子どもの「スマホ依存・ゲーム依存・ネット依存」 公認心理師が「やりすぎ」と「依存」の境目を解説

公認心理師・スクールカウンセラーが語る 子どものスマホ依存 #1 スマホへの依存度を判断するためには?

公認心理師:中井 ようこ

LINEのグループ通話をずっとつなげたままにするコミュニケーションは、最近の子どもによくみられるスマホの使い方です。  写真(イメージ):アフロ

ゲームやSNSを簡単に楽しめるスマホ(スマートフォン)は、子どもが夢中になりやすいコミュニケーションツールの一つです。しかし、使い方によっては依存傾向が高まり、子どもの心身に大きな影響を与えることも。

そこで、スクールカウンセラーとして、コロナ禍で800件以上の相談を受けた、公認心理師・中井ようこさんに「子どものスマホ依存」について解説していただきました。

1回目では、子どものスマホ使用に悩む保護者に向けて、子どもがスマホ依存症なのかを見極めるポイントを教えていただきます。

(全3回の1回目)

公認心理師・中井ようこ
小学校の養護教諭として15年間勤務。退職後は、公認心理師の資格を取得し、スクールカウンセラーとして従事。コロナ禍では800件以上の相談を受けた。アドラー心理学の知識も活かし、子どもや保護者の気持ちに寄り添ったかかわりを大切にしている。

スマホ依存の症状とは?

近年、「スマホ依存」について耳にする機会が多くなりましたが、実は医学用語ではなく定義も定められていません。スマホ依存とよばれる症状を考える前に、まずは「依存症」という大きな概念を知っておきましょう。

依存症とは、特定の何かに心を奪われ「やめたくてもやめられない」状態になることです。特定の行為を繰り返す、より強い刺激を求める、いつも頭から離れないなどの特徴があります。

この定義をスマホ依存に置き換えると理解しやすいでしょう。
つまり、スマホ依存とは、スマホから得られるワクワクや快感に没頭するあまり、自分で自分をコントロールできなくなる状態といえます。

では、スマホ依存の症状にはどのようなものがあるのでしょうか。

ソウル聖母病院のキム・ダイジン教授のグループによって作成され、多くの言語に翻訳されている「スマートフォン依存スケール」では、スマホ依存の症状が10項目が挙げられています。

それぞれの項目について「全く違う」「違う」「どちらかというと、違う」「どちらかというと、その通り」「その通り」「全くその通り」の6段階で評価し、回答の合計点が31点以上の場合を「スマホ依存症の疑い」としています。

日常生活に良くない影響が出ていれば「依存」

スクリーニングテストをすると「うちの子にほとんど当てはまる……」とドキっとした方もいるかもしれません。

スマホの使い方で気になる様子があったら、まずは子どもと話しあってみましょう。本人に改善する様子が少しでもみられる場合は、しばらく見守っても良いでしょう。

たとえば、テスト前はスマホを見ないように我慢していたり、時間制限を守ったりするなど、子どもが努力してスマホと距離を置こうとしていたら、見逃さずに認めてあげてください。

しかし、本人がスマホを手放せずに日常生活に影響が出ているようであれば、依存症である可能性が高まります。

ここでは、小学校高学年の子どもを持つ保護者からの相談をご紹介します。この例を参考に、子どもの日常生活について一度振り返ってみましょう。

学校から帰宅すると、娘はすぐにスマホを手にとり、友達数人とのLINEグループ通話をはじめます。

食事の時間もスマホを側に置き、お風呂にも持ち込んで通話をしているんです。食事のときは通話を切りなさいと言っても「自分がいない間に、面白い会話がはじまるかもしれない」「悪口をいわれるかもしれない」と聞く耳を持ちません。

スマホを手放せないので、会話をしたままベッドで寝てしまうこともあるようです。でも、夜中に友達の声で起こされて朝までしゃべっているので、学校にいつも遅刻しています。

私たちが注意をすると「うるさい」と反抗します。一度スマホを取り上げたこともありましたが「スマホを返さないと学校には行かない」と言われ、しぶしぶ渡してしまいました。

スマホを使いはじめてから学校の成績は下がる一方。「頭が痛い」「気分が悪い」という理由で学校を休みがちになってきて心配です。

プライバシー保護の原則にのっとり、実話を基に構成しています

スマホが原因で生活リズムが著しく乱れている子どもと、子どもとコミュニケーションがとれず、どうしたらいいかわからない家族の様子。とても痛ましいですね。

将来起こりうる問題

上記事例では、なんと6つも問題となる症状が表れています。将来起こりうる問題についても想像してみましょう。

①成績が下がっている
スマホ依存になると、急に成績が悪くなったり提出物を出さなくなったりするケースがみられます。

②家族との時間、睡眠や食事よりもスマホを優先する
スマホ依存が進むと、ゲームやSNSでのやりとりが生活の中心に。家族や学校への関心が薄れ、食事や睡眠など基本的な習慣もおろそかになります。

③朝起きられずに、学校を休みがちになる
一日中、夜間も通してスマホに没頭し、朝起きるのが困難に。遅刻や欠席が目立つようになります。

④体調不良が続いている
食事や睡眠の時間を削ってスマホに夢中になっているので、栄養や睡眠が不足し、体調不良を訴えることがあります。

⑤スマホが原因で家族との関係が悪くなっている
スマホ依存を心配する家族との争いが絶えないケースも。関係が悪くなると、部屋に引きこもりがちになる子どももいるので注意が必要です。

⑥スマホを取り上げようとすると、暴力をふるったり、噓をついたりする
スマホを取り上げようとする相手に対して、暴力的になるケースは珍しくありません。噓をついてその場を取り繕う子どももみられます。

⑦高額課金をする、親のお金を無断で使う
スマホゲームや有料アプリにお小遣いの範囲を超えて課金したり、親のクレジットカードを勝手に使ったりするケースもあります。

事例のお子さんも、最初はただ楽しいからLINE通話で遊んでいたのかもしれません。しかし、気がついたときにはスマホを手放せないくらいにのめり込み「スマホ依存」に当てはまる状態に。
上記のような症状が1つでもみられたら、病院受診や相談などを検討し、なるべく早く対処することが大切です。

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