「きょうだい児」の弁護士が教える“選択の自由“とは? 「障がいのある子もその兄弟姉妹も好きに生き親は自身を幸せに」
弁護士・藤木和子先生が教える“きょうだい児”の見守り方 #3 きょうだい児を幸せに育てる心得
2024.09.05
弁護士:藤木 和子
藤木和子先生(以下、藤木先生) きょうだい会(きょうだい児当事者が集い語らう会)に初めて参加したとき、「きょうだいの問題は、家族の問題だよね」と言っている方がいたのが印象的でした。
障がいのある兄弟姉妹との関係より、まず親との関係がどうあるか。「障がいのある兄弟姉妹がいてよかった」の前に、そもそも「この家族でよかった」と思えるかどうかが大事だという意味です。
障がいのある子どもがいると、たしかに親は大変です。ただその中で、親自身が人生を楽しんでいたり、困ったときに周りの人や福祉の支援に頼ったり、そうした姿をぜひきょうだい児に見せていただきたいです。
親ももちろん完璧ではないので、いいモデルとなる部分もあれば、反面教師になる部分もあって当然です。それでも「幸せな家族を作りたい」という姿勢は、必ずきょうだい児に伝わります。
そのうえで、障がいのある兄弟姉妹がいるからこその学び、成長を得られたらいいなと思います。
例えば、きょうだい児からは「障がいのある兄弟姉妹がいたからこそ知ることのできた世界があり、自分のプラスになった」「人間について深く考えられるようになった」「社会問題に関心が持てた」などの声を聞きます。
私も聴覚障害の弟がいたことで手話通訳の仕事の世界に入り、やりがいを感じることができました。
「よい人たちと知り合えた」「家族の心がまとまった」というきょうだい児は、おそらく相談できる相手や理解者がいたのでしょう。中には「よかったことはない」「わからない」というきょうだい児ももちろんいて、無理してプラス面を探す必要はないと思います。
きょうだい児自身の中から、いずれ自然と「よかった」と思えることが湧き上がってくればよいのではないでしょうか。
──先生が見聞きした、きょうだい児が親にしてもらって嬉しかったこととは何でしょうか。
藤木先生 親は障がいのある兄弟姉妹に時間も労力もかかるため、きょうだい児は「自分は大切にされていない」「どうでもいいんだ」と思いがちです。
実は、障がいのある子のほうが「自分は愛されている」と、積極的で前向きなお子さんが多いのではないかと、私個人は感じるときがあります。
そうした寂しさを抱える中で、親から「あなたのことが大事だよ」「大好きだよ」と言われて育ったきょうだい児たちは、「言葉や態度でしっかりと愛情を伝えてもらって嬉しかった」と言います。
成長して進路や就職、結婚などの選択に迫られたときも、きょうだい児の気持ちに寄り添い、理解し味方になってくれた親とはやはり良好な関係です。
親御さんに心の余裕がないとなかなか難しいですが、障がいのある子もきょうだい児もできるだけ平等に。親子で向き合い何でも話せる関係性が理想だと思います。
また、特に小さいうちは、障がいの種類や程度にもよりますが、きょうだい児は生活体験が狭くなる傾向にあります。
ときどきは障がいのある子を預けて、親ときょうだい児だけで過ごす時間もきょうだい児には嬉しいものです。動物園や遊園地はもちろん、近所のスーパーやファミレスでもいいと思います。
障がいのある子にとっても、将来的に家族以外の社会との関わりは非常に重要です。自治体に相談して、ガイドヘルパーやショートステイなどの福祉事業者を積極的に活用していただきたいです。