いじめ漫画が炎上! 世間の話題に上っても、息子の体験を書き続けて伝えたかったこととは?

いじめ漫画が炎上するワケ 親としていじめどうする?#3

神経症の夫から子どもたちの成長過程を描き続ける漫画家大原由軌子さん。 提供:大原由軌子
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息子がいじめの加害者になり、当時の様子を記録として残してきた漫画家の大原由軌子さん。本来ならこういったセンシティブな内容は、公表するのを避けたいものです。

しかし、大原さんは「誰かの役に立てるなら」と事実と真正面から向き合い、2020年11月に漫画「息子がいじめの加害者に? 大原さんちの大ピンチ」を出版しました。

テレビ「世界一受けたい授業」では教材として取り上げられ、読者のコメントでは賛否両論が巻き起こったほどです。

連載最終回は、炎上しても伝えたかったこと、最終的に「Sくんのいじめ問題」にどんな終止符が打たれたのかなどを聞いていきます(全3回の3回目、#1#2を読む)。

◆大原 由軌子(おおはら ゆきこ)
漫画家・イラストレーター。長崎県佐世保市出身。2005年にパニック障害+神経症を持つ夫との生活を描いた『大原さんちのダンナさん』でデビュー。夫や2人の息子たちのことをエッセイ漫画で執筆。

子ども同士が仲直りできたらゴール

第2回では、いじめの加害者として、親子でスクールカウンセリングを受けた大原家(#2を読む)。

息子タケは第三者に自分の思いを話したことで気持ちの整理がつき、自分の行動を反省することができました。いじめ問題についても解決を望み、Sくん家の要求に素直に応じもしています。

しかし、現実はなかなかスムーズにはいきませんでした。

漫画の後半では、「Sくんの母親にすっかり怯えるタケの様子」や「話し合いに応じなくなったSくんの母親と、学校側とのやりとり」などが細かく描かれてあります。

最後はどのようにして、いじめ問題を解決したのでしょうか。

「ある日、学校でSくんのほうから話しかけてくれるようになったといいます。

提供:大原由軌子

仲直りをしてお互いにまた遊ぶ関係に戻って、心底ホッとしたことを覚えています。ただその半面、残念ながら親同士の関係性は解決ができませんでした。

Sくんのお父さんはお仕事の都合で、学校での話し合いの席に出られることが不可能でした。さらに途中からはお母さんではなくてお祖父さまが登場し、親同士のきちんとした話し合いができなくなっていました。

私たち夫婦は最後まで話し合いたいとは思いましたが、子どもたちの中で解決できたのならこれ以上、大人が深追いすることはないと考え、いったんこの件は解決したとみなしました」(大原さん)

子育てをする親同士、Sくんの母親と同じ方向を向いて解決できなかったことに大原さんは無念さをにじませました。

「いじめ問題で必要なことは短期間で解決すること。親が知ったところで即行動に移すことが大切だと思います。

私たちが思うより、子どもは繊細で複雑な心を持っています。大人の事情で問題を長引かせてしまうことは避けなければならなかったと反省しています」(大原さん)

しかし、6年生では担任の先生も変わりSくんともクラスが分かれました。クラスの雰囲気がガラッと変わったことで、落ち着いた最終学年を過ごせたそうです。

Sくんはその後、小学校卒業と同時に佐世保市から引っ越しをして離れていきました。

しかし、大原家の中では子どもの問題を夫も交えて家族で話し合い、悩みながらも前に進めた部分は大きかったといいます。

お母さんをひとりにしないで

「我が家は夫と私は自営業で、子どもからゆっくり話を聞く時間が取れました。私たちのやり方が全部正しいとはいえませんが、うまくバランスが取れていたと思います。

私は感情的でしたが、夫はいつも落ち着いていました。冷静に意見を述べたり、客観的に捉えていたりする様子に『よく耐えられるな』と思いましたが、夫なりに家族を守ってくれました。

提供:大原由軌子

でも、世間ではお母さんだけが子どもの問題に立ち向かって解決しなければならないご家庭がまだまだ多いはずです。

子育てはどうしても母親寄りになってしまいがちですが、お母さん一人で頑張らないでほしいです。子育ては誰か一人が担うものではなく、複数の大人が関わっていいと考えます」(大原さん)

また、「もし我が子に問題が起きたら、積極的に地域や相談機関を頼ることで、一家としての孤立を避けることができる」と自身の経験も語ってくれました。

タケは中学校へ入学しても、学校生活ではいろいろな壁にぶつかることがありました。小学校と違い、思春期は親子の関係性が変化する時期です。

「成長過程で何かしら起きることは仕方ない」と大原さんは覚悟していましたが、タケは担任や父親の知人に相談するなど家族とは別の大人に相談します。自分の問題を誰に話すかを選択し、乗り越えるようになりました。

「たとえ、相談したことが自分たちの求めている答えではなかったとしても、諦めずに親身に寄り添ってくれる場所を探すことが大切です」(大原さん)

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