きかけた子どもの心が閉じてしまうこともあります。
子どもの感情がいったん出たら、「もう少し話を聴かせてくれる?」と加えて、さらに話を聴いていくといいでしょう。