障害児キッズモデル業の理想と現実 ためらう企業と起用する企業それぞれの事情
障害児キッズモデル事務所「華ひらく」代表 内木美樹さんインタビュー#2 ~起業1年で見えてきた壁~
2022.08.13
障害児キッズモデル事務所「華ひらく」代表:内木 美樹
障害児(8)の母、内木美樹(うちき・みき)さん(39)が代表を務める障害児キッズモデル事務所「華ひらく」。SDGsの理念「誰1人取り残さない」とも合致した事業で、注目が集まっています。
2021年の起業から1年が経ち、見えてきたのは世間の批判を恐れる大手企業の現実でした。一方、内木さんの想いに共感し、モデルを起用する企業との出会いもありました。
1年間の活動で見えた障害者をめぐる社会の光と影について、内木さんに話を伺いました。
※第2回(#1、#3を読む)
記事の最後に、障害児キッズモデルたちがふるって参加した写真コンテストも紹介します。
コロナ禍で生まれた「障害児モデル」
内木美樹(うちき・みき)さん(39)が障害児キッズモデル事務所「華ひらく」の事業を始めたのは、2021年7月。コロナ禍が大きなきっかけになりました。
内木さんは20代前半、米国のカジノホテルで働いた経験を生かし、尊(たける)くんを出産する前に、飲食店向けの接客英語レッスン事業の会社「華ひらく」を起業していました。
ところが長引くコロナ禍で仕事は全面的にストップ。東京五輪後の見通しも立たず、新しい事業を模索しているところで浮かんだアイデアが「障害児のキッズモデル事業」でした。
その背景には、自閉症と重度の知的障害を持つ長男、尊くん(8)の子育てを通して感じた“ガラスの壁”の存在がありました。なかなか障害者への理解が進まない日本社会へのもどかしさがあったそうです。
「パラリンピックで障害者への理解はとても広がりましたが、選手のほとんどは身体障害者なんです。知的障害者や精神障害者への理解はまだまだです。
障害者にスポットを当てた“お涙ちょうだい番組”を作ってほしいのではなく、もっとポップに気軽に興味を持ってもらいたい。もっと親近感を持ってもらいたいと考え、モデル事業にたどり着きました」
障害児が商品のポスターやCMのモデルになることが、障害を“知る”ことへのきっかけになればと内木さんは考えます。
「カナダやオランダに住む友人からは、『障害者がモデルをするって、自分の国では当たり前になってるよ』と聞いています。日本はまだこれからです。
障害児がモデルとして出ることで、ダウン症ってなに? 知的障害ってどんなこと? と理解しようとするステップにつながると思いました」(内木さん)
SDGsに積極的な大手企業もモデル起用には難色
障害児のキッズモデル事業は、「誰1人取り残さない」というSDGsの理念とも合致します。
事業開始から2022年7月でちょうど1年。モデルの応募は約100人以上と予想を上回る反響ですが、企業側の反応は甘くありません。
SDGsに積極的なイメージを打ち出している複数の大手企業に話を持ち掛けましたが、軒並み難色を示したそうです。「前例がない」「クレームを避けたい」と守りに入るように内木さんは感じたと言います。
「はじめから分かっていたことでした。でも、なかなか厳しいのが現実です。これまでSDGsに力を入れているいくつもの大手企業でプレゼンしましたが、“障害児モデルを起用したら、好感度を上げようとしていると思われるので難しい”と断られました」(内木さん)