子どもの自信が目覚める「クリティカル・シンキング力」 親と子どもの会話で思考力と洞察力がアップする理由
子どもの考える力と伝える力を育む「クリティカル・シンキング」 #3
2025.01.24
子どもの言葉を引き出す魔法のツール「気持ちの体温計」
クリティカル・シンキングの力は対話で育みます。子どものどんな話も『へ~』と丸ごと受けとめたあとに、話している内容を発展させるのが原則です。
しかし、親が話しかけても、言葉がうまく出てこなかったり、自分の気持ちや意見を言語化するのをためらう子どももいます。その場合、言葉を引き出すには、どのような方法があるのでしょうか。
「『気持ちの体温計』を作って、言葉を引き出してあげる、あるいは自分の気持ちや意見を伝えることは悪いことではないことを教えてあげるといいでしょう。
クリティカル・シンキングは、自分の考えを言語化できるようになる小学校2年生あたりから本格的にできるようになりますが、小学校1年生や未就学児の段階からチャレンジする場合は、気持ちの体温計が、子どもが心に思っていること、考えていることを話すきっかけを与えてくれます。
また、年齢が上がった子どもでも、言語化が不得意だったり、言葉を飲み込んでしまった場面でとても有効です。
気持ちの体温計は、ちょっと厚めの紙、たとえばお菓子の空き箱や段ボールなどを使って作ることができますから、子どもと一緒に工作してみるといいですね」(狩野先生)
気持ちの体温計の使い方とは?
「我が家では、娘が小学生、息子が園児のときに作って、そこからしばらく息子が使っていました。たとえば、きょうだいゲンカをした際に口論で負けた息子が拗ねたり、何かをいいたいのに押し殺している場面で登場していましたね。使い方としては、次のとおりです。
『本物の体温計で熱を測ったとき、38.5度とか高い数字が出ても仕方ないことだよね? じゃあさ、気持ちの体温計で今の気持ちを測ってみて。どんな結果が出てもお母さん怒らないから、結果(いいたかったこと)を教えてくれる?』という具合です。
そうすると息子は、きょうだいゲンカそのものではなく、仲裁に入った私に対して不満を持っていて、『さっきお母さんが、お姉ちゃんのほうが正しいみたいなことをいったのがすごく嫌だった』と打ち明けてくれたんです。
このとき、母親の私としては大ショックな部分もあったのですが、息子が思っていたことを言葉にしてくれたのと、私に伝えてくれたことに対して、『よくいった! 伝えるのは勇気が要ったでしょう!』と褒めたことがありました。
子どもは、言語化することは大人が褒めてくれることなんだと思うと、次第に言葉を伝えてくれるようになります」(狩野先生)
子どもから返答がないと、親は苛立ったり、「何でもいいからいってみて!」と急かしたりしますが、それは逆効果。気持ちの体温計を使って、言葉を少しずつ子どもから引き出してあげるといいでしょう。