119番と「浮いて待て!」 子どもを水難から救い、親の後追い沈水を避ける鉄則
海水浴場でも注意は必要 河川・海・ため池・プール「子どもの水難事故」回避マニュアル#2
2022.08.15
水難に遭ったら119番通報と「浮いて待て!」が合い言葉
河川でも海でも、子どもが水難に遭った場合、自分の子どもでなくても手を差し伸べるはずです。しかし斎藤先生は救助に関して、水難事故の対処を熟知していない大人が助けに入っても二次的な被害を招く可能性が高いと話します。
では、大人も子どもも、どうしたらいいのでしょうか。
「まず、どの方も、子どもなら助けられるかもしれないという幻想は捨ててください。水に入って直接、救助する方法を入水救助といいますが、水難救助のプロでも状況によっては難しい場合があるほどです。
救助は、考えているよりも容易ではありません。
従って、最初に行うことは119番への通報です。これは大人も子どもも対処は一緒です。周りに協力者がいるなら、その人に通報を頼んでもいいでしょう。とにかくすぐに消防に連絡です」(斎藤先生)
「万が一、子どもが水難に遭って、それを追って大人が水に入った場合は、子どもと一緒にその場で浮いて、救助を待ちましょう。ですから、子どもにもバタバタせずにそのまま『浮いて待つ』ように声をかけてあげます。
岸に向かって泳ぎながら子どもを運搬できるのではと思う方もいますが、そんなことは訓練を受けていても、そうそうできるものではありません。まして、浮きながら子どもを持ち上げるなんてこともできません。
とにかく、子どもも大人も、背中を下にして背浮きで浮いて待つのが最善の策です。背浮きなら呼吸を確保しながら救助を待つことができますし、実際、水の事故で生還した例をみると、背浮きで救助を待っていたものが多いようです」(斎藤先生)
背浮きで浮いて待つ方法
「次の画像は『ういてまて教室』で背浮きのテクニックを習っている様子です。洋服を着たままでの訓練ではありますが、背浮きの方法がよくわかるでしょう。
プールなどに遊びに行ったときに、水着姿でいいので親子で背浮きの練習をしてみるのもおすすめです」(斎藤先生)
もし子どもがライフジャケットや浮き輪など、浮力のあるものを着用しているなら、大人は「浮いて待て!」と子どもに叫んで、そのままの状態で待つように子どもに声をかけます。
川や海の流れ、あるいは風で流されたとしても、浮いていれば救助隊に助けられる確率が高まります。
「子どもが浮き輪をしたまま流されたとき、親は間違いなく救助に向かいますが、もし子どもに追い着いたなら親は子どもの浮き輪につかまって、そのまま浮いて救助を待ちましょう。
水難に遭ったときの対処法がさまざま紹介されていますが、事故に遭遇したときはいろいろ考えて、実行に移す余裕などなくなります。
ですから119番に通報して、あとは浮いて待つというシナリオだけを覚えておきましょう」(斎藤先生)
斎藤先生の言葉を借りると、河川も海も、むやみに近づかないことが最も重要です。ただ、どちらも近づいたり、水に入るときは最低限のルールを守り、その範囲内で遊ぶことが大切だといいます。
さらに万が一、水難に遭った場合はすぐに救助を要請することと、浮いて待つのが鉄則だと話します。水の事故では1回の呼吸の失敗が命取りになるので、呼吸を確保することがなによりも大切です。
第3回は、ため池とプールのケースについて紹介します。どちらも子どもにとっては身近な水辺なので、どのような危険があるのか知っておきましょう。
取材・文/梶原知恵
梶原 知恵
大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。
大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。
斎藤 秀俊
長岡技術科学大学教授、一般社団法人水難学会会長。工学博士。 「水難は神の領域」と考えられていた水域での事件・事故について、工学、医学、教育学、気象学などのさまざまな観点から検証及び研究を行っている。 テレビや雑誌、Webにて発表される記事やコメントは、風呂から海、水や雪氷まで実験・現場第一主義に徹したものを公開。全国各地で発生する水難事故の調査や水難偽装・業務上過失事件での科学捜査においても多数の実績を誇る。 【主な著書や監修書】 『最新版 ういてまて(水難学会指定指導法準拠テキスト)』(新潟日報事業社)など
長岡技術科学大学教授、一般社団法人水難学会会長。工学博士。 「水難は神の領域」と考えられていた水域での事件・事故について、工学、医学、教育学、気象学などのさまざまな観点から検証及び研究を行っている。 テレビや雑誌、Webにて発表される記事やコメントは、風呂から海、水や雪氷まで実験・現場第一主義に徹したものを公開。全国各地で発生する水難事故の調査や水難偽装・業務上過失事件での科学捜査においても多数の実績を誇る。 【主な著書や監修書】 『最新版 ういてまて(水難学会指定指導法準拠テキスト)』(新潟日報事業社)など