発達が気になる子ども向け「保育園留学」 療育プログラムを体験した親子の詳細報告[北海道小樽市]
『保育園留学』体験記#2 保育園留学プログラムの内容&現地での生活編
2024.04.26
ライター:永見 薫
いよいよ5日間のプログラムが開始
翌日朝9時。迎えの車が家の前に到着します。送迎車には他のお友達も乗っており、スタッフの方がそれぞれの家にお迎えに行き、一斉に施設に連れていくというスタイルです。
息子は滞在先の発達支援事業所「きっずてらす」のスタッフと共に、療育施設に出発! ここで11時半までの間、療育のプログラムを受けます。
泣くこともなく、怖がることもなくすんなりお別れ。日頃から療育教室に通っているからか、人見知りはすっかりなくなっているようで、一安心です。
今回お世話になった「きっずてらす」は、JR「小樽築港」駅に直結した大型ショッピングセンター「ウイングベイ小樽」の中にテナントの一つとしてあります。
ショッピングセンターの中には、スーパーイオンやホームセンター、飲食店やアミューズメントパーク、ホテルまで備わる充実ぶり。端から端まで歩くのに気が遠くなるほどの広さです。
ここ小樽築港エリアはまさに市民の生活エリア。「ウイングベイ小樽」にも多くの地元の人たちが訪れていました。
私たちは全てを持って道中を移動しましたが、宿には事前に荷物を送ることもできます。重い荷物を無理して運ばなくてもよいのがありがたいですね。
「きっずてらす」の一角は3つの施設を設けており、幼児用スペース、小学生用スペース、中高生用の就業を見据えた支援スペースがあります。広さや器具の備わり具合も、都内と比べると圧倒的なボリューム。
特に私が今回保育園留学への参加を決めたポイントは、粗大運動(歩く・走る・座る・立つなどの身体を大きく使った動作)用の器具が備わっていて、感覚統合のトレーニングができることでした。
首都圏ではなかなかこのレベルの器具を扱う事業所がなく、もちろん療育プログラムで支援を受けているものの、遊びの中で自然に取り入れるには少々難しさを感じていました。その点「きっずてらす」にはゆったりとしたスペースと豊富な器具が揃っており、子どもが感じていた粗大運動に対する躊躇心も和らいでいっているように感じられました。
施設内には作業療法士や言語聴覚士など、専門的な知識を持った職員さんが在籍しています。彼らは決して子どもたちをしかることはせず、見守りそして、「できる!」と褒めて伸ばす方針で接します。
運動・卓上学習とバランスの良いプログラム
2時間のプログラムでは挨拶・体操・運動・卓上学習を行います。
息子は、見通しがつかないことに理解を示せないことや、不安を抱くことがあるため、その日にやることをスタッフさんが事前にホワイトボードに提示。おかげで安心して取り組んでいました。
後日聞いた話だと、初めての場所にも戸惑うことなく、できないことや難しいことは「先生できません」としっかり伝えられていた様子。できることは自分で行い、難しいことは療育のスタッフさんにサポートしてもらいます。
運動は、5日間を通して、主にしっぽ取りやフルーツバスケットのような集団活動のほか、COSMOという療育専門の道具を用いて、光るパッドを追いかける運動や、宝探しゲームなど、動体視力と行動力を鍛える運動をしました。
遊びの感覚でできるので、楽しんで取り組むことができ、「赤! みどり!」などと声に出しながら光るパッドを追いかける息子。必死に追いかけながら「もっとやりたい」「次はこうするんだ」と、気持ちの表現も積極的にしていたようです。
「いいね! やってみよう」とポジティブな声掛けをしてもらえると、息子も「できるかも!」という自信がわいてきたようで、苦手なことでも、ゆっくり挑戦していたと聞きました。普段は体を動かすことに躊躇する姿勢を見せるため、その変化に驚きをかくせませんでした。
机上の活動では5W1Hの確認や、助詞の使い方の確認、物の使い方の理解を確認するほか、2つの名詞の共通点を見つけるというワークも行いました。このあたりは日頃通っている言語療育のクラスの取り組みと同じだったので、難なく取り組めていたようです。
11時半以降は、ショッピングセンターを後にして、すぐ向かいにある済生会小樽病院の院内にある保育所「なでしこキッズクラブ」へ移動します。宅配で届くお弁当を食べてからは、午後の活動の時間です。
年少から年長まで20~30人ほどの子どもが通っているので、とても賑やか。同じ年長の園児がいたため、「一緒に遊ぼう」と声を掛け合い、楽しく遊んだり、おしゃべりをしていたようです。
親の私たちは息子の活動中付き添いしていないため、様子を見ることができません。5日間の活動の様子は「HUG」と呼ばれる連絡帳システムを介して、記録や職員からのフィードバックを受け取っていました。
子どもの様子や、一挙一動がきめ細やかにレポートされておりとっても安心。また、子どもの課題点や、さらに伸ばすと良い点などもレポートされていたので、帰宅後の療育にも活かせそうだと感じました。
親はリモートワークに励む
では息子を預けている間、私たち親はどうしていたかというと……。仕事です! 夫も私もこのときあまりスケジュールに余裕がなく、余白を設けた日もありましたが、思ったよりしっかりと仕事をしていました。
ところが思わぬハプニングが。
宿のWi‐Fi環境ではパワー不足だったようで、思うように仕事ができないということがわかりました。とはいえ、電波をそこまで必要としない仕事の私は、ある環境でやりくりしながら、原稿の執筆に明け暮れる毎日。
一方の夫は、職業柄Wi‐Fiのパワーが不足していると仕事が成り立たないため、近所で電源と電波を求めてさまようことに……。最終的には歩いて20分ほどの場所にあるカフェへ通勤をすることになってしまいました。(現在は宿泊施設のWi-Fiルーターの交換が完了して、通信環境が改善されたそうです)
Wi‐Fi事情や周辺のコワーキングスペース事情も、現地に行ってみないとわからないこと。フルスロットルで仕事をする気満々で挑むと出鼻を挫かれることがあるかもしれません。
こういう事態に備えて、滞在するときの仕事量はセーブして挑むべきなのかもしれない、というのが私たちの反省点です。
ハプニングを楽しむことが移住体験
暮らしにはハプニングがつきものです。雪のある暮らしは思いのほか徒歩移動に時間がかかり、自分が想定していたよりも所要時間が倍かかります。私も時折カフェへ移動し仕事をしていましたが、移動はいつもよりも時間がかかります。歩くのにも必要以上に体力を奪われるのです。
子どもの登園時は送迎がありますが、帰りは迎えのため自力で行かなくてはなりません。ところがおよそ2.5キロほど離れた距離。歩くと30分~40分はかかります。
当初はバスに乗って迎えに行こうと想定しており、マップを調べながらバス停に到着。しかし待てど暮らせどバスは一向に来ない……。なぜだろう?と調べてみるとどうやら冬季減便により、半数以上が欠便になっていたことがわかり慌てふためいたことも。
ならばタクシーだ! と思っても、そんなに簡単にはつかまりません。観光地ではタクシーがつかまっても、「きっずてらす」のある、いわゆる生活エリアではタクシーの需要がないため、そもそもタクシーが迎えにきてくれないのです。これには驚きました。
こんなことも生活をしてみたからこそ初めてわかったこと。毎日が次々とハプニングの連続です。でも知らない街に来ているのですから、当然です。
これを楽しめるか、そうではないか。これは観光で訪れているか、生活をしにきているかの気持ちで受け取り方は大きく変わるように思います。一つひとつのトラブルもゲームをクリアするように楽しめたら、きっと受け止め方はずいぶん変わるのではないでしょうか。
大人も子どももこうして毎日がっちりと暮らしを営んでいましたが、そこはやはり息切れしてくるときも……。次回は息抜きで観光もしたよ! というお話もしていきますね。
【日本初の「発達が気になる子ども向け『保育園留学』プログラム」体験レポート、第1回では「準備・出発・到着まで」、第2回となる今回は「保育園留学と療育の実体験と現地での過ごし方」についてレポートしました。最後となる第3回では、「『保育園留学』プログラム参加で得られたもの・良い変化」についてお伝えします】
「発達が気になる子ども向け『保育園留学』プログラム」体験レポ
#1 事前準備はどれくらい? 準備・出発・到着編
#2 北海道小樽市での『保育園留学』と療育の実体験(⇦今回はココ)
#3『保育園留学』プログラムに参加して得られた良い変化とは?(5月中旬公開予定)
永見 薫
複数の企業勤務後、フリーライターへ。地域や街、暮らしや子育て、働き方など「居場所」をテーマ に、インタビューやコラムを執筆しています。 東京都の郊外で夫と子どもと3人でのんびり暮らす。知らない街をおさんぽしながら、本屋を訪れる休日が好き。 X:https://twitter.com/kao_ngm note:https://note.com/kaoru_ngm
複数の企業勤務後、フリーライターへ。地域や街、暮らしや子育て、働き方など「居場所」をテーマ に、インタビューやコラムを執筆しています。 東京都の郊外で夫と子どもと3人でのんびり暮らす。知らない街をおさんぽしながら、本屋を訪れる休日が好き。 X:https://twitter.com/kao_ngm note:https://note.com/kaoru_ngm