専門医がママに教える「産後脱毛」対処法“セルフケアと受診“の目安

専門家が答える「毛の問題」#1‐2 ママの抜け毛【産後脱毛症】の対処法

産婦人科医、医学博士:富坂 美織

抜け毛のために食事や睡眠を見直すことは、髪や体だけでなく気持ちも健やかになり、子育てに前向きに取り組めるメリットも。  写真:アフロ
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あるデータでは、ママの約67%が経験したという産後の抜け毛。出産後は、赤ちゃんのお祝い行事や成長の記念に写真を撮ることも多く、「なるべく抜け毛をおさえたい」と願うママも多いはずです。

そこで「産後脱毛症」後編では、抜け毛が気になったときの対処法と医療機関の受診について、産婦人科医・富坂美織(とみさか・みおり)先生に解説していただきます。

※全2回の後編(前編を読む

富坂美織(とみさか・みおり)
産婦人科医、医学博士。順天堂大学医学部卒業、東京大学医学部研修医、愛育病院産婦人科医を経て、ハーバード大学大学院へ留学。卒業後は、マッキンゼーにてコンサルティング業務に携わる。現在は不妊治療が専門で「さくらウィメンズクリニック」に勤務するほか、順天堂大学医学部産婦人科教室非常勤講師を務め、テレビや雑誌などの幅広いメディアでも活躍。

ハーバード大大学院に留学中、日本人として初めてハーバード女性リーダーシッププログラムに選抜された異色のキャリアを持つ富坂先生。わかりやすい言葉で解説してくださいました。  Zoom取材にて

まずは「食生活」と「睡眠不足」の改善を

──産後の抜け毛が気になり始めたら、どのような対策をすればよいでしょうか。

富坂美織先生(以下、富坂先生) 食生活でいうと、たんぱく質、ビタミンB群、亜鉛といった、髪の成長に必要な栄養素をとることが大切だと思います。前編でお話しした「妊娠中にできる抜け毛の予防策」と同じですね。

たんぱく質は鶏肉や魚、大豆、ビタミンB群は緑黄色野菜、亜鉛は魚介類やレバー、ナッツ類、卵などに豊富に含まれています。たんぱく質は十分にとれていない方が意外と多いので、意識してとりたいところです。亜鉛は、手軽なサプリメントで摂取するのもよいと思います。

ビタミンB群のひとつ・葉酸も、サプリメントでとるのがおすすめです。葉酸はベビーの二分脊椎(にぶんせきつい※1)の予防になるため、産科医に勧められて妊活中・妊娠中にとる方も多いと思いますが、産後もしっかりとっておきたいですね。

反対に、避けたい食べ物は、いわゆるジャンクフードの類(たぐ)い。高カロリーで高脂質、高塩分の食品は、体の老化を促進します。髪や頭皮にも悪影響を及ぼしますので、控えたほうがいいでしょう。

そして、食生活と同じくらい大切なのが、睡眠。髪の成長や修復を促す成長ホルモンは、睡眠中に分泌されるため、髪は眠っている間に育ちます。育児をしながら睡眠時間を確保するのはなかなか大変ですが、しっかり休息をとりましょう。

産後のデリケートな頭皮に刺激は禁物

──シャンプーなどのヘアケアについては、いかがでしょうか。

富坂先生 いろいろな種類のシャンプーがありますが、できるだけ刺激が少ないものを使うのがよいと思います。妊娠中もそうですが、産後や授乳中は妊娠前と体質が変わっていることが多く、より強く刺激に反応してしまうことがあります。

今、ママとベビーが一緒に使える低刺激のシャンプーもたくさん出ていますよね。そういったものを使うと安心です。

産後脱毛用の育毛ローションを試してみるのもいいですね。女性ホルモンを補う成分が含まれたもの、頭皮を保湿する成分が含まれたものなど、育毛ローションは健やかな髪を育てるためのサポートをしてくれます。

洗髪後の清潔な頭皮につけて、頭皮をマッサージしながらなじませると、血行の促進も期待できます。抜け毛が気になり始める前、早いタイミングから使い始めてもいいかもしれません。

──では、避けたほうがいいことはありますか。

富坂先生 髪のボリュームが減ると、パーマでふわっとさせたくなる気持ちはよくわかるのですが、育毛の点でいうと、頭皮への強い刺激はNGです。

特に産後の頭皮はデリケートなので、パーマのほか、ヘアカラーや縮毛矯正も、以前より強く刺激に反応してしまうことがあるかもしれません。

ただ、慣れない育児でストレスも多い産後、気分的なものも大事ですよね。パーマやヘアカラーをしたほうが毎日を気持ちよく過ごせるのなら、美容師さんに相談してはいかがでしょうか。

最近では、医師とコラボしたヘアケア製品もあるようですし、頭皮の状態を見てもらい、頭皮環境がよくないようだったら、頭皮から離れたところからパーマやヘアカラーをする手もあります。

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