ママパパ、子どもが気になるであろう毛のあれこれについて、専門家が解説するシリーズ「毛の問題」。第1回は出産したママが直面する抜け毛「産後脱毛症」について。毛が抜ける原因や予防策とは?
体操元日本代表の田中理恵さんやタレントの小倉優子さんをはじめ、多くの有名人ママたちも悩んだという産後脱毛症。一体何が原因なのでしょうか。抜け毛を防ぐことはできるのでしょうか。
産婦人科医で、女性の体や美容にも詳しい富坂美織(とみさか・みおり)先生にお話を伺います。
※全2回の前編
富坂美織(とみさか・みおり)
産婦人科医、医学博士。順天堂大学医学部卒業、東京大学医学部研修医、愛育病院産婦人科医を経て、ハーバード大学大学院へ留学。卒業後は、マッキンゼーにてコンサルティング業務に携わる。現在は不妊治療が専門で「さくらウィメンズクリニック」に勤務するほか、順天堂大学医学部産婦人科教室非常勤講師を務め、テレビや雑誌などの幅広いメディアでも活躍。
産後ママの67%が抜け毛に悩んでいる
2021年、妊娠出産・育児の情報サイトが行ったアンケート調査(※1)によると、724人のうち484人、実に約67%のママが「出産後に抜け毛が多くなった」と回答しました。
抜け毛が気になり出した時期は「産後3ヵ月」との回答がもっとも多く、次いで「産後1ヵ月未満」という結果に。産後3ヵ月までの間に、抜け毛が気になり始めたママが多いようです。
また、複数回答可で抜け毛が気になっていた時期を聞くと「産後3ヵ月」がもっとも多く、以降はゆるやかに減少していくものの、中には「産後12ヵ月以上」と答えたママも。程度の差はあれど、多くのママが抜け毛に悩んでいたことがわかります。
抜け毛は産後のママにとって「想定外」
富坂美織先生(以下、富坂先生) 産後の抜け毛は「産後脱毛症」、あるいは医学的に「分娩後脱毛症」と呼ばれ、出産後、急激に脱毛が起こることをいいます。
クリニックの外来でも「髪をとかしていたら、ブラシに抜け毛の塊がごっそり付いた」「お風呂の排水溝を見たら、もずくのように抜け毛が固まっていた」といった相談がよくあります。
私のクリニックは不妊治療が中心で、出産して次のお子さんを考え始めているママや、市や区の子宮がん検診のついでに受診される方が多いこともあり、産後6ヵ月から8ヵ月ぐらいで相談に来られるママが多い印象です。
妊娠中、女性ホルモンの影響で脇やデリケートゾーンなどに色素沈着が起こりやすいことは意外と知られているのですが、産後の抜け毛は想定外で、経験して初めて知る方がほとんどかもしれません。
「このまま抜け続けるんじゃないか」「ハゲてしまうんじゃないか」と、不安感を持って相談される方が多いですね。
──筆者も出産経験者ですが、産後に髪が抜けるなんて知らず、枕についた大量の抜け毛にショックを受けた覚えがあります。抜け毛はいつ頃から始まり、いつ頃に終わるのでしょうか。
富坂先生 個人差がありますが、一般的には産後2~3ヵ月から気になり始めて、6ヵ月ぐらいまでにピークを迎え、産後1年程度で落ち着いてくるパターンが多いようです。
ただ、授乳している人、授乳を止めている人、ホルモン剤を使っている人など、ママによって状況が違いますので一概には言えません。1年ぐらいは様子を見ていただいてもいいのかなと思います。