子どもの「スマホ依存・ゲーム依存・ネット依存」 公認心理師が「やりすぎ」と「依存」の境目を解説
公認心理師・スクールカウンセラーが語る 子どものスマホ依存 #1 スマホへの依存度を判断するためには?
2024.01.16
公認心理師:中井 ようこ
専門家の手助けがスマホ依存から救う
子どもをスマホ依存から救うには、適切なタイミングで病院受診や専門家への相談をすることが大切です。「子どもの様子が今までと違う」と思ったら、それが家族にとって適切なタイミングといえます。
子ども本人が「スマホ依存症である」と自覚しているケースは少なく、本人の意志だけで回復するのは困難です。そのため、子どもを支える家族がスマホ依存について正しい知識を持ち、受診や相談をする必要があります。
しかし、スマホ依存を専門的に治療できる病院は全国的にも少ないのが現状です。まずは、近くにある児童精神科か心療内科に問い合わせをするのが良いでしょう。久里浜医療センターが作成した以下のリストを参考にしてください。
どうしても相談先がみつからない場合は、かかりつけの小児科や民間のカウンセリング機関に相談する方法もあります。
いざ受診をしようとなると「病院でどんな治療をするの? 痛いことは嫌だ」と心配する子どもも少なくありません。実際にどんなことをするのか、保護者も子どもも知っておく必要があります。
そこで、一般的な治療の流れをご紹介します。
・外来診療での問診、身体的な検査や心理検査
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・問診や検査をもとにした依存症の診断・治療方針の決定
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・精神科医による診察、心理師によるカウンセリング
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・ 認知行動療法やソーシャル・スキル・トレーニングなどを組み合わせた治療
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・必要があれば入院治療
認知行動療法とは、物事に対する考え方のクセに気づき、さまざまな考え方を身につけることでストレスへの対処法を増やす心理療法の一つです。認知行動療法を基盤とし、コミュニケーションの技法を練習するソーシャル・スキル・トレーニングなどを行います。
著しい日常生活の乱れ、体調不良や家族への暴力などがあるケースでは、入院治療も一つの方法です。スマホやメディアから離れ、運動やレクリエーションなどを通じ、周囲とのコミュニケーションや日々の生活に自信をつけていきます。
このような治療の中で重視されているのは「子どもへの寄り添い」です。なぜ、こんなにスマホにのめり込みたくなったのか、背景にある悩みや問題にスポットをあてます。
「学校に居場所がない」「勉強がわからない」「友達とうまく付き合えない」など、孤独でプレッシャーに押しつぶされそうな子どもにとって、スマホでつながる世界は大人が思っている以上に重要なのです。
親にはなかなか打ち明けられないことも、専門家に話せるケースもあります。子どもの悩みが明らかになってきたら、子どもの気持ちを理解するようにしてみてください。家庭でも子どもに寄り添いながら回復をサポートしていきましょう。
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「どこでもゲームができる」「人とつながれる」スマホは、現代の子どもたちにとって最も夢中になれるツール。そのため、楽しさのあまり時間を忘れ「やりすぎ」と「依存」の境目があいまいになりがちです。スマホとの付き合い方が心配なときは、まず子どもの様子を観察し、スクリーニングテストなどでスマホ依存の可能性を考えてみましょう。
決して家族だけで抱え込まないでくださいね。つらいときは専門家の力を借りながら、子どもが本来の自分を取り戻せるように支えていきましょう。
次回2回目では、子どもが病院受診を嫌がるケースについて、引き続き解説します。
監修・文/中井ようこ(メディペン)
子どものスマホ依存記事は全3回。
2回目を読む。
3回目を読む。
(※2回目は2024年1月17日、3回目は1月18日公開。公開日までリンク無効)
メディペン
医療ライターズ事務所。 看護師、管理栄養士、薬剤師など、有医資格者のライターが在籍。 エビデンスに基づいた医療記事を得意とするほか、医療×他業種の記事を手掛ける。 産婦人科関連、小児科、皮膚科、医療系セミナーレポートや看護師専門サイトの記事の実績多数。 medipen
医療ライターズ事務所。 看護師、管理栄養士、薬剤師など、有医資格者のライターが在籍。 エビデンスに基づいた医療記事を得意とするほか、医療×他業種の記事を手掛ける。 産婦人科関連、小児科、皮膚科、医療系セミナーレポートや看護師専門サイトの記事の実績多数。 medipen
中井 ようこ
小学校の養護教諭として15年間勤務。退職後は、公認心理師の資格を取得し、スクールカウンセラーとして従事。コロナ禍では800件以上の相談を受けた。アドラー心理学の知識も活かし、子どもや保護者の気持ちに寄り添ったかかわりを大切にしている。
小学校の養護教諭として15年間勤務。退職後は、公認心理師の資格を取得し、スクールカウンセラーとして従事。コロナ禍では800件以上の相談を受けた。アドラー心理学の知識も活かし、子どもや保護者の気持ちに寄り添ったかかわりを大切にしている。