子どもの自信が目覚める「クリティカル・シンキング力」 親と子どもの会話で思考力と洞察力がアップする理由
子どもの考える力と伝える力を育む「クリティカル・シンキング」 #3
2025.01.24
クリティカル・シンキング力をつけると子どもが相談相手に!
親御さんが子どもとの対話を繰り返し、子どもの考える力と伝える力が育っていくと、いつしか我が子が相談相手にもなっていきます。それを先生は「親が得られる最大のボーナス」だといいます。
「『考える力』に関する大きな講演を控えて行き詰まっていたとき、当時小学校2年生だった娘に『考えることって、なんでいいことなんだろう?』とフイに聞いてみたんです。
そうしたら『だって自信になるでしょ!』と間髪入れずに返答がありました。そこで私が『へ~、それってなんで自信になるの?』と反応してみたら……。
娘は、娘なりの言葉で『だって、自分がこんなにも考えられているって思えるでしょ。それって自信になるよね。自分の意見を大事に思えるし、そんな大事な意見が自分にあるってことは、友だちにも大事な意見があるってことで、私にはそれがわかるよ』というんです。娘の回答に、もう脱帽でしたね」(狩野先生)
このほかにも、先生は息子さんにも相談に乗ってもらったことがあります。
「息子が小学校3年生のときだったでしょうか。娘が思春期に入ってきて扱いが難しくなってきたときに、息子に『ねぇ、お母さん困っているんだけど。お姉ちゃんはなんであんなこというんだと思う?』と助けを求めたんです。
すると『俺はさ~』といって、弟だからこそ見えていることを教えてくれました。私は、息子が自分の意見を言葉にして伝えてくれたことに、心から感謝をしたのを覚えています」(狩野先生)
親から頼られると子どもはうれしさを感じるものです。自分の意見がお母さん(お父さん)を助けていると感じると、さらに自分の考えを伝えることに自信をつけていくことでしょう。
クリティカル・シンキングを実践中にうまくいかないと感じたときは……
家庭でクリティカル・シンキングを実践中、親御さん自身がうまくできないと感じたときの対処法についても狩野先生は教えてくれました。
「まず、実践中にうまくいかないと感じたときは、うまくできないご自分を追い込まないでください。そして、子どもに考える力、伝える力をつけたいという気持ちを持つのをいったんやめましょう。
スキルを育てようという意識を手放して、純粋に子どもの意見を聞きたいな、子どもってどんなことを考えているんだろうと好奇心を持って耳を傾けてみてください。
子どもは、お母さんやお父さんとは違う考えを持って生きています。学校に通っている時点で、親とは違った経験を積み重ねていろいろ考え、親御さんとは違った視点を持っています。それはきっと興味深いはずです。
純粋に親子の対話を楽しんでみると、次第に問題はなくなっていくでしょう」(狩野先生)
狩野先生によると、純粋に子どもとの対話を楽しむと、そんなバカなことを考えていたんだ……と、がく然としたり、笑うしかない場面もあるそう。しかし、経験も知識も語彙も少ないからこそ、ストレートに伝えてくれたことに感心したり、救われたりすることもあると話します。
子ども時代は、いいたいことを主張できる環境が重要であり、自分の頭で主体的に物事を考え、自分で考えたことを慎重に判断し、しっかりと伝える力であるクリティカル・シンキングを育める大切な期間です。
親子のコミュニケーションで育てられるので、今日から子どもの話を丸ごと受けとめることから始めてみてはいかがでしょうか。
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◆狩野 みき(かの みき)
「自分で考える力」イニシアティブ、THINK-AID主宰。
聖心女子学院初・中等科に学び、中学高校時代をドイツのブリティッシュ・スクールにて過ごす。慶應義塾大学法学部卒、慶應義塾大学大学院博士課程修了(英文学)。30年大学等で「考える力・伝える力」と英語を教える。慶應義塾大学、東京藝術大学、ビジネス・ブレークスルー大学講師、子どもの考える力教育推進委員会の代表も務める。著書に『世界のエリートが学んできた「自分で考える力」の授業』『世界のエリートが学んできた 自分の考えを「伝える力」の授業』(ともに日本実業出版社)、『「自分で考える力」が育つ 親子の対話術』(朝日新聞出版)などがある。2012年、TEDxTokyo Teachersにて、日本の子どもたちにもっと考える力を、という趣旨のTEDトーク“It’s Thinking Time”(英文)を披露し好評を博した。2児の母。2025年2月、小学生対象のクリティカル・シンキングのプログラムが15周年を迎える。
小学生対象のクリティカル・シンキングのプログラム詳細はこちら!
取材・文/梶原知恵
【子どもの考える力と伝える力を育む「クリティカル・シンキング」】の連載は、全3回。
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梶原 知恵
大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。
大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。