禅僧が教える 「禅」で子どもの「自分で考える力」が伸びる理由とは

【特別対談】 禅僧・大愚元勝 × 教育ライター・佐藤智

撮影:講談社児童図書出版部
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子どもたちの「自ら学ぶ意欲」を「禅」の教えが高める、と言われています。

子どもたちが「禅」を学ぶことにどんな意味があるのか? 禅寺の住職を務めながらYouTubeをはじめとした各種メディアで積極的に活動する異色の禅僧が大愚元勝(たいぐ げんしょう)さんです。

『1日3分でしなやかな心が育つ 禅のことば』を刊行したばかりの大愚さんと、教育ライターとして数多くの保護者、教育関係者に取材を行ってきた佐藤智(さとう・とも)さんが、子どもの可能性を引き出すための親子関係などについて、意見を取り交わしました。

教育熱心な親ほど陥るワナ

佐藤智さん(以下、佐藤さん):
いま、中学受験をする小学生が都市部を中心に増えてきています。首都圏模試センターの調査によると、2023年度の中学受験をする小学生の数は5万2,600人。これは9年の連続で増加となりました

私はいろいろなご家庭や教育関係の方のお話を聞く機会が多いのですが、たとえば「うちの子は中学に入ると内申点がとれなくなるかもしれないから、小学生のうちに中高一貫の学校に入れさせたい」と考えている親御さんも多い印象です。

また、まわりに中学受験をする子どもが多いからこそ、「うちだけ中学受験させないのは、教育の機会を子どもから奪っている気がする」という焦燥感から、中学受験をするご家庭も少なくありません。大愚さんはいろいろな方からお悩み相談を受けていますが、子どもの進学問題についての相談も多いのでしょうか。

大愚元勝さん(以下、大愚さん):
ありますね。いま回答待ち状態になっているお悩みの3分の1くらいは親子関係、子育て関係のものです。

私は1972年生まれで、ちょうど第二次ベビーブーム世代なんです。当時も受験競争が加熱していた時代で、たとえば大学受験なら10校くらい受験するのが当たり前でした。そうした受験競争が加熱する背景にあるのは「いい学校に行かなければいい人生が送れない」という強迫観念が根底にあるんでしょうね。

佐藤さん:
各家庭によって理由はさまざまですが、悩みを持つ根本的な理由のひとつには「他者との比較」がありますよね。ほかの親御さんの教育方針と、自分たちの教育方針を比べてしまう、あるいはほかの子どもの成績と我が子の成績を比べてしまう……といったことです。

大愚さんがこのたび監修された『1日3分でしなやかな心が育つ 禅のことば』のなかに出てくる「花枝自短長(かしおのずからたんちょう)」という禅語を見て、まさにこれだと感じました。

撮影:講談社児童図書出版部

大愚さん:
この言葉は、同じ木から伸びている無数の枝のなかには短いものもあれば長いものもあるけれど、すべてが長く伸びればいいわけではない……という意味を持っています。

一つひとつの枝は、長さはもちろんのこと、葉のつき方や曲がり方、太さなどが違います。そのようにいろいろな枝が組み合わさっているからこそ、木全体が美しく見えるということです。

佐藤さん:
受験勉強だと、子どもは「偏差値」というひとつの基準で判断されてしまいます。ただ、勉強が好きで得意な子もいれば、そうでない子もいます。

でも、勉強が得意ではない子も、絵を描くのが好きだとか、歌を歌うのが好きだとか、あるいはスポーツに打ち込んでいたり、それぞれに長所や得意なことがあります。そういったところを伸ばしてあげる機会が必要ですよね。

大愚さん:
そうですね。お子さんのことでご相談くださる親御さんは教育熱心な方が多いので、情報を積極的に集めています。「これからの社会はこうなるだろうから、こういう能力が求められる」といったことにくわしいです。

そういう情報収集も大事ですが、私が危惧するのは、外ばかりに目を向けていて、肝心の自分の子どもに目がいかなくなるケースも少なくないのではないか、ということです。子どもの興味関心をないがしろにして、ただ将来が不安だから受験をさせるということが、子どもの幸福につながるのかは疑問ですね。

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